『星野源のおんがくこうろん』音楽教養番組としての新しさ 本人コメントとともに紐解く
星野源がホストを務める『星野源のおんがくこうろん』(NHK Eテレ)が、2月11日より全4回に渡り放送中だ。
この番組は星野源がパペットのかいせついんたちと歴史を変えた1人の音楽家に毎回スポットを当てていく音楽教養番組。その音楽家の代表作や表現技法はもちろん、音楽家自身の人生の歩みや当時の社会状況など広い視点から魅力を解説。さらに関連性の高い現代ミュージシャンたちの実演VTRも交えることで、現代にまで続く彼らの影響を直感的に感じ取ることができるようにもなっている。
同番組ではこれまでの放送で、第1回にヒップホップ界の伝説的プロデューサー/ビートメイカーのJ・ディラ、第2回に「ラプソディー・イン・ブルー」などで知られるアメリカ音楽の作曲家 ジョージ・ガーシュウィン、第3回にEarth, Wind & Fireとの共作曲「September」などを生んだソングライター、アリー・ウィリスを取り上げた。本稿では、第1、2回の収録を終えた星野源からのコメントをまじえ、番組のみどころについて紹介していきたい(以下、引用コメントは星野源によるもの)。
「どちらの回もとても大きな反響で、J・ディラやジョージ・ガーシュウィンのことを知らない人からも、知っている人からも『すごく面白かった』と言ってもらえたのが嬉しかったです。テレビ的なバラエティ要素を極力省いた構成にしたので、そこを喜んでくれる人が多かったのも嬉しかったですね」
たしかに同番組には「教養番組」という言葉がぴたりとはまる。第1回、第2回で2体のパペットのかいせついんに扮しているのはアメリカのポピュラー音楽への造詣が深い高橋芳朗氏と大和田俊之氏。第3回には高橋氏とともに渡辺志保氏が登場した。彼らがそれぞれの音楽家に関する知見をとてもわかりやすく、そして親しみやすく解説しているのはみどころの一つだろう。番組では、星野自身も視聴者とともに学んでいくというスタイルをとっているが、興味深かったのは第2回で取り上げたガーシュウィンのエピソードだという。
「ガーシュウィンが、陽キャな人柄だということが知れて勉強になりました。その人柄が様々な音楽や技術を身につけるきっかけとなり、あの素晴らしい音楽たちを作り上げたのだと思うと、とても興味深かったです」
音楽家の人生の歩みを辿るにあたり、貴重な本人映像を見ることができるのもこの番組ならではだ。J・ディラ回では実母へのリモートインタビューが実現。32歳でこの世を去った彼が、病床に伏しながらも最期まで音楽制作への情熱を絶やさなかったことがありありと伝わるエピソードが披露された。アリー・ウィリス回で行われたEarth, Wind & Fireの元メンバー、アル・マッケイへの独占インタビューも実に貴重なもの。このようなインタビューを実現してしまう番組制作陣の熱量に驚かされる。
「僕はこの番組の企画と構成にも関わっているので、例えば、J・ディラのビートの揺らぎをわかりやすく説明したい、とか、オペラ『ポーギーとベス』にまつわる現在進行形の論争についてもちゃんと取り上げたい、とか、そういうことは考えて提案するんですけど、お母さんにインタビューするっていう最高なアイデアは中々思い付かないので、毎回驚きつつ嬉しくなっちゃいますね」