稲垣吾郎・草なぎ剛・香取慎吾、キャラクターを宿して目指す面白い社会 『ワルイコあつまれ』レギュラー化に寄せて

 稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾による新しい教育系バラエティ『ワルイコあつまれ』(NHK Eテレ)が、4月9日よりレギュラー化。そのレギュラー放送に先立ち、3月24日には『ワルイコあつまれ~もうすぐスタート!』と題して同番組の見どころなどを紹介する直前スペシャルがオンエアされた。

 教育系番組なのに「ワルイコ?」と首をかしげる人もいるかもしれない。だが、そのちょっと斜に構えたところが、この番組の“らしさ”だ。2021年9月13日、一切の事前告知なしでスタートした『ワルイコあつまれ』。この時点で、これまでの常識から一歩飛び出そうという同番組の気概を感じることができた。

 そして、これまで4回の特番をオンエアするたびに、伝統芸能の人間国宝から生物学者、そして竹中直人や國村隼、萩本欽一など驚くような豪華ゲストが登場。コントでおもしろおかしく盛り上がったかと思えば、「なるほど!」と学びを得る瞬間もあるという、その絶妙なバランスが大きな魅力だ。

 今回の直前スペシャルも、ニュース番組をパロディ化してスタート。NHKならではのかしこまった雰囲気で、本物のニュースキャスターが大真面目に『ワルイコあつまれ』とはどんな番組か紹介していく。その様子が実にシュールで、この番組ならではといった雰囲気だ。

 “こういうもの”と私たちの中にあった常識をあえて外していく。そこには“新番組とは事前に予告するもの”、“教育番組とはイイコに向けたもの”だけではなく、“稲垣、草なぎ、香取という国民的スターの扱いはこう”という予定調和をもズラしていく挑戦が含まれているように感じるのだ。

 直前スペシャルでは、4月のレギュラー放送から新たに登場するキャラクターも紹介された。その中には、稲垣が“88歳のユーチューバー・ヨネキン”に扮する様子も。性別も年齢も超えたその美しい姿にハッとさせられる一方で、これがコントの中でのキャラクターであることの贅沢さに思わずニヤけてしまう。

 また、映画『ミッドナイトスワン』で『第44回日本アカデミー賞』にて最優秀主演男優賞を受賞するなど、高い演技力を誇る草なぎが熱演を繰り広げる場面もある。だが、大河ドラマや主演映画・ドラマを務める彼がそのスキルを見せつける場面が、化学の仕組みを学ぶ「ケミカルドラマ」であるというのもまたニクい。そのうえ、ヨネキンの飼い猫・ニャン吉を演じた感想を「僕の中に憑依した」と真剣に語るところもシュールで笑える。

 そして、慎吾ママ、カツケンなど、これまで数々の名キャラクターを生み出してきた香取。「若いころはやったけど今はもう……」なんて出し惜しみすることなく、求める声に応えて何度だって喜ばせてくれるのが香取のすごいところ。そんな“パーフェクトビジネスアイドル”であり続ける姿は、もはや人間国宝の域だ。一方で「もう何十年も(慎吾)ママなの」と、ちょっぴり本音をのぞかせたコメントで笑いを誘うのが、『ワルイコあつまれ』ならではの切り口と言えそうだ。

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