imdkmのチャート一刀両断!
A.B.C-Z、10周年ベストアルバムがチャート首位獲得 “DVDシングル”が作り出した音楽性とパフォーマンスの特別な味わい
『BEST OF A.B.C-Z』でいうとDisc1だ。「きらきら星」をThe Jackson 5のフィーリングに翻案した「Twinkle Twinkle A.B.C-Z」であったり、もともとジャニーズ(ジャニーズ事務所からデビューした最初の男性グループ)のために書かれた後にThe Associationがヒットさせた「Never My Love」の流麗かつグルーヴィなカバー、メロディからアレンジまで心地よい「Begin again」(通常盤Zのみ収録)……ソウル、ソフトロック、あるいはAOR的な要素が散りばめられたスムースなボーカルチューンが耳を捉える。だが、「Walking on Clouds」「Legend Story」「SPACE TRAVELERS」でのガラッと風景が変わるような曲調の変化(「Legend Story」のそれはミュージカルなどを思わせる)や、ゆったりと間を持たせた渋い間奏パートは、「そうした音楽やサウンドとしての楽しみとは、別の楽しみがこの曲にあるんだろうな……」と感じさせる。関心を引くための劇的な展開ではなくて、「歌」以外のパフォーマンスのための贅沢な余白のように思えるし、単に耳で聴くだけでも決して冗長ではなく、むしろ聴き応えがある。
現在、ポニーキャニオンの公式YouTubeチャンネルでは過去MVの公開企画「A.B.C-Z History Collection」が行われていて、当該曲のMVも観ることができる。音楽から想像される通り、エンターテインメントを直球で展開していて、ダンスもアクロバットもキマっている。想像以上に楽しんでしまった。ポップソングとしての佇まいで言えば、おそらくCDシングル以降の曲(Disc2収録)の方が粒揃いなのかもしれないけれど、DVDシングルという一風変わった活動が作り出した音楽性とパフォーマンスの味わいには特別なものがあると思う。この形でなければ十分に伝えられない魅力がA.B.C-Zにはあったわけだ。