淫らな秘密の中にある純度の高い恋愛感情 共感殺到の『純猥談』から生まれた映画と音楽

『純猥談』から生まれた映画と音楽

【短編映画】私たちの過ごした8年間は何だったんだろうね - 純猥談

 それは「歌」を聴くのとも似ているような気がする。人は、歌詞に経験を重ねて、自分だけの情景を脳裏に思い描く。うまく言語化できずにいた感情を、歌詞を通じて何度も反芻して、泣いたり癒されたり励まされたりする。

 歌のように語られる「純猥談」の映画には、二作目からシンガーソングライター Karin.の楽曲が主題歌として起用された。Karin.の歌声は澄み渡っていて、音だけ聴けばとてもかわいらしい。けれどその言葉は、鋭く、痛い。歌詞で描かれるのは、欺瞞と嘘、別れと後悔。聴けば聴くほど、言葉がひっかき傷のように心に残る。「私たちの過ごした8年間は何だったんだろうね」の主題歌となった「青春脱衣所」については、Karin.自身がこんなコメントを添えている。

「この曲を作った当時の私は、誰も傷つかないように、自分の痛みには気づかないふりをして無理して笑って、喋っていました。そんなことをしている自分のことが好きでした。いつかはみんな大人になるんだよという意味を込めて「青春脱衣所」という曲を作りました(※1)」

Karin.「青春脱衣所」

 彼女は、どんなに醜い感情にも誠実で、目をそむけない人なのだろうと思う。「私もただの女の子なんだ」に添えられた「二人なら」は、エピソードにあわせ幸福感の漂う歌になってはいるけれど、どんなに大切な人と過ごしていてもよぎる不安や戸惑いも一緒に描きだしている。ネガティブな感情や、弱さゆえに間違いをおかしてしまう自分を、見ないふりをするのではなく、受け止めたうえで前に進もうとする歌詞だからこそ、希望となって読者の胸を打つのではないだろうか。

【短編映画】私もただの女の子なんだ - 純猥談

 「青春脱衣所」を制作したとき、Karin.は高校生だった。年齢で才能を語るのは野暮だが、二十歳になった彼女がいまだ“知る”過程にいることは確かである。目にする世界が広がっていくにつれて、感情も複雑に育つ。けれど手にした経験の一つひとつを、どんなに些細でもおざなりにすることなく、歌にして昇華していく彼女の作品はきっと、これからも聴く人の核なる部分に届くだろう。

 「純」と「猥」という、ふつうなら両立するはずのない二つを結び合わせた映画に、これ以上なく寄り添うことのできる彼女が、これから先もどんな景色を見せてくれるのか、期待したい。

Karin.「二人なら」

※1:https://karin-official.com/news/detail/68

■リリース情報
2021年10月27日(水)配信
Karin.『二人なら – ep』
<収録曲>
1. 二人なら
2. 曖昧なままでもいいよ
3. 最後くらい
4. 717

■「二人なら - ep」配信リンク - https://Karin.lnk.to/Futarinara_ep

Karin. Official HP:https://karin-official.com/
Karin. Official Twitter:https://twitter.com/_Karin_official
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