松尾太陽、『ものがたり』収録曲から紐解く“過去・現在・未来” ソロとしての夢も明かす

松尾太陽が語る“過去・現在・未来”

 昨年9月にソロシンガーとしてデビューした松尾太陽(まつおたかし)が1stフルアルバム『ものがたり』をリリースする。全編英語歌詞の「Magic」やピアノトリオバンドのOmoinotakeとコラボしたラブソング「体温」、自身で作詞作曲を手がけたエールソング「ハルの花」という配信3部作を含む全10曲入り。シティポップをテーマにしていた前作『うたうたい』とは一転し、ダンスポップやエレクトロ、R&B、ブギーファンク、ヒップホップなど多彩なサウンドを取り入れ、先鋭的な音楽クリエイターが集結したアルバムで語られる、自身の過去・現在・未来をつなぐストーリーとは。(永堀アツオ)【記事最後にプレゼント情報あり】(※取材は8月に実施)

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常に自問自答していたような気がする1年

——ソロシンガーとしては初となるフルアルバムが完成した感想から聞かせてください。

松尾太陽:すごく壮大な物語を作れたんじゃないかなと思いました。たくさんのアーティストさんに楽曲提供をしていただいた楽曲の中で、自作の曲も収録できて、こんなに嬉しいことはないです。今は早くたくさんの方に聴いていただきたいっていう気持ちでいっぱいですね。

——まさに「物語」というのがタイトルにもなってますね。最初からストーリー性のあるアルバムにしようと考えていたんですか。

松尾太陽:1つひとつの曲に意味があって、頭から最後までしっかりと繋がっている作品を作りたいなとは思っていたんですけど、どういう視点からストーリーを作るかは悩みましたね。自分と照らし合わせたストーリーにするのか、そうでないのか。いろいろと迷ったんですけど、ある意味、名刺となるアルバムにしたいなという思いもあったので、自分のこれまでの道筋を辿っていけるような、ヒストリーが見えるようなアルバムにできたらいいなと思ってました。

——どんな「ものがたり」になっていると言えばいいでしょうか。

松尾太陽:自分の人生に照らし合わせる形になっています。ソロデビューしてからは1年なので、まだまだなんですけど、自分の歩いてきた道を振り返ってみると、真っ直ぐで平坦な道ばかりじゃなくて。ぐらぐらしたり、でこぼこしていた道もたくさんあった人生だなと思ったんですよ。今回、曲によって、いろいろとジャンルが変わったりするんですけど、それも自分の道筋を表していて。まさに、自分が今まで歩んできた人生を辿ったようなアルバムになっていると思います。

——アルバム全体としても、1曲単位でも、現在に地に足をつけながら、過去を振り返り、未来に歩き出している感があると思うんですが、“過去”、“現在”、“未来”を象徴する曲をあげてもらえますか。

松尾太陽:まず、“過去”はBIALYSTOCKSさんが提供してくれた「橙」ですね。夏の夕方を表したような爽やかなシティポップなんですけど、歌詞はしっとりした現実味があって。これからどうなるかわからないし、紆余曲折あるかもしれないけど、それでもいい。今、進んでいる道をしっかりと歩んでいきたいっていう気持ちがこもった曲だなと思いますね。

——振り返ってみた道はどんな道でしたか。

松尾太陽:平坦な道もありましたけど、突然、思いもよらないことが起きたこともあったし、突風が吹いたこともあったし、いろんなハプニングもありました。でも、そういう道だったからこそ、自分の意思も固まったし、自分の気持ちが強くなれたんだなって思いました。だから、過去を振り返ってはいるけど、これから活動していく上での覚悟というか、人間としての強さを出している部分もありますね。

——“過去”でもう1曲、「Time Machine」についても聞かせてください。

松尾太陽:これは、THREE1989のボーカルのShoheyさんの実体験を基にした曲になっていて。

——そうなんですか? 太陽さんの過去を振り返ってるのかと思って聞いたんですよ。

松尾太陽:違うんですよ。Shoheyさんは、昔からアーティストになることが夢だったけど、周りからは反対されたりすることがあったそうなんですね。でも、アーティストとして活動ができているっていうことを今の自分が、過去の自分に語りかけている。そういうメッセージ性のある曲なんです。

——〈壊れそうな心 15歳の不安に〉というフレーズが、太陽さんが超特急を始めた年齢と同じですよね。

松尾太陽:そうなんですよ。だから、共感できる部分も多くて。僕も周りに歌手やアーティストを目指す人はもちろんいなかったですし、周りとのズレもすごく感じていました。だから、この曲を聴いた時に、実際にタイムマシーンに乗って、時空を乗り越えて行ってる感じがしましたね。

