SUPER BEAVER、音楽を通して“あなた”に届けた「アイラヴユー」 バンドとファンの思いが交差したツアー最終公演
「歌がうまいやつはごまんといるかもしれない。演奏がうまいバンドもたくさんいると思う。でもあなたのことを考えて音楽できるのは、間違いなく俺たちがいちばんだと思ってます」――ライブのまだ序盤、最初のMCパートで、渋谷龍太(Vo)はそう「宣言」した。それは自負や自慢というよりも、覚悟と呼ぶほうが相応しい響きをもった言葉だった。そして、この夜のLINE CUBE SHIBUYAで、SUPER BEAVERはその言葉を身をもって証明していくことになる。SUPER BEAVERというロックバンドがいてよかった。この日ほど、それを強く感じたことはない。まさに彼らの存在をかけた、そしてロックミュージックの意味を突きつけた、感動的なツアーファイナルだった。
『アイラヴユー』というすばらしいアルバムを引っ提げ、Zeppツアーに引き続き約2カ月にわたり全国を渡り歩いてきたホールツアー『『アイラヴユー』Release Tour 2021〜圧巻のラクダ、愛のマシンガン〜』。ライブハウスもホールも、緊急事態宣言を受けて一部公演が延期になるなど、コロナ禍のなか難しい舵取りをしながらの旅となったが、それでも、SUPER BEAVERはとにかく「あなた」の目の前で音を鳴らし続けてきた。その思いとメッセージが最高濃度で凝縮していたのが、このLINE CUBE SHIBUYAであったと思う。
アルバム同様に「今夜だけ」からスタートしたライブ。眩い光に照らされるなか、「歓びの明日に」の力のこもったアンサンブルが一気に広がっていく。「ハイライト」では観客の手拍子がバンドを盛り上げ、一方渋谷も曲中曲間を問わず隙あらば客席(と無料生配信で画面越しに観ているファン)に語りかける。シンガロングや歓声はないけれど、そこには最初から熱いコミュニケーションが生まれている。
観客の手が打ち鳴らすリズムとともに始まった「美しい日」で折り重なったメンバーのコーラス、渋谷のアカペラから始まった「閃光」での上杉研太(Ba)の力強い煽り。ロックンロールなグルーヴを視線を交わしながら鳴らす柳沢亮太(Gt/Cho)や藤原"33才"広明(Dr)の楽しげな表情、「LINE CUBEをダンスホールに変えたい」という言葉通り、カラフルなライトが輝くなか渋谷が軽やかにステップを踏んだ「irony」も、逆光に照らされるなかタンバリンを叩く姿もこれ以上ないほど様になっていた「mob」も。怒涛のように駆け抜けていったライブ前半から、渋谷の言葉を借りるなら「1分1秒も無駄にしない」情熱が、ステージ上からひしひしと伝わってきた。