変態紳士クラブ、“好きにやる”の精神で活動スケール拡大中 ケツメイシ、湘南乃風、RIP SLYMEらDNA受け継ぐ存在感に注目

変態紳士クラブ、“好きにやる”の精神

 大阪出身のラッパー・WILYWNKAとレゲエディージェイ・VIGORMAN、兵庫出身のプロデューサー・GeGによる3人組ジャンルレスユニット・変態紳士クラブ。2017年のユニット結成や、その名前さえ何となくの“流れ”で決めたという、いかにも若者らしい彼らだが、代表曲「好きにやる」MVが、2018年2月の公開開始より890万回再生を突破するなど、間違いないスキルと楽曲でその活動スケールをますます大きくしている(2020年4月25日現在)。

変態紳士クラブ(WillyWonka × VIGORMAN) – 好きにやる (Prod. GeG)

 さて、前段にて彼らの音楽について、“ジャンルレス”という言葉を用いたのだが、お気づきだろうか。そもそも変態紳士クラブのように、ヒップホップやレゲエを下地に、J-POPシーンで大きな躍進を遂げたアーティストはこれまでにも存在している。例えば、彼らの生まれる前や幼少期の時代より活躍している湘南乃風やケツメイシ、RIP SLYMEらだろうか。そんな先輩アーティストらのDNAを受け継ぐといえる変態紳士クラブは、同時に2020年の今ならではのサウンドも展開できる最新系ユニットでもある。

 彼らの音楽的特徴に触れる前に、メンバーについて軽く紹介しておこう。年下フロントマンといえるWILYWNKAとVIGORMANは、中学校を卒業した頃に知り合ったという友人同士。それぞれの歌唱スタイルは違えど、互いのよい部分を引き出し合えるプレイヤーだ。

 WILYWNKAといえば、以前にとある番組で共演したSEEDAより「ビートに対して言葉が合っている」と評価された、よい意味でダウナーかつヘビーな歌声の持ち主。そのビジュアル同様の“男前”な声質で、圧倒的に聞き取りやすいラップが特徴的だ。その腕前は、以前に「Red Bull」が主催したラップ企画「64 Bars」にて、自身のソロ活動におけるレーベルオーナー・ANARCHYの首をも振らせたほどである。

 また、相方のVIGORMANは、セクシーにしゃがれたスモーキーな歌声で、様々なトラックに対してメロディアスなフロウを重ねられる人物。彼の父親は以前より、自身の愛聴するボブ・マーリーを勧めていたそうだが、実際のところ音楽にのめり込んだタイミングはWILYWNKAよりも少し遅かったという。しかし、地元で開かれていたラバダブなどを通して韻を踏むスキルを磨き、その能力は彼のフロウをとりわけ聴き心地よく昇華させている。

 そして、2人の先輩としてはもちろん、プロデュースとトラックメイクの側面からも変態紳士クラブを支えるGeG。現在も同ユニットと並行してバンド活動に携わるなど、バンドマンとしてキャリアを歩んできた人物だ。そのため、彼の作るトラックには、生音基調なものが多い印象を受ける。

 また、楽曲の制作方法もトラックメイカー界隈では珍しく、GeGは親交のあるミュージシャンにデモ音源を渡して楽器を弾いてもらい、そのデータをエディットするとのこと。しかも、データ送付時にはLINEを使うというのが非常に現代チックだ(参考:FNMNL)。あわせて、彼は2019年8月に初アルバム『Mellow Mellow~GeG’s PLAYLIST~』を発売しているのだが、同作のとある収録曲やそのトラックの特徴については本稿終盤に取り上げたい。

 上記の通り、各ジャンルの名プレイヤーが揃う変態紳士クラブ。ここからは、彼らが4月30日に発売する2nd EP『HERO』を収録曲順に辿りながら、ユニットとしての音楽性について改めて綴っていきたい。

