akihic☆彡×神田勘太朗『D.LEAGUE』対談 ワールドワイドなコンテンツとして進化する“音楽×ダンス”の関係性

akihic☆彡×神田勘太朗対談

 1月10日から全12ラウンドのレギュラーシーズンとチャンピオンシップを経て、初年度を終えた日本発のプロダンスリーグ『第一生命 D.LEAGUE 20-21』。9チームがそれぞれ違うスタイルのダンスで競う、その光景は異種格闘技戦さながらで多くの人々を魅了した。

 そのなかでも特に躍進を見せたチームといえるのが、SEPTENI RAPTURESだろう。前半戦までは目立った結果を残せずにいたが、中盤戦以降は突如として毎ラウンドの優勝争いに絡む存在へと変貌。シーズンの結果は5位と惜しくもチャンピオンシップへの出場権は逃したが、来季以降のさらなる飛躍を予感させるチームだ。

 チームディレクターはakihic☆彡。Beat Buddy Boiとしてメジャーデビューも果たし、数多のジャンルを知る彼だからこその組織作りに変身の秘訣があるはずだ。今回は来季以降のチームの展望も含め、akihic☆彡と株式会社Dリーグ代表取締役COO・神田勘太朗の対談を行った。初シーズンを終えて、今彼らは何を思うのか。(小池直也)

SEPTENI RAPTURESが見せた“チームとしての成長過程”

ーー今季の戦いを振り返ってみていかがですか。

akihic☆彡:ROUND.4までは成績がイマイチで、ROUND.5からRAPTURESの良さが伝わり始めた気がします。そこからはメンバーもぐんぐん成長していきました。負けを知った方が勝利の喜びは大きいですね。個人的にはすごいチームが揃っているなかでも、RAPTURESが一番「D.LEAGUE」に相応しいチームだと思ってやってきました。シーズンのなかで全員がダンサーとしても人としても成長しましたし、それくらい自信を持たないといけないので。

神田勘太朗(以下、神田):RAPTURESの戦略については、開幕前から「多くのジャンルを持っておくことによって、後々に引き出しの多さが効いてくるような作戦」だと聞いていました。その通りになったのではないかと思いますね。第1戦からトップギアではありませんでしたが、終盤まで通して考えると巧みな戦略だったのかなと。

akihic☆彡:12戦を戦う時にヒップホップだけでやり抜くこともカッコいいですが、ファンを増やしたりエンタテインメントの面から考えると、大きな視点で「ダンス」を考えることが大事なのかなと。12戦どのラウンドを見ても飽きないチームを作りたかったんです。

akihic☆彡

ーーROUND.5にて、楽曲「Mellow feat.Shunské G & SNG」を使ったパフォーマンスで優勝したことがターニングポイントになったと思うのですが、やはり手応えはありましたか。

akihic☆彡:「Be The One」というテーマのもと、気持ちだけでなくチームダンスとしてもシンクロしなければならず、それぞれの個性も立てなければいけなかった。そんななか「Mellow」でMiYUを主役にして、そのなかでAKIに女性らしい設定やバックダンサーの役割を割り振ったことで、チームの未来像が見えた気がします。「ダンスと設定がしっかりしていて、MiYUのスター性も光らせる」というやり方が固まったのは大きかった。

 「Mellow」はもともと決勝で披露する予定だったんです。小道具を使うアレンジなので、他チームがネタを出し尽くした最後にいきなり出そうと企んでいて。でもROUND.4でBeat Buddy Boiの思い入れのある曲を使った自信作が悔しい結果になったので、この流れをガラッと変えたいと思ってROUND.5に持ってきたんですよ。結果的に全員のモチベーションがグンと上がりました。

【試合映像】SEPTENI RAPTURES [第一生命 D.LEAGUE 20-21 REGULAR SEASON ROUND.5 “Mellow”]

神田:今までダンス界に向けていたものを表に出したのが「D.LEAGUE」なので、多くの人が見た時にRAPTURESの上手さは分かりづらいだろうなと。それが「Mellow」で明らかにオーラが変わって、それを審査員も視聴者も感じたはずなんですよ。「Be The One」というテーマは、会社で言えば企業理念ですから、これをメンバーがどこまで本気で考えているのかで、作品の出来が変わってくるはずだと思ってはいました。それ以前はどこか上手くいってないようにも見えましたが、ROUND.5でビジョンと気持ちが一致したのかなと。そして自信が付いたんでしょうね。

