三浦透子、森七菜、上白石萌音、adieu=上白石萌歌……表現力を歌唱にも活かす女性シンガー

三浦透子『ASTERISK』

 役者業で培ってきた表現力が歌唱にも活かされ、音楽に命を吹き込んでいるシンガーが目立っている。本稿では直近での活躍が特に印象的な女性シンガー4人を紹介したい。

 2019年に映画『天気の子』の主題歌2曲に参加し、年末にはRADWIMPSと共に『紅白歌合戦』にも出場した三浦透子は5月25日に初のオリジナル楽曲集『ASTERISK』を発売した。飄々とした立ち振る舞いで一癖ある役柄を演じることが多い彼女だが、歌声はその名を体現するかのように透き通っている。『ASTERISK』では清らかな声質と持ち前の憑依力であらゆるタイプの楽曲と融け合った。

三浦透子 / uzu [music video]

 曽我部恵一が手掛けた「ブルーハワイ」では夏の情景に溶けゆくボーカルを聴かせ、サンタラによる「蜜蜂」では艶っぽく曲中の一人称を担う。そして森山直太朗が紡いだ「uzu」はハミングのみで音楽を表現。音像の一部分として喉を鳴らし、楽曲に眩い光を注ぐ。言葉を排したからこそ生まれた神秘的な響きだ。

三浦透子 - 愛にできることはまだあるかい

 またRADWIMPS「愛にできることはまだあるかい」のカバーは原曲と異なるクールな電子音とウォームな管弦編曲が調和したトラックが耳をひくが、これは三浦透子の声にインスピレーションを得て河野圭が練り上げたもの。劇的になりすぎず、凛とした歌声で曲と一体化している。優雅に音の中を泳ぎながら、表情を変え続ける―その変幻自在さは歌唱においても健在だ。

 現在、NHK連続テレビ小説『エール』にも出演中の森七菜は、2020年頭にシングル『カエルノウタ』で歌手デビュー。出演映画『ラストレター』の主題歌として書き下ろされた表題曲は、作詞・岩井俊二と作曲・小林武史という極上の言葉と音を備えた1曲だ。

森七菜 カエルノウタ Music Video

 独特の“間”を取った台詞回しや強弱のついた発声を得意とする森七菜だが、歌唱においても彼女の発する言葉は鮮烈なインパクトをもたらす。「カエルノウタ」ではパートによって繊細にトーンを使い分けて歌唱し、映画に直結する詩世界にゆったりと浸ることができる。一方、カップリングに収録された小泉今日子「あなたに会えてよかった」のカバーでは、あどけない歌声を聴かせ、荒井由実「返事はいらない」のカバーではナチュラルな瑞々しさを振りまくなど、等身大な無邪気さも歌手活動に活きている。

森七菜 あなたに会えてよかった Music Video

 3月からは自身の出演する『オロナミンC』のCMでホフディランの「スマイル」をカバーしている。その開放的で力強い歌声は新たな一面であり、役者としてのみならず歌手としてこれからも様々な表情を獲得していくことが予感される。

オロナミンC CM|「元気はつよいぞ。 スピーチ」篇 30秒

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる