King Gnu、ポップミュージックに叩き込む怒涛の革新 隙のない構成が生み出す『呪術廻戦 0』との親和性

King Gnu『呪術廻戦 0』との親和性

 King Gnuほど革新性と実力を兼ね備え、それが見事に成功しているバンドもそういないだろう。ロックに憧れロックをやりたいロックバンドとは根本が違う。クラシック、ジャズ、ヒップホップ、現代音楽、ビートミュージック。それらを自在に操りながらポップミュージックのかっこよさを猛スピードで更新し、果ての見えない熱狂を生み出している。現在の彼らはそういう4人組バンドであり続けている。

 そして、さらに美しいのは、そこに話題性がしっかりと比例していること。King Gnuの新曲は◯◯主題歌に決定。そんなニュースをずっと目にしている気がするし、例えば10月のシングル曲「BOY」はTVアニメ『王様ランキング』(フジテレビ系)のための書き下ろしだった。また、今回俎上に載せる最新シングル曲「一途」は『劇場版 呪術廻戦 0』の主題歌に、「逆夢」も同じく『劇場版 呪術廻戦 0』のエンディングテーマに起用されている。

King Gnu - BOY

 さらに常田大希ワークスを見ていけば、millennium paradeの「Fly with me」は『攻殻機動隊SAC_2045』の、「FAMILIA」は映画『ヤクザと家族 The Family』のそれぞれ主題歌に起用されている。さらに映画『竜とそばかすの姫』では、劇中の主人公・すず/ベル役を演じる中村佳穂を迎えた書き下ろしの「U」が、作品ともども大ヒットを記録したことが記憶に新しい。

 つまり、常田大希は今一番引っ張りだこの売れっ子作曲家である。ただ、これは星野源やOfficial髭男dismにも当てはまる話で、彼らの楽曲は過去に恋愛ドラマなどで大きな話題になってきた。物語の内容と主題歌は、いつだって記憶の中で分かち難く結びつく。

millennium parade - U

 何が言いたいかというと、タイアップの「量」ではなく「傾向」の話である。King Gnuに求められるものは、少なくとも恋愛コメディやほっこり系ヒューマンドラマではないのだろう。壮大な仮想空間を描くSF系アニメーション、もしくは孤独や戦いがテーマのハードボイルド。あるあると共感できる日常ではなく、極端でもいいからブッ飛んだダークファンタジー。そういう創造の物語と、彼らの楽曲は抜群に相性がいい。

 今回の『劇場版 呪術廻戦 0』は、『週刊少年ジャンプ』で連載中の、芥見下々による人気漫画が原作。負の感情から生まれる呪いと、それを祓う呪術師との闘いを描く内容で、大切な人を失った孤独、それでも生きていくための闘い、さらには呪術という古めかしくもおどろおどろしいテーマは、なかなかKing Gnuに似合っているかもしれない。人気キャラ・五条悟の破天荒な振る舞い、不遜な発言、最強のポジションなどは常田と重なる気もするので、ここはおあつらえむきと言うべきか。前シングル曲の「BOY」は原作の愛らしい世界観にぐっと寄せた書き下ろしだったが、今回の常田はストレート勝負。まさに即効性の高いアッパーカットが炸裂している。

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