『東京』インタビュー
SUPER BEAVER、音楽を通して肯定するそれぞれの人生 再びステージに立つ中で感じた、かけがえのない人間冥利
音楽を鳴らす尊さから生まれた〈人間冥利〉という言葉
ーー東京といえば、SUPER BEAVERには「東京流星群」という名曲があって、去年シングル『名前を呼ぶよ』のカップリングで新録もされましたけど、あのときの「東京」とこのアルバムでの「東京」というのは違うと思いますか?
柳沢:出所は一緒だと思うんです。それはやっぱり変わらない。ただ意識の持っていき方は違ったと思います。年齢とか自分たちが当時置かれた状況とかもあると思うんですけど、「東京流星群」は思い切りカウンターを打ちたいという気持ちで作ってる曲だと思うんです。東京には、何かがある場所とか、夢を求めに行く場所っていうイメージがある中で、自分たちは東京生まれ東京育ちの人間として、いやいや、東京には普通の生活があり、俺たちにとっては故郷なんだよっていうことをカウンターとして表現したかった。言いたいことは同じでも、そのやり方が全然違ったんですよね。だからこそ、フラットな目線で「東京」という歌を作りたいっていう思いは漠然とあの頃からずっとあったんです。
ーー「東京流星群」も長年やってきたことで、ライブでの響き方が全然変わりましたよね。以前の「東京流星群」はもっと儚くて、切なかったと思うんですけど、今は力強いものになっている。
渋谷:歌っていても全然違いますね。何本も何本も「東京流星群」をオンステージでやってきたことによって、楽曲の一人称が大勢になっているなってかなり感じています。〈僕の宝〉という言葉も“僕ら”になっている気がするし、一人称が一人称じゃなくなってきている感じを、ことさら2021年に強く覚えたので。そういうふうに変化してきた「東京流星群」があったその先で、この「東京」という曲とアルバムがあるっていうのは、すごくいいストーリーだなって思いますね。
ーーそれはやっぱりすごく人間的な物語だと思うんです。このアルバムでも冒頭の「スペシャル」、そして次の「人間」という曲で、〈人間〉という言葉がキーワードとして出てきますが、意外と日常会話で使わない言葉だと思うんですよね。それが立て続けに出てきたのはどうしてですか?
柳沢:これは先に〈人間冥利〉という言葉がステージでぶーやんから出たっていうのがデカかったですね。それが1つのキーワードになるなと思っていました。去年は「音楽」もキーワードになっていて、ぶーやん(渋谷)も「バンドマン冥利に尽きる」「音楽家冥利に尽きる」とよく言っていたんですけど、それがある日突然「というかもはや、人間冥利に尽きるのかもしれない」って言ったときに、「人間冥利って何だろう?」と思いつつも、「でも、そういうことかもな」みたいに腑に落ちた感じをすごく覚えたんですよね。
ーー〈人間冥利〉という言葉に対して、見つけたっていう感覚はありましたか?
渋谷:ぱっと出ちゃった言葉なので、見つけた感覚は全然なかったですけどね。でもライブをたくさんやらせていただくなかで、誰かの前で音楽をやるっていうことがいかに尊いことなのかを再認識していって。自分たちが感じる音楽、鳴らしてる音楽というのは一方通行では成り立たないし、自分たちの気持ちを受け取ってもらって、それをその人の気持ちにしてもらった上で投げ返してもらうーーその往来を何度も何度もやれるっていうことはバンドマン冥利に尽きるし、これぞ音楽だと思っていることをやらせてもらえているのは音楽家冥利に尽きるなってすごく思って、口にしたんです。でもその後に「じゃあ自分たちにとっての音楽とは何なんだろう?」って思ったら、やっぱり人生のことだよなと思って。それで「ああ、これこそまさに人間冥利に尽きる」っていう言葉になった。すごく純粋な言葉なのかなと思います。
ーーだから、きっと「音楽家冥利」じゃ足りなかったんだと思うんですよね。
渋谷:そうですね、その先をもうちょっと言いたくてウズウズしてたっていうのは覚えていて。それ以外には言い表せないなと思ったんです。
藤原:ぶーちゃん(渋谷)がその言葉を言ったときのことはすごく覚えていて。言い切ったなと思ったし、そのときのライブのステージもフロアもが、そこまで言ってもみんなが納得するような空気だったというか。その空気って、もう本当に人間冥利に尽きるじゃないですか。このなんとも言えない気持ちに名前をつけてくれたと思って、ものすごく感動したんですよね。
「それぞれ頑張って、その先で会おう」
ーーライブを観ても感じるんですけど、今のSUPER BEAVERは、メッセージもテーマもどんどんデカくしようとしている気がするんですよ。アルバムも『人間』じゃなくて『東京』なんだ、〈音楽家冥利〉じゃなくて〈人間冥利〉なんだっていう、デカい視野で見て、それを全部肯定しようよっていうムードですよね。それを象徴しているなと思ったのが、「人間」の〈嫌いになれないな 人間〉っていうフレーズで。〈愛しています 人間〉じゃないんですよね。嫌な部分もあるし目を背けたいところもあるけど、それでも嫌いになれないなっていうことで。
