ショーン・ポールはなぜ「ダンスホール・レゲエ界の帝王」と呼ばれるのか?
「ダンスホール・レゲエ界の帝王」――2000年、ヒップホップに影響された独特のスタイルを引っ提げ、ファースト・アルバム『Stage One』でデビューしたショーン・ポールが、いつからこの異名で呼ばれるようになったのかは判然としない。しかし、その萌芽が02年のセカンド・アルバム『Dutty Rock』にあるのは明らかだ。
同作からのファースト・シングル『Gimme The Light』 が全米シングル・チャート7位を記録、続く『Get Busy』 は同チャート3週連続1位となり、 ジャマイカ出身アーティストのジャマイカ録音の作品として史上初の記録を打ち立てた。03年には、ビヨンセとの共演曲「Baby Boy」が全米9週連続1位となり、その人気を決定付け、以降も『The Trinity』(05年)に『Imperial Blaze』(09年)、そして12年の『Tomahawk Technique』とコンスタントにアルバムをリリース、数々のヒット曲とともに“帝王”としての地位を揺るぎないものにしている。
そんなショーン・ポールが放つ、約2年ぶりとなる6枚目のアルバムが、新作『Full Frequency』だ。前作『Tomahawk Technique』は、制作陣にスターゲイトやベニー・ブランコらを起用したポップな装いで、ショーン・ポールの新たな幅を世界に見せつけたわけだが、モヒカンの髪型はそのままながら、本作はそれ以上に振り幅全開。ポップ、R&B、ダンスミュージック、ヒップホップ、トラップ・ミュージックなどの要素を混ぜながら、ショーン・ポール流のダンスホールが投影されている。
その姿勢はアルバム冒頭からスロットル全開。幼稚園の頃からの知り合いだという盟友ダミアン・マーリィとの、意外にも初となる共演曲「Riot」でトラップ・ミュージックを取り込んだかと思えば、続く「Entertainment 2.0」では、ニッキー・ミナージュや2チェインズ、ジューシー・Jら、現行ヒップホップ・シーンの実力派MCを招き、そのジューシー・Jの十八番よろしく、クランク・マナーを披露。