卓真、ソロ作品に滲む“一人の音楽家として在りたい姿” 10-FEETでの豊かな出会いから生まれた新たな一歩

卓真、一人の音楽家として在りたい姿

 10-FEETのTAKUMA(Vo/Gt)が、卓真としてのソロ名義で11月24日にデジタルシングル『軍艦少年』をリリースした。バンドでの1stシングルから実に20年経ってのソロデビュー。10-FEETのアイデンティティの1つでもあった“爆音のミクスチャーロック”を脱ぎ捨て、アコースティックギターを片手に、弾き語りを軸にした作品となっている。静かなピアノとフォーキーなメロディ、そして歌。10-FEETのバンドサウンドを想像しながら再生ボタンを押すと、驚くほどシンプルな楽曲が聴こえてくることだろう。しかし、ひとたび聴いてみれば、卓真という音楽家のストレートそのものであり、日々のどうにもならない苦しみや悲しみを昇華してきた作詞家/ソングライターとしての歩みも、美しいメロディに乗せて歌い上げてきたシンガーとしての歩みも、この新しい一歩へしっかり結実していることがよくわかる。

 10-FEETという強靭な3本柱がない状態で、それでも地に足をつけて歌っていくことがあるとしたら何なのか。それを伝えるためにはどうしたらいいのか。「軍艦少年」という曲は、主題歌になっている映画『軍艦少年』のストーリーとも相まって、もがく気持ちをそのまま描くことで目の前の壁を乗り越えていく原動力になるという、まさにドキュメントのような1曲。自問自答するなかで実感した、音楽が自分にもたらすものについて、卓真にじっくり語ってもらった。(編集部)

卓真 – 軍艦少年

「曲に対する向き合い方がすごく変わった」

ーー表題曲は映画『軍艦少年』の主題歌になっていますが、今回10-FEETとしてではなく、卓真さんのソロでやるというのは、どういう経緯があったのでしょうか。

卓真:原作者の柳内大樹君がずっと友達なんですけど、あるときに「お前の声が好きやから、1人で歌ってる曲を聴きたいんや」とオファーしてくれたのがきっかけです。これまで弾き語りのゲストで呼ばれることはたまにあったんですけど、10-FEETから行くという感じだったので、ソロでやる感覚は初めてで。

ーー柳内さんの想いに答えて、声の強みを活かして曲作りしようという感覚もあったんですか。

卓真:いや、そこに関してはあんまり自信がある方ではないので……。原作も知っていたし、楽曲の世界観に合わせて歌えばいいのかなと思ってましたね。10-FEETだったら、3人で集まってアレンジする余地を残してデモ作りを終えるんですけど、ソロに関してはデモの時点で、アレンジもある程度完結していた方がいいなと思っていたので、曲作りの段階で詰めていって。歌はあまり表現方法を考えずに、自然に出てくる歌い方のままで、余計な着色しないことを意識していたかもしれないです。ここでファルセットを使おうとか、霧がかったようなウィスパーボイスを使おうとか、そういう計算もなくて。

ーー10-FEETでは言わないこともあえて言ってみようとか、そういうことも当初は考えていたんでしょうか。

卓真:10-FEETでやっているときは、バンドサウンドと合わさることも大事にするから、同じことを言うにしても、言い方を工夫したりしてすごく突き詰めているんです。そのままやると引っ掛かりがないのかなって気がするから、捻ったりすることによって、ハイブリットでいいものができると思っていて。今回のソロ曲でそれを全くやってないわけではないんですけど、バンドでやってるときほどではないですね。もちろんしっかり作り込んでますけど、一つひとつのアレンジを凝ったものに突き詰めなくても、パッと思い浮かぶアイデアを楽曲が受け入れてくれるというか。演奏と歌でちゃんと表現していけば、アコースティックでシンプルにやっていても、いい曲ができるんじゃないかなと思っていました。まあ今後もそれでどこまでいい曲ができるかは、まだわからないんですけど。

ーーそういう想いで制作していって、実際にでき上がった楽曲を聴いて感じたのはどんなことでしょうか。

卓真:ここは弾き語りならではの表現の仕方だなと思うものや、バンドに持ち帰った方がよくなるなと気づいたこともたくさんあります。キーボードとギター中心の少ない音数になっているんですけど、一つひとつがはっきり聴こえるので、その隙間を大事にしていくことがソロをやっていて一番面白いなと感じるところですね。ソロであってもバンドであっても、「聴きどころではないけど、ここをしっかり作らないと、曲のよさが引き立たへんな」という部分がすごくよく見えるようになったかもしれないです。それは別にサビっていうことじゃなくて、何気ないブリッジとか、Aメロ/Bメロの細かいところだったりするんですけど。そういう自分の中での曲に対する向き合い方はすごく変わった気がするかな。