柳沢:そうだね。例えば失恋したときに悲しい歌を聴きたくなるような心境というのも、すごく人間的だなと思うんです。そういうところまでもう一度思い出したというか。だからこそ今回、いわゆる恋愛がモチーフになった曲も今まで以上に自然に入ってきていると思うし、いろんな角度から人間を歌っていて。友達とかに対して、「あいつまたやってるよ」とかよく言うけど、そこで即座に縁を切るわけじゃないじゃないですか。そういうところを〈嫌いになれないな〉で、もう1回ちゃんと歌えたらいいなっていうのはすごく思っていました。
ーー「ロマン」という曲も、渋谷さんがステージで言っていることとすごく繋がっていますよね。
柳沢:まさにその通りです。〈それぞれに頑張って〉というのは2021年、ステージでよく言っていて。この曲は最後に滑り込みで入れたんです。これ以外の曲はもう揃っていて、「これで行こうか」という空気になっていたんですけど、「それぞれ頑張りましょう。ありがとうございました、SUPER BEAVERでした」っていう感じが2021年のツアー中はすごくあったから、それは歌にしないとダメだよなって最後まですごく思っていて、それで書いたんですよね。
渋谷:2020年にいろいろ事態が変わってきたときに、「頑張り過ぎるな」とか「頑張るな」っていう言葉を耳にしてめちゃくちゃ違和感を覚えたんです。「いや、やるときはやらなきゃダメじゃない?」って思ったんですよね。それで「頑張ろうぜ」とか「頑張れ」っていう言葉を口にしたいなと思って。でも「一緒に頑張りましょう」という言葉にもやっぱり違和感があって、表面的には優しそうな言葉に聞こえるけど、それぞれ歩んでる速度も道も違う中で、踏ん張らなきゃいけないタイミングはそれぞれ違うはずなのに、「一緒に頑張ろうぜ」っていう言葉は果たして正しいのかなと思っちゃったんです。もっとそれぞれの人生を尊重したいなって思ったんですよね。なので、俺たちも頑張る、あなたも頑張るーーそれぞれ頑張って、その先で会おうぜっていうことだなと。
ーー「背中を押すためにやれることは何でもやるよ、でもその先はあなたが頑張るんだよ」っていう、SUPER BEAVERの音楽の在り方自体がきっとそういうものなんですよね。
柳沢:そう思う。自分らが書いている曲は、結局きっかけになればいいなっていうことをすごく思っていて。もし救える人がいるなら救いたいっていうのは年々強くなっていて、それがこの『東京』というアルバムにも出ていると思うんですけど、やっぱり仙人でもないし(笑)、僕らがすべてを知っているわけじゃないから。単純に「俺はこう思う」「こうだったら素敵だよね」というのをバンドマンとして出しているところは変わらないんですよね。その中で、もっと細かいところまで気にしたいなってだんだんなってきているのが、『アイラヴユー』と『東京』の圧倒的な違いなのかなとも思います。
ーーそのアルバムを持って、今年も『SUPER BEAVER「東京」Release Tour 2022 〜東京ラクダストーリー〜』でいろいろなところに会いに行くわけですが、去年よりもライブの本数は確実に増えますよね?
柳沢:ツアーだけでも去年より2本多いので。
渋谷:現状で70数本あって、さっきの打ち合わせでも6本増えるかっていう話になっているので。例年のペースで行くと、100本は超えるんじゃないかなって。
柳沢:100本に届かなかったら、年末のライブで帳尻を合わせる可能性もありますし(笑)。
渋谷:去年も12月だけで14本ライブやったんですよ。
ーーそれは、何のための帳尻なんでしょうか?(笑)
渋谷:「何のため?」って思うんですけど(笑)、やりたいライブは全部詰め込みたいんです。そういう動きをしたいバンドだし、そういう動きを支えてくれるチームがいるから。だからやりたいものは全部やるつもりでいます。
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<締切:2022年3月17日(木)>
■リリース情報
SUPER BEAVER『東京』
2022年2月23日(水)リリース
【初回生産限定盤A(CD+BD)】¥5,000(税込)
【初回生産限定盤B(CD+DVD)】¥4,500(税込)
【通常盤初回仕様(CD)】¥3,300(税込)
<Disc1 収録曲>
1. スペシャル
2. 人間
3. 名前を呼ぶよ
4. ふらり
5. 愛しい人
6. VS.
7. それっぽいふたり
8. 318
9. 未来の話をしよう
10.東京
11.ロマン
12.最前線
<Disc2収録内容>
・2021.6.24 LINE CUBE SHIBUYA LIVE映像
『SUPER BEAVER「アイラヴユー」Release Tour 2021 〜圧巻のラクダ、愛のマシンガン 〜』
1.今夜だけ
2.歓びの明日に
3.ハイライト
4.美しい日
5.閃光
6.irony
7.mob
8.自慢になりたい
9.予感
10.正攻法
11.突破口
12.アイラヴユー
13.東京流星群
14.時代
15.名前を呼ぶよ
16.愛しい人
17.さよなら絶望
・『東京』制作ドキュメント映像
・Music Video