乃木坂46 齋藤飛鳥、グループ内外の活動で見せる“表現者”としての一面 MONDO GROSSO「STRANGER」MVを観て
大沢伸一のソロプロジェクト・MONDO GROSSOが、2月9日にリリースしたアルバム『BIG WORLD』収録曲「STRANGER」に乃木坂46の齋藤飛鳥が参加している。彼女がMONDO GROSSOの作品に参加するのは、2017年発表の「惑星タントラ」以来、約5年ぶり2回目。乃木坂46にいながらメンバー個人がほかアーティストと楽曲コラボレーションする例は、白石麻衣と東京スカパラダイスオーケストラ、西野七瀬とtofubeats(『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-』)、生田絵梨花と城田優などがある。その多くは乃木坂46という、言わばアイドル面に軸足を置いたコラボであるが、齋藤の場合、本人もコメントしているように“乃木坂とは違う”表現者としての齋藤飛鳥がそこにはいる。
今回の「STRANGER」はこの5年という歳月の中で、一つ大人になった齋藤をMONDO GROSSOというフレームに当てはめた楽曲と捉えることができる。「惑星タントラ」が発表された2017年5月は、乃木坂46が『インフルエンサー』をリリースし、3rdアルバム『生まれてから初めて見た夢』を発売した頃。『裸足でSummer』で初センターに抜擢された翌年で、齋藤はまだ18歳だった。齋藤が文学少女であるというエピソードをもとに制作され、作詞はやくしまるえつこ(Tica・α名義)が担当(後に『Attune / Detune』でやくしまるがボーカルの「惑星タントラ」を収録)。どこか浮遊感のある曲調、歌詞の世界観とが齋藤の声質がマッチしており、今MVを見返してもその憂いを帯びた表情は、すでに乃木坂46では見せない顔という彼女の中の別のモードが完成していたことに気づく。
「惑星タントラ」から5年が経ち、齋藤も現在23歳。数多くの雑誌のカバーを飾っていることは今も昔も変わらないが、『sweet』や『東京カレンダー』などで見せる表情は確実に大人の魅力を纏っていることを感じさせる。「STRANGER」のMVに映し出されているのは、その延長線上にある大人の彼女と「惑星タントラ」からさらに昇華した表現者としての齋藤。艶やかで、甘美な、それでいて時に鋭い。そこにいるのは、「知らない人(「STRANGER」)」=齋藤飛鳥である。
「STRANGER」自体の曲調も、シューゲイザーと乃木坂46の楽曲には中々ないサウンドだ。2分50秒台からビルドアップを迎え、轟音ノイズはより一層強さを増す。歌い上げるでもない、囁くような齋藤のボーカルはシューゲイザーというジャンルとマッチしており、ダウナーかつ儚げな世界観は楽曲自体の要素が大きい。乃木坂46において、彼女の歌声が最も分かりやすいのは、ソロ曲「硬い殻のように抱きしめたい」であり、ほぼ同時期に発表された「惑星タントラ」と比較すると、前者は高音キーに透き通った歌声が特徴的なのに対し、後者は淡々とそこまで感情を込めずに歌っているように思える。「惑星タントラ」をドリームポップとジャンル付けするならば、次曲がシューゲイザーとなったのは必然とも言えるだろう。