Anonymouz、歌詞と歌声の美しさを存分に伝えたステージ YOASOBIや藤井風、宇多田ヒカルらのカバーも披露

Anonymouz、歌声の美しさを伝えたステージ

 1月28日、Anonymouzが『Anonymouz Live 2022 〜Forward〜』を日本橋三井ホールで開催した。

Anonymouz

 数年前からYouTubeでYOASOBIや藤井風、宇多田ヒカルなどの人気曲を英詞でカバーした動画を上げ、多くのリスナーを虜にした彼女。この日も、カバー曲を織り込みながら歌声の美しさを発揮したライブとなった。

 ライブはピアノの演奏とともに「Winds of Time」でしっとりと幕を開ける。英詞の楽曲と並ぶからか、続く日本語詞の「足りないよ」では日本語ゆえの歌詞の影響力を強く感じ、〈こんな僕をちゃんと恋人として 大事にして〉と切なげに響かせた。

 一方で、Anonymouzの楽曲は切実な歌詞でありながらそれを紡ぐ歌声は客観性を保っているようにも聞こえる。楽曲が盛り上がるにつれ多用されるファルセットにも、切ない歌詞を歌い上げる際の感情のこもった歌い回しにも滲む、どこか回想しているような、物語を読み聞かせるような落ち着きや穏やかさ。それは、このライブが過去を思い返す「Winds of Time」から始まっているからかもしれないし、あるいは彼女が顔の大半を覆ったコスチュームを身に着けており、アーティスト名のAnonymouzが「Anonymous=匿名」に由来するように、彼女の匿名性から作られる客観や余白の表われでもあるのだろう。

 4つ打ちのキックが物語の前進を感じる「In Our Hearts」、リズミカルなギターに体を揺らす「Snake Love」、ビビッドな照明も相まってクールな「Wonders of Art」と雰囲気を変えながらライブは展開する。儚さを感じるファルセットや丁寧に歌い紡ぐ上品さがどの楽曲にもあることで、楽曲のリズムや音色の雰囲気がガラリと変わっても彼女が奏でるゆえの美しさを感じられる。曲を媒介としてAnonymouzの見ている世界を共有しているようだった。

 「私のことをカバーで知ってくれた人も多いと思うので、今日はカバー曲も歌おうと思います」と椅子に腰かけたAnonymouzが披露したのはEnglishカバーメドレー。「水平線」(back number)、「カタオモイ」(Aimer)、「ドライフラワー」(優里)、「夜に駆ける」(YOASOBI)などを披露し、様々な歌詞に寄り添っていく。楽曲に込められた気持ちを掬いあげて歌う彼女の歌声と紡ぐ物語に観客は聴き惚れた。

 聴き慣れた曲が英詞にアレンジされることによって、改めてメロディラインも浮かび上がる。特に「もうええわ」(藤井 風)では、繰り返される〈もうええわ〉を日本語で残しながらその他の部分を英語で紡ぎ、メロディの美しさを際立たせた。

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