『ドライブ・マイ・カー』『カムカムエヴリバティ』で存在感 三浦透子、シンガーとしても注目したい声の魅力
そして現在、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバティ』に出演中だ。主人公の一人であるひなた(川栄李奈)の親友・一恵を演じている。快活で地に足の着いた明るい気質だが、恋に戸惑う場面ではどこか不安定な表情も見せる、感情豊かで人間味の溢れる役柄である。『ドライブ・マイ・カー』が世界で注目を集める中、そこで演じた役とは真反対とも言える一恵というキャラクターがお茶の間に毎日のように届けられているという現状は、三浦透子の役者としての特異性を象徴しているように思う。
三浦透子はインタビューで自身の演技について「役柄を理解しようとする時、自分との相対的な関係で紐解いていくようなところがあると思います」と発言していた(※2)。また、歌に関しての別のインタビューでは「基本的にはお芝居と同じです。『頂いた曲を私の解釈と身体でどう歌うか』という意識がベースなので」とも語っている(※3)。アウトプット先は違えども、根底のアプローチはとても似ている。役作りにおいて脚本をしっかり読み込むことを重要視している(※4)という点も、歌詞とメロディを深く理解し最もよく合う歌声を楽曲に宿すことと強く結びついているだろう。
3月18日にはODD Foot Worksの有元キイチがプロデュースした「私は貴方」をリリース。静謐なピアノの調べが耳に残るアンニュイなバックトラックの上で切々とした歌声を響かせている。何重にも重ねられた歌声は俗世にはないような美しさで胸に迫ってくる。追憶の中にある愛しさを描く詞世界と相まって、厳かなノスタルジーが滲む1曲だ。歌唱表現の面でも新たなステージに踏み出したことがよく分かる。
主役でも脇役でも関係なくその人物の生き様をありありと作品に宿す演技。大きな世界も小さな日常も変幻自在に歌に刻む音楽。この2つの面に加え、歌と演技を合わせた新たなフィールドと言える『ミュージカル「手紙」2022』にも現在出演中だ。あらゆる活動で絶え間なく進化を続け、唯一無二の表現者になりつつある三浦透子。今、最も目が離せないアーティストと言える。
※1:https://natalie.mu/music/pp/miuratoko/page/2
※2:https://crea.bunshun.jp/articles/-/34553?page=3
※3:https://spice.eplus.jp/articles/269958
※4:https://soen.tokyo/culture/cinema/spaghetti211122/2/