——15歳の松尾太陽はどんな心境でしたか。

松尾太陽:うーん……何も考えられなかったですね。急転直下でボーカルをやることになって。とにかくもう、状況が飲み込めていなくて。みんなが前を向いて歩いて行ってるから、ついて行かないといけないし……っていう思いでした。僕は歌もダンスもやったことがなくて。キャリア0の状態だったんですね。だから……当時はそんなふうには思ってなかったんですけど、振り返ってみると、相当しんどかっただろうなって。不思議なことに、当時の自分は何にも考えてなかったから(笑)、辛さも感じてなかった。3歩歩いたら、悩んでいたことも忘れちゃう、みたいな性格だったんです。そんな自分だったからこそ、乗り越えてこれたんじゃないかなと思います。

——1つひとつに立ち止まって悩んでいたらついていけなかったかもしれない。

松尾太陽:今、思うと、昔の自分は本当にポジティブだったなと思いますね。我ながらすごいなと思うことがあります。

——15歳の自分に24歳の自分が今、声をかけるとしたら?

松尾太陽:(未来のことを)全部言ってしまうのは違うなと思うので、ざっくりと「楽しいことがいっぱいあるよ」っていうことだけを伝えて、僕は現在に帰ってこようと思います。

——当時、想像していた未来にいますか。

松尾太陽:いや、ソロ活動は想像してなかったので、全然違うと思います。当時の自分はそこまで明確な夢がなかったので、「楽しいことがあるよ」っていうことだけを伝えられたら、15歳の僕はきっと満足するような気がしますね。

——では、“現在”を象徴する曲は?

松尾太陽:今のことを歌っているのは、macicoさんが提供してくれた「anemone」ですね。友達と連絡を取ったときに、「じゃあ、また今度ね」って話を締めることがあると思うんですけど、その“今度”はいつになるのかわからない。今、会いたくても会えない状況だったりするのこともあって、大切な人を蔑ろにしてしまってるんじゃないかっていう不安に煽られてしまったりとか、考えなくてもいいことまで考えてしまうことがあると思うんですね。そんな状況の中で今、何を大切にすればいいのか。僕は、自分の中での気持ちだったり、自分のこれまでの道のりだと思っていて。気持ちや道のりといった“形のないもの”を大切にして、今を生きていく方がいいんだよっていうことを、この曲では伝えているので、まさに、今のことを歌っているなと思います。

——太陽さんにとっては、アルバム制作が自分を見つめ直す作業にもなってるんですね。

松尾太陽:本当にそうでしたね。ミニアルバムをリリースしてからの1年は自己分析というか、常に自問自答していたような気がしますね。ただ、自分のこれからの活動において、小さなことでもいいから、ちゃんとした夢を持つべきだなと思ったのと、音楽鑑賞ではなく、“音楽採取”というものを常日頃からしていきたいなと思いましたね。そうすることで、こういう方達に楽曲提供をしてもらえたらなとか、こういう場所でライブをしたいなとかを考えることができる。あとは、自分でも、もっと曲を制作したいので、今流行っている曲を聴いて、自分がその曲をモチーフにして作ったらどういう曲になるだろうっていう研究をしています。あえて、同じように作ってみて、ギミックを間接的に理解しようとしたりとか。そういった作業をこの1年ではかなりしましたね。

——今、話に出た“夢”で言うと、現時点ではどんな場所でライブをしたいと思っていますか。

松尾太陽:いずれはアリーナでライブがしたいです。今はまだありえないくらいの夢を持つべきだなと思いました。目標がない状態で進んでいくのは、きついなと思ったし、今、目の前にある活動において、もっといろんな方に喜んでもらえるように、自分がより熱意を持って挑みたいなと思ってますね。

——では、楽曲提供してもらいたい人はいますか。

松尾太陽:曲を聴いて、自分が歌ったらどんな感じになるんだろうって思ってる人が何組かいまして。例えば、LUCKY TAPESさん、I Don’t  Like Mondays.さん、BRADIOさん。やっぱりバンドサウンドが好きなんですよね。あと、SNSで聴いて、いいなと思っているのは、tofubeatsさん。言うだけはタダなので、いつかって思っています。

——tofubeatsさんだとラップになりますかね。

松尾太陽:そうですね。今回、OHTORAさんが作ってくださった「デジャヴの夜」という曲でラップをしてて。松尾太陽のサウンドとしては異色だったんですけど、すごく心地よくて。実は僕、ラップをやってみたかったんですけど、自信がなかったんですよ。でも、こうして楽曲提供していただいた喜びから、しっかりとこの世界観に入り込んで、カッコいいものを作りたいなっていう一心でやってましたね。

——オートチューンもかかってるので、いつもとは違う歌い回しになってますよね。

松尾太陽:普通に歌うともったいない感じになってしまうので、あえてゆっくりにしてみたり、加工の仕方も研究をしました。歌ってみて、想像とは違った時は、もう一回歌って。丁寧に何度も試行錯誤を繰り返しました。普通に歌うと違和感を感じるところでも、オートチューンをかけるとパンチが効いてきたりして。すごく面白かったですし、いろんなハイブリットを感じた曲でしたね。

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