Da-iCE、『レコード大賞』手繰り寄せた挑戦の軌跡 10年で培った確かな実力と柔軟性
結成10周年を迎えた2021年は、ボーカルの花村想太と大野雄大がYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』で歌った「CITRUS」がストリーミング再生回数累計1億回超えを記録するなか、12月22日には声優の木村昴をフィーチャリングした『仮面ライダーリバイス』(テレビ朝日系)主題歌「liveDevil」をパッケージとしてリリース。ここに来て、過去最高レベルで彼らのファンである“6面”だけでなく、お茶の間をも賑わせているDa-iCE。「CITRUS」が第63回『輝く!日本レコード大賞』優秀作品賞に選出されたこのタイミングで、彼らの10年の歩みを様々な角度から振り返ってみたい。
2011年1月にグループを結成。当初はソロアーティストとして活動していたリーダーでありパフォーマーの工藤大輝、アカペラグループ・腹筋学園のメンバーとして活躍していた大野、バックダンサーとしての活動やサラリーマン経験もあるパフォーマーの岩岡徹など、スタート時点で新人アーティストとしては経験値の高いメンバーがそろったグループだったと言える。
2014年1月にメジャーデビューを果たすことになるが、結成からの3年の間には、現在でも親交の深い兄貴分グループ・AAAのライブのオープニングアクトなどと並行して、時には夜行バスまで駆使する形で全国の小規模なクラブやライブハウスイベントを精力的に巡る活動を展開。どちらかといえば“歌える”よりも“踊れる”要素のほうが優先されがちなダンス&ボーカルグループ界隈で、大野&花村のツインボーカルの歌唱力は群を抜いており、当時からライブのMCや煽りも巧みだった彼らは“対バンキラー”として知られていた。過去、工藤はグループのキャリアを振り返り、「昔から、特にアウェーの現場に対しての姿勢は変わってないと思います。“獲りに行くライブ”みたいな感じ(※1)」とも発言しており、メジャーデビュー時点で様々な現場を経験していた彼らは、パフォーマンスグループとしてはまさに叩き上げの存在だったと言っていい。メジャーデビュー後も会場のキャパを無理に大きくせず、北は北海道から南は沖縄までのライブハウスをに巡るツアーを重ねるうちに、単独ライブの集客が雪だるま式に増加。2017年には日本武道館や幕張メッセ、2020年には代々木第一体育館公演を成功させるまでに成長した。
そのパフォーマンス面について触れると、ミュージカル俳優としても注目され、4オクターブの音域を誇るハイパーハイトーンの持ち主である花村と、ソロシンガーとしても活躍し、アーシーな歌声で魅了する大野という対照的なボーカル2人が、パフォーマー3人とともに踊りながら繰り出すハーモニーのレベルの高さは筆舌に尽くし難い。またダンス面では最年少ながらダンス歴が最も長い和田颯を筆頭に、彼らの多くの楽曲の振付を手掛けるs**t kingzに“なんでも踊りこなせてしまうグループ”と言わしめる器用さ、ストイックさを持ち合わせていることも特筆すべき点だ(※2)。
彼らの強力な切り札ともいえる楽曲については、インディーズ期は初期の名曲「Splash」などのEDM寄りのナンバー、メジャーデビュー以降はスタイリッシュなJ-POPといった雰囲気の楽曲をリリースしていた。だが、2017年のアルバム『NEXT PHASE』あたりから、たとえばOfficial髭男dismの藤原聡による提供曲「FAKE ME FAKE ME OUT」といった、ダンス&ボーカルグループとしては実験的な要素を盛り込んだ楽曲を制作。2018年のアルバム『BET』からは別名義のclaquepotでソロアーティスト/クリエイターとして活躍する工藤を筆頭に、作詞や作曲でメンバーが関わる楽曲が増加している。メジャーデビュー時点で洗練されたムードを纏っていたグループだったのが、バリエーションに富んだ楽曲を収録。最新アルバム『SiX』ではむしろ若返ったように爆発的なパワーを放つ形に進化しているのも興味深い。また先述の木村昴に加え、事務所の先輩であるSKY-HI(「SUPER FICTION」)や芸人のEXIT(「I got it get it」)といった他アーティストとのコラボ曲、さらにはDREAMS COME TRUE「大阪LOVER」といったカバー曲でも技術の確かさや懐の深さを発揮している。