『アイラヴユー』インタビュー
SUPER BEAVERが今、“アイラヴユー”を届けたい人とは? 未曾有の2020年を経て完成した最新アルバムを語る
昨年春にメジャー再契約を果たしたSUPER BEAVERから、約2年ぶりとなるニューアルバムが届いた。12月に開催した横浜アリーナでの無観客配信ライブ『SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP~全席空席、生配信渾身~ @横浜アリーナ』のラストで告知された『アイラヴユー』というタイトルを目にした瞬間、「今SUPER BEAVERが伝えるべきメッセージはこれしかない」という確かな手応えを感じたのを覚えているが、その手応えをさらに深めてくれるような作品である。
バンドとしての経験、そのなかで見出してきた自分たちの矜持、コロナ禍の心境や世の中の空気、すべての物語が「アイラヴユー」というシンプルなキーワードのもとに合流し、力強く鳴っている。常に「人」と向き合い音楽を鳴らし続けてきた彼らだからこそ、あらゆることが変化した今においても、目の前の「人」に向けていちばん純粋でタフな言葉と音を届けることができるーーという意味で、まさにSUPER BEAVERそのもののようなアルバムだと思う。メンバー4人に、たっぷり語ってもらった。(小川智宏)
「今できることはちゃんと全部やれた」横浜アリ公演
ーー横浜アリーナでの無観客配信ライブ2デイズ、おつかれさまでした。ああいう形でやってみて、いかがでしたか?
上杉研太(Ba/以下、上杉):まずは、本当にやってよかったっていうのが実感としてありますね。2020年は、こういう状況の中でも止まらずに、ちゃんと自分たちの最前線をアウトプットするにはどうすればいいかということをすごく話し合って考えてやってきた1年でもあったと思うんです。その1年のいろんな思いをひとつ形にできた気がしたというか。
ーー夏に新木場STUDIO COASTで収録したライブを配信していました(2020年7月11日『SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP 〜LIVE document〜』)。あれとは根本的に違うものになりましたよね。
柳沢亮太(Gt/以下、柳沢):最初の新木場で、人がいないところで4人だけで演奏するっていうことがどういう感覚なのかっていうのがまずわかったし、その先に野音(日比谷野外大音楽堂)のライブを生配信して。それはもちろん人が目の前にもいてくれたんですけど、それを同時に生配信で全国に届けるっていうことがどういう感覚になるのかっていうのもすごく感じられましたし。その間にまさか2本目のツアーまで全部飛ぶなんて思ってなかったですけど、その中でも何度も会話をして、いろんな考え方を交わして。やっぱり、予定していたツアーをただ「なし」にはしたくない、じゃあ横浜アリーナをやってみようよって思えた。それは本当に段階を経て、何度も何度も会話を重ねた結果だと思うんです。いろんな経験の最終地点という感じはしますね。
藤原”32才”広明(Dr/以下、藤原):配信ならではのこともいろんな人の知恵を借りてやれましたし、今年考えてることが出せたのかなと。満足してるっていうとちょっとまた語弊があるんですけど、今できることはちゃんと全部やれたかなっていう気持ちですかね。
ーー名前も覚えてもらえたしね(※藤原の名前を渋谷が覚えていない、というのがMCの定番ネタだったが、横浜アリーナの1日目でついに渋谷が名前を覚えるというやり取りがあった)。
藤原:そうですね(笑)。
柳沢:何よりの収穫だね。
渋谷龍太(Vo/以下、渋谷):…………。
藤原:あ、もう忘れました? また忘れちゃったよ(笑)。
(『アイラヴユー』は)初めてリスナーとして人に薦めたくなる一枚に
ーーはははは。またがんばりましょう(笑)。ぶーやん(渋谷)はMCで、「みんなが歌っても我々には届かない」って言っていましたよね。嘘でも「届いてるよ」って言いたくなるし、実際言っている人もたくさんいるけど、そこで正直に「届かない」って言うのが、らしいなあと思いました。
渋谷:そうなんですよね。届いてる感覚っていうのを実際感じるような瞬間もあったんですけど、それをまやかしだって自分の中で判断するっていうのはすごく大事なことだなと。やっぱり聞こえてないものは聞こえてないし、伝わってないものは伝わってないから、そこをはっきりと言った上で全力でやる。で、受け取る側からも発信してもらうけど、それが実際に届いてないっていうことを実感してもらう。そうやって、配信と生の現場は絶対に違うんだよっていう「隔たり」をはっきりさせることっていうのは、音楽家としてとても大事なことだと思ったんですよね。
ーーそしてそんな配信ライブの最後にアルバム出しますってアナウンスがあって。そこで届けられた言葉が『アイラヴユー』っていうのは、ちょっとかっこよすぎんじゃないかと思いましたけど(笑)。
柳沢:ははははは!
渋谷:よくできてましたね、流れ的にね。
ーーでも音源聴かせてもらったら、まさに『アイラヴユー』としか言いようのない作品になっていて。素晴らしいアルバムだなと思ったんですけど、作り終えてどうですか?
渋谷:今回のアルバム、初めてリスナーとして人に薦めたくなったんですよね。今までは作り手として「こういうものができました、聴いてください」って思ってたんですけど、今回はリスナーとして他の人にも聴いてほしいって感覚。それは作り手が薦めるよりもピュアだと思うし、力が強いと思っていて。なぜそうなったのかはわからないですけど、アルバムを聴いて、いちリスナーとして純粋に感動したっていうのがあったので。不思議な感覚ですね。2020年の名盤1枚を選んでくださいみたいなお仕事をいくつかいただいているんですけど……これ、2021年リリースだから選べなかったけど、このアルバムは2020年のマスターピースだと思ってるんすよ。その感覚を持ったのは初めてですね。
藤原:めちゃくちゃいいじゃないですか。最高じゃないですか。
渋谷:でも、なぜここで今自分がリスナー側に裏返ったのかっていうきっかけがまったくわからないんです。ただ、マジで1曲1曲聴くんですよね。