湘南乃風、逆風に吹かれた時こそ一番いい形に 『風伝説 TOUR』待望の東京公演レポート

湘南乃風、東京ガーデンシアターレポ

 人気曲の披露に観客がどよめいた「純恋歌」では、ファンが持つグッズのライトを見るためHAN-KUNが「照明さん、真っ暗に!」と呼びかけ、ステージ上が真っ暗な状態に。さらに冒頭HAN-KUNは歌うのをやめ、ファンが心で歌うその気持ちに耳を澄ませ、気持ちを通じさせ合った。薄く照らされたステージで〈傷重ねて 気付かされた大事なもの握りしめ〉と若旦那とSHOCK EYEが拳を合わせる。〈LOVE SONG もう一人じゃ生きてけねえよ〉からの明るい展開に合わせ照明が弾けるように灯った。

 モニターにファンのウェディングフォトが写される「指」、母への感謝を優しくつづった「母に贈るうた」と身近な人物の半生を見守るように歌う。恋人、パートナーを歌う楽曲に続けて聴く「母に贈るうた」は子にとっての親はどうしたって親でありながらも、一人の存在として対等に扱う敬意がよりよく見える。

 身近な人への感謝を歌にしたあと披露されたのは「親友よ」。ファン同士実際に肩を組むことはできずとも、腕を伸ばし肩を組むフリをすることで一体感を高めた。「我楽多」ののち、愛を扱った柔らかい雰囲気は再び危険な熱さに変わり「Born to be WILD」へ。ビートの低音がヒートアップし、メンバーの歌唱にも力がこもる。HAN-KUNの怒涛のリリックに圧倒される。

 「バブル」では若旦那が叫ぶような声で圧倒し、RED RICEがそれに応えるように低音の効いた声で揺らした。RED RICEの「次の最後の一曲で死ぬほど盛り上がれ!」の言葉で底なしの熱狂を生むとEDM色の濃い「一番歌」。モニターには祭りを模した映像が映される。メンバーも踊り、サビでは怒涛の歌い回しで魅了すると、間奏でも休みなく煽る。楽曲が終わるとメンバーは照明の中に姿を消し、モニターからは花火が上がった。

 アンコールののち再登場した彼らは大きな旗を持ったダンサーを従え、「Wild Speed」「Rockin’Wild」「Earthquake」をメドレー形式で続け再びファンを高揚させる。若旦那の太い声とSHOCK EYEが紡ぐ速いラップにファンのタオルを回す手に力がこもる「爆音Breakers」が続く。

 一人ずつステージに登場し思いを伝えるMCでは、逆境の時こそ湘南乃風は強くなれる、逆風に吹かれた時こそ一番いい形になれると皆が口を揃えて語る。タフな楽曲の根底はメンバー自身の信念によって構築されているのがよくわかる。HAN-KUNのMCでは「曖歌」のサビをアカペラで歌いだし、メンバーがハモりながらステージに揃う。ハンドサインを共有して披露した「CLASSIC」はどこか祈りのようで、幻想的な雰囲気に包まれた。キャッチーな新曲「茶柱立つ」ではメンバーもスカ調のリズムに合わせツーステップを踏み、ファンと一緒に楽しむ。

 「俺たちの曲で言う『蛍の光』!」との言葉とともに「睡蓮花」のイントロが流れる。「人生でこれ以上ないくらいの盛り上がりを見せてくれ!」という熱い煽りにファンはタオルを振り回した。若旦那の〈寂しくなんかねえ!!〉の声色が、強がりではなく自信に満ちた力のある優しいものに聞こえ、今回のライブを経ての本心が表れているのかもしれないと感じる。

 大盛り上がりのファンとメンバーが会場を揺らしきって暗転すると、「ここからが伝説の始まり」、という声に続いて「Riders High」の冒頭部が歌われる。20周年に向けた本当の始まりを示唆し、熱狂は幕を閉じた。

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