 はじめに、激しいボースティングを繰り広げる「Do It」や、“急がず自分らしく壁を乗り越えろ”と背中を押す表題曲「HERO」では、彼らの綴る等身大なリリックと一緒に、トラックのサウンドにも意識を向けてほしい。ここでは、ヒップホップやレゲエを基に、ポップスやロックのサウンドも上手く織り交ぜられていると伝わるだろう。

変態紳士クラブ – HERO (Official Lyric Video)

 続く「No Reason」は、WILYWNKAとVIGORMANによる両者の声質やフロウのコントラストを楽しめる楽曲。8小節ごとに入れ替わるマイクリレーは、それぞれのパートでがらっと景色が変わるようにも感じられる。それでも、お互いのバイブスを重ね合いながら、楽曲のバランスや世界観を崩さないところが、2人の力量が示されるところだ。

 終盤を飾る「DOWN」「YOKAZE」では、徐々にセンチメンタルな雰囲気に。ただ、その前に触れておきたい楽曲がある。前述したGeGのアルバム収録曲「Merry Go Round」だ。同曲には、変態紳士クラブのほか、チル系ヒップホップソングの最高峰「愛のままに」を生み出したBASIと唾奇の名コンビも参加。2019年夏を見事に彩ったヒットチューンで、もし仮に変態紳士クラブを知らなくとも、この曲を耳にしたことがある人も多いのではないだろうか。

GeG / Merry Go Round feat.BASI,唾奇,VIGORMAN,WILYWNKA (Official Video)

 そんな「Merry Go Round」から感じるのが、温もりに溢れた“メロウ”さ。このメロウな雰囲気に通ずる、肩の力が抜けた感触こそ、GeGや変態紳士クラブが特に表現を得意とするサウンドであり、彼らの音楽がヒップホップやレゲエとの接点が薄いだろうJ-POPリスナーにも広く親しまれる大きな理由だと思われる。それは、先程の「DOWN」「YOKAZE」にも当てはまっており、ミドルテンポでゆったりとしたトラックに、歌い手の心情や穏やかな情景描写が重なり、リスナーの心をじんわりと包んでいく。そして『HERO』を通して聴き終えた頃には、彼らのジャンルレスな音楽の完成度の高さに深く頷いてしまうはずだ。

変態紳士クラブ – DOWN (Official Music Video)

 その自由な活動スタンスを、代表曲になぞらえて“好きにやる”と表現されることの多い変態紳士クラブだが、それは決して一貫性のない音楽活動をすることとは同義ではない。今回の『HERO』は、彼らの存在感をさらに高めると同時に、ますますジャンルレスな方向性へと押し進めてくれる一枚になることだろう。そして同作が、変態紳士クラブの名がより多くのリスナーに広まるきっかけになることを強く願いたい。

◼︎一条皓太
出版社に勤務する週末フリーライター。ポテンシャルと経歴だけは東京でも選ばれしシティボーイ。声優さんの楽曲とヒップホップが好きです。Twitter:@kota_ichijo

■番組情報
テレビ東京系『流派-R since2001』
毎週金曜日25:53~26:23
番組サイト

変態紳士クラブ『HERO』

■リリース情報
2nd EP『HERO』
4月30日(木)Digital Release

<収録内容>
1.Do It
2.HERO(配信リリックビデオ)※テレビ東京系『流派-R since2001』5月度OPテーマ
3.No Reason
4.DOWN(配信MV
5.YOKAZE

■ツアー情報
『変態紳士クラブ 全国TOUR「変態紳士舞踏会-“HERO” TOUR 2020-」』
6月13日(土)DRUM LOGOS(福岡)Open18:15/Start19:00
6月19日(金)BOTTOM LINE(名古屋)Open18:30/Start19:30
6月25日(木)ZeppTokyo(東京) Open18:00/Start19:00
6月27日(土)Zepp Osaka Bayside(大阪)Open17:00/Start18:00
※スタンディング(整理番号付き)¥4,500+1drink

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