野宮真貴×高浪慶太郎が振り返る、1990年代のピチカート・ファイヴ 時代を創る音楽が生まれるまでのバックストーリー
「慶太郎くんの曲があったから歌詞を書くチャンスが巡ってきた」(野宮)
ーーその勢いでリリースされた『ボサ・ノヴァ2001』からは、高浪さんの曲は5曲配信されますが、そのうち3曲の作詞を野宮さんが手がけています。
高浪:自分が歌詞を思いついた曲は自分で書いたんだと思いますが、真貴ちゃんが作詞した「ピース・ミュージック」、「スリーパー」、「レイン・ソング」は、今聴いてもすごく良いんですよね。
野宮:それは嬉しい。ピチカートで私が作詞をしたのはこの時期まででですね。慶太郎くんの曲があったから歌詞を書くチャンスが巡ってきたんだと思う。慶太郎くんの曲はメロディアスで歌いやすいし、今回の配信には入らなかったけど、「ベイビィ・ラヴ・チャイルド」(『女性上位時代』)も「トゥイギー・トゥイギー」とともに海外ではとても人気があったんです。
高浪:海外でウケたのは予想外でしたけど、僕らと似たような嗜好の音楽マニア、ギークと呼ばれるような人たちは世界中にいるんだなとは思いましたね。
ーー『ボサ・ノヴァ2001』は、全体に60年代のラブ&ピースな雰囲気がありますが?
高浪:そうですね。なぜそうなったのかは忘れましたが、ラブ&ピースは真貴ちゃんの歌詞にも出て来るし、フラワーでサイケデリックな要素は随所に出てきますね。ネタ的には「ピース・ミュージック」はThe Rolling Stonesの「She’s a Rainbow 」、「スリーパー」はSly & the Family Stone、「レイン・ソング」はレニー・クラヴィッツがプロデュースしたヴァネッサ・パラディのアルバムがなんとなく頭にありましたね。
ーー高浪さんの5曲は、クラブミュージックに傾倒していく中で、ピチカートが初期から得意としていたMOR(Middle Of the Road / 気軽に聴ける親しみやすい音楽)、ソフトロックや職業作家の系譜を感じさせますね。
高浪:僕はずっとそういうつくりかたできたし、90年代になってもそれはあまり変わらなかったですね。「皆既日食」のアコースティックギターは青学「Better Days」の先輩、斎藤誠さんで、チェロは溝口肇さんなんですよ。「愛の神話」は、まさにThe Fifth Dimensionの「アクエリアス」(『輝く星座/レット・ザ・サンシャイン・イン』)だし、それまでに影響を受けた音楽が自分の曲やアレンジの核になるタイプなんです。
「あの時代に自分も動いていたし、何かに動かされていた」
ーー今回の配信で、91年から93年のピチカート・ファイヴを高浪さんの曲で振り返ってみて、あらためて感じたことはありますか?
高浪:ホントに久しぶりにアルバムを聴き直してみたんですが、やっぱり、あの時代に自分も動いていたし、何かに動かされていたんだなとは思いますね。僕がピチカート・ファイヴにいた10年くらいの間も、手を替え品を替えやってきましたが、CBS・ソニー時代はライブができなきゃダメだって言われていたバンドが、僕が辞めた後にワールドツアーをやったり、隔世の感はありましたね。
野宮:慶太郎くんは、『ボサ・ノヴァ2001』を最後に辞めたけど、パリやニューヨークにも、全国ツアーにも一緒に行ったし、プライベートでも仲良くしていたのでいろんな思い出があるし、あらためて素敵な曲を書いていたんだなと思いましたね。それを歌えたのは歌い手としても良かった。
高浪:2013年に真貴ちゃんがポータブル・ロックを期間限定で活動したとき、一緒にライブもやったよね。
野宮:そう。長崎と福岡で慶太郎くんのユニットと一緒にライブをして、本当に楽しかった。
ーー9月21日の野宮さんのデビュー40周年記念日には『40周年オンラインリサイタル』が開催されますね。