ーー確かに、そこからSEPTENI RAPTURESは毎ラウンドで優勝争いに絡むチームに変身しました。

神田:もともとのダンスチームではなく「D.LEAGUE」に際して集まったチーム全てに言えるのは、「プロ契約なので1年間は何があっても同じメンバーで戦わなくてはいけない」ということです。嫌でも一緒のチームで踊るんですよ。仕事では当たり前で「嫌な上司や同僚がいるから」という理由で会社は辞められない。基本的にダンサーは好きな人としか踊らないので、そう思うことは少ないと思いますが「D.LEAGUE」ではあり得る。

 メンバーの性格や好きなダンスは、akihic☆彡の好きなものとは違う可能性もあるので、落としどころを作らなければいけないんです。しかも作品として最良の落としどころを探る必要がある。それを理解するまでに1年かかるのか、3年かかるのかはチームそれぞれですが、RAPTURESは「Mellow」でそれを見つけたんですね。アイドルグループも他のスポーツも結局は「共闘」なんですよ。全員の仲が良いから好成績が出るわけではないですが、RAPTURESは成長過程をいい意味で見せてくれました。

神田勘太朗

ーーチームのYouTubeチャンネル「ラプチャンネル」ではチームの仲の良さが滲み出ているように感じます。ROUND.9勝利後もAKIさんが「akihic☆彡さんがポジティブな言葉をかけてくれた」とコメントしていましたが、普段からチームの雰囲気づくりなども心がけていらっしゃるのでしょうか。

akihic☆彡:常にやってますね。その結果かは分かりませんが、メンバーは僕のことを「パパ」と呼ぶんですよ(笑)。サッカーでは仲良くない選手がいるチームでも強い、ということはあるかもしれませんが、ダンスにおいては気持ちが表現に出てしまうことがある。それを回避するためにも全員が大人でなければいけないので、その舵取りを最初にしました。もちろんディレクターとして上から物を言うのではなく、全員の想いを汲み取った上で「ではこうしようか」と進めることで、メンバーとの信頼関係を構築していった感じです。だから「君たちがダンスを上手く踊れるのは分かっているし、それを僕はコントロールする。でもそれぞれがリスペクトし合って、思いやれなかったらこのチームはやっていけないよ」と。

ダンサーが楽曲をプロデュースすることの意義

ーー改めて、半年に12個の作品を作って勝負するということについて、いかがですか。

神田:いやあ、本当に1年に12回はキツいと思いますよ。2週間で曲を作って、振り付けて練習して。それでクオリティをどこまで上げるか。全ディレクターが「ようやるな!」という感じです。

akihic☆彡:試合を観ているだけだと気付かないところですよね。僕は振り付けるのが早いタイプで、今は3日あれば大丈夫。2週間に1つ作品を出すことになるとは思っていませんでしたが、意外といけるなと。最初は僕のクセを掴めているのが弟子のAKIだけだったのですが、メンバーの振りを覚えるスピードも半端なく上がりました。「こんな感じ」と伝えたら、もう覚えている(笑)。自分がやっているBIG CHEESE!というチームもそうなんですよ。1度見せたら「もうできるよね? では構成いくよ」というスピードで。それがRAPTURESでも可能になりつつある。大変ではありますけど、苦ではなく楽しんでいます。

神田:あれだけスキルの高い子たちが、自分の意図した通りに踊ってくれるという快感もあるんじゃない?

akihic☆彡:ありますよ。例えばMiYUだったら、必要最低限しか言わないです。「ここで真ん中に出て、ヒップホップでスクラッチして前に行ってください。単純にダウンすればいいから」と伝えるのですが、彼女なら何かやってくれるだろうと。その期待通りに彼女が指示を越えるパフォーマンスをしてくれるのは快感ですね。あとは自分が考えた振りをみんなが宝のように踊ってくれるんですよ。それも気持ち良くて、皆のために脳を振り絞って考える快感があります。いろいろ仕事があるなかで、今のディレクターという役職は辛さよりも幸せの方が大きいかもしれません。

ーーたびたび問題提起される「エンタメとダンスのバランス」に関して思うことはありますか?

akihic☆彡:個人的に小道具を使うのは人を騙せる時だと思ってます。ROUND.8の「For U feat. Not」では、椅子を2回しか動かしていないのですが、何度も使っているように見える仕掛けなんですよ。でも、それに頼りすぎると、ストリートダンスの良さが消えてしまうので、割合を考えています。そこはどのチームも大変なんじゃないですかね。

