King Gnu、強靭なグルーヴを生み出すリズム隊に注目 プレイヤビリティ溢れる仲間たちが起こすバンドマジック
2021年12月1日に、常田が「ロックバンドって最高」というツイートをしていたが(※1)、筆者はこの短い言葉に、井口理、常田、新井、勢喜という強烈な4つの個性によって成り立つKing Gnuというロックバンドの真髄が宿っていると感じた。King Gnuの制作においては、常田が構築するデモテープに、メンバーがそれぞれの解釈を加えながら協働で再構築していく方法を採っている。その過程では、常田が想像もできなかったバンドのマジックが起きるはずで、一人だけではなく他者と共にバンド活動をすることの意義は、まさにここにある。もちろん、この点ついては他のバンドにも共通しているが、特に常田は「チーム」によるクリエイティブ制作を強く志向するタイプのミュージシャンであると思う。Netflixで配信中のドキュメンタリー作品『常田大希 混沌東京 -TOKYO CHAOTIC-』の中で、「三文小説」のMV撮影後、常田はこのように語っていた。
「俺がすごい恵まれてんなっていうのは、世間の評価と全く関係のない自分たちの尺度で、作品を評価してくれる、見てくれるチームがいるってこと。打算的とか、お金とか、そういうもので繋がってるわけじゃないからね。カッコいいことがしたい、カッコいいものが作りたい、っていうところで繋がってるから。それが本当に俺にとっての財産であり、救いみたいな感じですね」
繰り返しにはなるが、常田は、何よりも「チーム」でのクリエイティブを重んじるミュージシャンであり、そうした彼が率いるKing Gnuだからこそ、新井と勢喜は、その創造性を自由に爆発させることができるのだろう。一人でデスクトップ上で音楽を作り、ボタン1つで全世界に配信することができるこの時代において、それでも他者とバンドを組む可能性を、一人ひとりのメンバーがKing Gnuの中に見出しているはず。「千両役者」の予測不能でスリリングなビートや、「泡」の従来のバンドサウンドから逸脱したデジタルな手触りのリズムセクションが生まれるのは、このバンドに多様なプレイヤーが集まり、お互いのプレイヤビリティを信じ合った上で真正面からぶつけ合えるからこそだ。この4人が破壊と再生を繰り返しながら生み出すミクスチャーサウンドは、唯一無二なものであり、混沌としているからこそ、そこにロックバンドが生み出す音楽の美しさを感じる。筆者は、King Gnuはこれからもポップミュージック・シーンに革新を起こすような楽曲を次々と生み出してくれると確信している。
※1:https://twitter.com/DaikiTsuneta/status/1466043764615434243?s=20