乃木坂46、中西アルノセンター曲「Actually…」になぜ賛否? “らしさ”の殻を破れないグループの課題

 乃木坂46はこの10年間で何度も変化のタイミングを模索してきた。「乃木坂らしさ」という言葉をテーマに開催された『真夏の全国ツアー2015』。ストリングス隊を率いて歌唱した「何度目の青空か?」「君の名は希望」「悲しみの忘れ方」はそのテーマを象徴するパートでありつつも、そこで生田絵梨花は裏で支えてくれているスタッフ、メンバーを含め、「みんながいるから乃木坂らしさを作れるんだ」と涙を浮かべながら話していた。

 この「乃木坂らしさ」という、言ってみれば答えのない問いは、後にメンバーを苦しめることになっていく。グループのカラーをはっきりと打ち出すことに成功した一方で、誰もが口ずさむことのできる国民的ヒット曲をなかなか作り出すことができなかったのだ。2016年の2ndアルバム『それぞれの椅子』リリースインタビューで松村沙友理は「乃木坂46の曲は恋でいうと“いい人止まり”みたいな印象があって。いい人ってみんなから好かれはするけど、結局付き合うまでには至らないというか。その“いい人止まり”を超えるインパクトの強い曲が必要なんじゃないかな」「だから、そろそろ“乃木坂らしさ”に固執する必要はないのかなという思いもあって」と答えている(※1)。その翌年、橋本奈々未の卒業コンサートというグループにとっての大きな節目の2日後に初披露されたのが「インフルエンサー」だった。

 今でこそ乃木坂46を代表する一曲に成長しているが、当時としてはかなり異色の楽曲であった。松村の言う、“乃木坂らしさ”からの脱却ーー史上過去最高の超高速ダンスを手がけたのはSeishiro。異国情緒溢れる情熱的な曲調、一度聴いたら忘れられないその歌詞も相まって、「インフルエンサー」は初のレコ大受賞、バナナマン・日村勇紀が扮するヒム子とともに『紅白』出場と、グループに新たな景色を見せていく。

 各期生がそれぞれ抜擢されたシングル曲を振り返っても、堀未央奈における「バレッタ」、与田祐希と大園桃子の「逃げ水」、遠藤さくらの「夜明けまで強がらなくてもいい」とそこには過去のグループ像に縛られない挑戦が常にあった。これは乃木坂46に限らず、全てのアーティストに言えることだが、変化を恐れていては次のステージには進めない。先のインタビューで橋本奈々未が話している「従来の路線で現在応援してくれているファンの方から「確実に支持されるもの」を提供し続けるのか、ハマるかどうかわからないけどギャップを狙って新しいことにチャレンジするのかということなんですよね。でも、それにはまず私たちが確固たる地盤を固めないと、どっちつかずになってしまうと思うんです」という考え方は、今の乃木坂46にこそ当てはまる回答ではないだろうか。

 乃木坂46がこの10年間で築いてきた確固たる地盤。どうしてもセンターに目を奪われがちだが中西の肩に手を置く齋藤飛鳥と山下美月をはじめ、彼女を支える先輩メンバーの姿は頼もしい。振付に関しても、筆者は同じくSeishiroが手がけた生田絵梨花センターの「最後のTight Hug」を彷彿とした。

 かつての「インフルエンサー」のように、これからMVの公開やコンサートでの披露を通して、「Actually…」もまた乃木坂46の楽曲として馴染んでいくはずだ。その鍵にあるのは、中西の成長。ただ、そこについてはあまり心配はいらないと思っている。素直で人懐っこい中西を気遣う齋藤飛鳥とキャプテンの秋元真夏、さらには『乃木坂46時間TV』で可視化された期を越える仲の良さ/温かな空気が、かつて生田が口にしていた“乃木坂らしさ”として変わらずグループの根底にあるからだ。

※1 https://realsound.jp/2016/06/post-7841.html

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