野宮:そうなんです。40周年の第1弾は「野宮真貴アーリー・イヤーズ」と題して、デビューからピチカート・ファイヴの初期の楽曲を届ける配信ライブをします。今回の配信のスタートが決まる前に40周年記念の配信ライブを予定していたので、偶然タイミングが重なったんです。私は以前からピチカート・ファイヴの曲は歌い継いできて、慶太郎くんの曲「皆笑った」や「ベイビー・ラブ・チャイルド」はライブでもよく歌っていたんですが、今回は配信される慶太郎くんの曲も何曲か歌おうと思っています。私が初めて作詞した曲とか、ライブで初めて歌う曲とか、かなりレアなライブになりそうです。40周年という節目にふさわしいライブにしたいなと思って。
高浪:それは嬉しいし、楽しみだな。真貴ちゃんが40周年というのも驚くけど、ピチカートも1985年デビューだから、けっこうもうすぐなんだよね。
ーー最後に、『配信向けのピチカート・ファイヴ』その1「高浪慶太郎の巻」の聴きどころを。
高浪:アルバムでは聴けない並びで、僕の曲だけを配信で聴くというのは自分でも新鮮でしたし、真貴ちゃんとコラボレーションした曲も含めて楽しんでいただければ嬉しいですね。
野宮:海外の根強いファンも含めて、ピチカート・ファイヴの配信を待っていたという人も多いと思うし、慶太郎くんの美しい曲と私が書いた歌詞もこれを機会にぜひ聴いてほしいですね。
■リリース情報
『配信向けのピチカート・ファイヴ その1 高浪慶太郎の巻』
9月22日(水)配信スタート
<収録曲>
1.ブリジッド・バルドーT.N.T(詞/曲:高浪敬太郎 『最新型のピチカート・ファイヴ』1991)
2.Tokyo’s coolest sound(詞:小西康陽 曲:高浪敬太郎 『超音速のピチカート・ファイヴ』1991)
3.昨日・今日・明日(詞:野宮真貴 曲:高浪敬太郎 『超音速のピチカート・ファイヴ』1991)
4.ヴァカンス(詞/曲:高浪敬太郎 『レディメイドのピチカート・ファイヴ』1991)
5.空飛ぶ理科教室(詞:あがた森魚曲:高浪敬太郎 『レディメイドのピチカート・ファイヴ』1991)
6. ショック療法(詞:高浪敬太郎 野宮真貴 曲:高浪敬太郎 『スウィート・ピチカート・ファイヴ1992)
7.ファンキー・ラヴチャイルド(詞:小西康陽 曲:小西康陽 高浪敬太郎 『スウィート・ピチカート・ファイヴ』1992)
8.コズミック・ブルース(詞:小西康陽 曲:高浪敬太郎 『スウィート・ピチカート・ファイヴ』1992)
9.ピース・ミュージック(詞:野宮真貴 曲:高浪敬太郎 『ボサ・ノヴァ2001』 1993)
10.スリーパー(詞:野宮真貴 曲:高浪敬太郎 『ボサ・ノヴァ2001』 1993)
11.レイン・ソング(詞:野宮真貴 曲:高浪敬太郎 『ボサ・ノヴァ2001』 1993)
12.皆既日食(詞/曲:高浪敬太郎 『ボサ・ノヴァ2001』 1993)
13.愛の神話(詞/曲:高浪敬太郎 『ボサ・ノヴァ2001』 1993)
※敬太郎表記は当時
■野宮真貴 ライブ情報
『デビュー40周年オンライン・リサイタル~野宮真貴 アーリー・イヤーズ~』
1981年のデビュー・アルバム「ピンクの心」、1982年に結成され今もなお根強いファンを持つポータブル・ロック、そして1990年に3代目ボーカリストとして加入したピチカート・ファイヴまで、野宮真貴の初期の楽曲を中心にチョイス。9/22に配信となる高浪慶太郎の曲など、これまでライブではパフォーマンスをしなかったレアな名曲も歌う予定。
配信日:2021年9月21日(火)20:00~ ライブ配信予定
出演予定:野宮真貴(vo.)、 松田”CHABE”岳二(per.)、 菊地昇二(p.)、 鈴木智文(gt.)
見逃し配信:2021年9月28日(火)23:59まで予定
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