Sexy Zone、Kis-My-Ft2、Da-iCE、DISH//……独自の道を切り開く、10周年迎えた男性グループの功績
2010年代、音楽シーンを賑わせていたのは女性グループだった。“会いに行けるアイドル”として時代を席巻したAKB48、フォーメーションダンスを取り入れ新たな魅力を拡張したモーニング娘。、アイドルのイメージを刷新したももいろクローバーZ、楽器を持たないパンクバンドを謳ったBiSH。大型アイドルフェスも開催され、インディーズ/メジャー問わず、幾多の女性グループたちがチャートを彩ったものである。
片やボーイズグループにとってこの10年間は、自らの可能性を見極め、力を蓄えていた期間といっても過言ではないだろう。BE:FIRSTやJO1など新興のボーイズグループが注目される今だからこそ、彼らへと続く道を作り、2021年に10周年を迎えたアーティストたちを掘り下げてみたい。
音楽と生き様で道を切り開いたSexy Zone
平均年齢14.2歳で衝撃のデビューを飾り、一躍トップシーンに躍り出たSexy Zone。いうならば彼らは、アイドルらしさを一身に背負いながら、その“アイドルらしさ”をコンバージョンしてきた存在だ。
そもそも、マリウス葉がジャニーズ史上最年少でのデビューを飾り(デビュー当時は11歳)、松島聡は事務所入所から約7カ月でのデビューという、スタート時点ですでにグループとしても異彩を放っていた。とはいえ、結成時のパフォーマンスはレッスン歴や経験の少なさに付随して、個人個人が幼かったあまり体が成長途中であったこともあり、十分なスキルでのデビューとは言い難かった。
しかし、これもある種日本が掲げる“アイドル性”を顕著に継承していたもののように思える。1971年から開始された『スター誕生!』(日本テレビ系)で生み出されたアイドル像は、未熟さをも愛し、成長過程すら楽しむというものであった。Sexy Zoneが紡いだ10年間も、ドラマチックなストーリーと共に5人の人間的成長を見守る10年だったのだ。
現在は、今年3月にリリースした10周年記念アルバム『SZ10TH』が示した通り。2ステップナンバーの「RIGHT NEXT TO YOU」が音楽好きを中心に話題となったのも記憶に新しいが、Sexy Zoneはジャニーズのお家芸とも言える「最先端のサウンドをローカライズして昇華する」を突っ切ってきたグループだ。節目を迎える年に、シーンを震わせるナンバーを打ち出したことも、なんら不思議ではない。
また、地に足のついたインテリジェンスもSexy Zoneの大きな特徴のひとつだろう。「ここぞ」というときの発言・行動には目を見張るものがある。
ツアーグッズでステンレスのストローやエコバッグを販売し、ファンの呼称を性別の問わないSexy Lovers(セクシーラバーズ)としていたりと、環境問題やジェンダーに対しての配慮が常に目に見える。自分たちが影響力のある存在だと自覚し、音楽や生き様で道を切り開いてきた存在こそ、Sexy Zoneなのである。
愚直なKis-My-Ft2だから辿りつけたエンターテイメント
ジャニーズの王道を突っ切ってきたのがSexy Zoneだとするならば、脇道を確実に埋めてきたのがKis-My-Ft2だ。メンバーそれぞれが10年前後の下積みを経験してからデビューしたため“遅咲き”などと称されることもあった。だが、10年経った今になって思うのは、“下積み期間が長いからこそ作れるエンターテインメントがある”ということ。そんな継続することの重要性を後輩たちに打ち出してきたのは、間違いなく彼らだ。
中居正広いわく、Kis-My-Ft2の好きなところは「ちょっと足りないところ」だというが、まさしくそれが彼らの魅力のように思える。既存の“アイドル”を想像すると、“キラキラしていて、手の届かない王子さま”を想像する人も少なくないだろう。一方で、Kis-My-Ft2はいい意味でどこか親近感がある。
グループでの楽曲のみならずユニット曲が豊富であることのほかにも、ローラースケートを用いたジャニーズの伝統的なパフォーマンスをはじめ、バラエティ番組で冴えわたるトークセンスを持っていたりと、グループや個人で勝負できる手札が多いことも魅力だ。なんとなく気になり近づいてみたら、多彩な魅力に溢れ知らぬまに虜になってしまう、不思議な求心力を放っている7人といえよう。
そして、その求心力の根源は、下積み時代からコツコツと培ってきた確かな実力にあるように思う。多彩な楽曲もローラースケートもトークスキルも、一朝一夕で身に付いたものではない。腐ることなく自身を磨き続ければ、オリジナリティのあるエンターテインメントへと辿りつける。Kis-My-Ft2の進んだ10年は、その証明でもあるのだ。