花譜、複層的なレイヤーを体現するアーティストとしての特異性 柴那典が羽生まゐごら参加のコラボ曲を紐解く

花譜、アーティストとしての特異性

 こうした流れを見ていくと、『組曲』という企画が、二つの側面を持っていることがわかる。ひとつは花譜のボーカリストとしての表現領域をさらに拡張するプロジェクトである、ということ。そしてもう一つは様々な領域で活躍するアーティストやクリエイターに花譜が触媒として作用することで新たな表現を生み出すという狙いだ。

 そして、それを前提に「わたしの線香」を置くと、見えてくるものがある。羽生まゐごはボカロPとしてキャリアをスタートしたクリエイターであるし、すでに自身の楽曲で花譜とコラボもしているので、インターネットやアバター的なコミュニケーションが楽曲のテーマとなっているわけではない。が、花譜の声が醸し出すある種のヴァルネラビリティの感覚、傷つきやすさや居場所のなさ、その反面としてある凛とした強さのようなものが羽生まゐごの世界観の奥の方にあるものを引き出しているような感触がある。まだ楽曲は聴けていないが、『組曲』第六弾のくじらとのコラボ曲もそうしたタイプの楽曲になっているのではないかという予感もある。

 筆者が花譜という存在に感じている魅力は、ひとつの“文脈”で語りきれない複層的なレイヤーを体現しているけれど、結局のところ、その軸が音楽に徹しているということにある。デビュー時からそうした魅力はあったけれど、昨年に花譜の音楽的同位体として音声合成ソフトウェア・可不(KAFU)が誕生してからは、さらにその“文脈”が拡散してきているような感がある。

 2月25日には可不(KAFU)の1stアルバム『シンメトリー』がリリースされた。こちらには、syudou「キュートなカノジョ」、ツミキ「フォニイ」、柊マグネタイト「マーシャル・マキシマイザー」など昨年のボカロシーンを彩った楽曲の数々を収録。注目すべきはカンザキイオリ「朝日 feat.花譜」だろう。この曲は前述の「あさひ」と同じくカンザキイオリが作詞・作曲を手がけた楽曲の、大沼パセリによるリミックス版。花譜とその音楽的同位体・可不が声を重ね合わせることで、今までにないタイプの響きが生まれている。

 3月26日には、花譜の高校卒業記念オンラインライブ『僕らため息ひとつで大人になれるんだ。』が開催。さらに4月16日には花譜、理芽、春猿火、ヰ世界情緒、幸祜の5名によるバーチャルアーティストグループ、V.W.P(Virtual Witch Phenomenon)の1stワンマンライブ「V.W.P 1st ONE-MAN LIVE『現象』」が開催される。

 転機となる春を経て、花譜がこの先見せるだろうさらなる成長にも期待したい。

特集企画:花譜、ジャンルレスなコラボが生む“バーチャル×リアル“を越境した音楽

■リリース情報
コラボ企画『組曲』
第五弾
花譜×羽生まゐご「わたしの線香」

第一弾
花譜×GLIM SPANKY「鏡よ鏡」
https://lnk.to/kaf_mirrormirroronthewall

第二弾
花譜×大森靖子「イマジナリーフレンド」
https://lnk.to/kaf_imaginaryfriend

第三弾
花譜×佐倉綾音「あさひ」
https://lnk.to/kaf_ayanesakura

第四弾
花譜×たなか「飛翔するmeme」
https://lnk.to/kaf_tanaka_flymeme

■花譜 3周年記念特設サイト
https://kaf3rdanniversary.kamitsubaki.jp/

■花譜関連 URL
-HP https://kamitsubaki.jp/artist/kaf/
-BOOTH https://kamitsubaki.booth.pm/item_lists/L8aYTE28
-YouTube チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCQ1U65-CQdIoZ2_NA4Z4F7A
-SNS
【Twitter】https://twitter.com/virtual_kaf
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