「表裏や多面性、奥深さを表現したい」

ーー今回は「軍艦少年」という曲名だけあって、映画が曲に大きく影響していることは間違いないと思うんですけど、卓真さんは『軍艦少年』という作品からどんなことを受け取っていたんでしょうか。

卓真:自分から逃げないことが1つのテーマとして採り上げられている映画やと思うんですけど、自分と向き合うことをわざわざテーマにするまでもなく、僕自身もそういう曲を書くことが多かったので。逃げたくなる気持ちを抱えていたときの自分に、自問自答するようなメッセージが書けたらいいなと思っていましたし、それはできたと思います。でも、悔しがっている自分に対して、「こうやっていこうな」とまでは言ってないんですよ。単純に「ああすればよかったな……」と歌うだけで、「逃げてはダメだ」「もっとこうやっていこう」っていう曲になっていく。むしろ「逃げないぞ」と強く思っている自分とは、真逆の感情の歌になっているのかなと思いますね。

ーーそれはサビに顕著に表れていますよね。〈何処かにあるなら 何処かにあるなら/同じものやそれを忘れさせる様な/違うモノでもいいから〉と、〈こたえがあるなら こたえがあるなら/頭の中探してても 見つからないモノを/明日も探して〉という二段構成のサビが続きますけど、忘れさせてくれるものにすがる気持ちと、答えを探していこうという前向きな気持ちがコントラストのようになっていて。そこは意識的だったのでしょうか。

卓真:うーん……。結局どこかにあるならと言っても、答えなんてどこにもないねんな、という思いそのままなんですね。だから全然希望に満ちてないですけど。いろいろうまく行って希望に満ちているときは、自分が元気であることが多いじゃないですか。でも、希望がないときに希望に満ちた曲を聴くと、逆にしんどいことがあるので。それだったら「しんどいよねえ」って言われて、僕も「しんどいですよね。でもどうせやるしかないですもんね、なんとかもう1日頑張りますか」みたいになった方が、癒される人間なので。そういう歌になればいいなと思っていました。

ーーとても卓真さんらしいなと思うんですけど、そもそもそういう歌を作りたいミュージシャンであるというのは、今考えるとどうしてなんでしょうね?

卓真:そうやなぁ……。きっと最初からそういう風に思っていたと思うんですね。乱暴に括ると、自分が作ってきたのは、すごくハッピーで勢いがある曲と、そうじゃない暗い曲、その半々だと思っていて。たまに詩的な表現とか、クリエイティブで新しいことにチャレンジするときもありますけど。

ーーミクスチャーロックの核がしっかり宿っているからこそ、新しいサウンドと結びつくことによって、新鮮なのにど真ん中の10-FEETらしさが出る。近年では「ハローフィクサー」あたりはまさにそんな曲でしたよね。

10-FEET – ハローフィクサー

卓真:そうですね。そういう曲もありつつ、ハッピーでノリノリな曲ももちろん大好きやから作るんです。だけど、やっぱりしんどいときにどんな人が側にいてくれて、どんな言葉をかけてくれたのかっていうのが、自分の中では一番重要なことで。優しくて前向きな曲やとしても、苦労や悲しみやコンプレックスが裏側にあるんだろうなと想像できて、そこに共感して自分も頑張ろうかなって、重い腰を上げるような場面が何度もあったので。むしろハッピーで元気なときは、別に音楽も必要ないくらいやなって思うこともあるんです。ただただ痛快な曲がかかっていれば、BGMとして成立するというか。だから自分の音楽に極端な二面性があるっていうのは、合ってるのかなと思うんですよ。

ーー人間の感情は様々ですし、その時々でアーティストが表現する音楽も変わっていきますよね。

卓真:僕も曲を作るんやったら、そうありたいなって思うんです。でもさっきの話みたいに、悲しさや悔しさをそのまま歌っても、しっかりとそれを乗り越えていくものになるというのは、不思議やなって思う。「こんなに悲しいことがあったんですよ」と僕が話しても誰もハッピーにならないですけど、なぜか歌にすると、そうやって伝わっていくんですよね。それを聴いて「この人にもこういうことがあったのかな」と思ってもらえればいいなと。僕はそういう作品が好きですから。

 映画や漫画で一見ハッピーエンドじゃない作品があったとしても、それは見ている人を不幸にしたいわけじゃなくて、その奥に何か伝えたいことがあるから、そうなっているわけで。「なんでこんなに悲しい終わり方にしたんやろう?」って作者目線で考える人もきっと多いと思うんですよね。そうやって1つの作品を通じて観る人と作者との対話というか、メッセージの感じ合いが生まれるのが面白いなと思う。僕はそれを音楽でやっていて、柳内君は漫画で表現している。音楽も漫画も映画もいろいろなメッセージの伝わり方があると思うので、自分が音楽を作っていく上では、常に表裏や多面性、奥深さみたいなものを、押しつけがましくない範囲でできたら、いい作品なんじゃないかなと思います。

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