 2週間しかないので、僕なら10回やって1回でも失敗するくらいなら小道具の使用をやめます。10回とも成功したら自信もついて安心できますね。「これしかないから、これをやるしかない」という妥協は絶対しないです、小道具を使う時は特に。自分の経験上、簡単なことほど良く見えたりするんです。難しいことをやりすぎるよりも、意外と簡単なフロアダンスをしっかり揃えた方が100点取れると思っているので。

Dリーグ ROUND.8 SHOW 6・ SEPTENI RAPTURES / 第一生命 D.LEAGUE 20-21 ROUND.8

神田:なぜ小道具の制限があるのかというと、長期的な視野で見た時に、道具やデジタルなものに頼るのは限界があるし、コストもかかるので自由度が下がると考えているからです。大道具を使えたら盛り上がるのは分かっていますが、バスケもサッカーもシンプルだからこそ続いているんですね。照明も画角の調整もいらず、ダンスそのもので場が沸くようになるのが究極の目的なんです。それにお客さんの生の反応や声が入ったらまた作戦も変わっていくと思います。ファンの数によっては煽る内容になったり、逆に静寂系のネタになるかもしれません。今季で学べたことは来年以降に活きてくるはずです。

ーー楽曲についてですが、akihic☆彡さんは全てを自分でプロデュースされていますね。

akihic☆彡:はい。ROUND.2の「TAPnBOX feat.HIRONA & YUKI ADACHI」は自分でエディットもしましたが、基本的にビートメイカーと話して、構成を伝えて作ってもらいます。コード進行も任せますね。リファレンスがある時は自分で探してきて「この感じで」と伝えたり。特にROUND7の「We ☆ ourselves with HIPHOP feat. Not」は「Run-D.M.C.『Walk This Way』のイメージもありながら、MURO feat.UZI,DELI,Q,BIGZAM,TOKONA-X,GORE-TEX『CHAIN REACTION』のような疾走感のある、ブレイクビーツっぽい感じ」とオーダーしていて。「ここでスプレーを使いたい」という振りのイメージも伝えました。制作には仲間や元生徒が関わってくれているので、自分のクセも理解してくれてて助かります。

【D.LEAGUE】SHOW 5 SEPTENI RAPTURES / 第一生命 D.LEAGUE 20-21 ROUND.2

ーー先ほども挙がったShunské GさんやHIRONAさん、YUKI ADACHIさんなど、知る人ぞ知る名前が登場しますね。

akihic☆彡:彼らは友達なので一緒にやりたかったんです。例えばヒューマンビートボックスのHIRONAは舞台も一緒にやっていたので「D.LEAGUE」を通じて彼らを知ってもらえたり、恩返しできたらなと。Beat Buddy Boiもそう。なので、いろいろな人に声をかけるようにはしていました。

 あとダンス界には「この曲を使えば勝てる」というノリがあるのですが、そういう曲を作れたらストリートシーンがもっと盛り上がるはずです。「自分たちが作った曲を使うのが恥ずかしい」という意識もまだあると思うので、その垣根は越えていきたいですね。若い子がバトルやコンテストでRAPTURESの曲を使ってくれるようになったら嬉しいです。

神田:キッズダンサーとかは早い段階でそうなるかもしれませんね。RAPTURESの曲がバズりやすい、と思われたら自然に使われていくはずです。SNSをやっている子たちもBTSやTWICEの曲だと再生数が上がると思っているはずで、今後「D.LEAGUE」の注目度が上がって、アルゴリズムに影響し始めたら絶対に行けますよ。あとは強烈なフレーズですね。90年代のヒップホップは単純なループでも頭に残る要素があるじゃないですか。それを生み出せれば間違いない。

akihic☆彡:コンテストとかになると、ループのなかにどこか引っ掛かりや裏切る部分があると構成しやすいんですよ。あとはカンファレンス(登場)の曲みたいにショウケース用の2分バージョンと配信用のフルバージョンが作れたら、なお良いと思います。なかなか自分ひとりでやっていると、時間がないというのが実情ですが(笑)。オフシーズン中から取り組めたらと考えてはいます。

神田:ダンスを観てから「この曲の完成形を聴きたい」と思えるので、フルバージョンの配信は理想ですね。

akihic☆彡:あとは3年目くらいで余裕ができてきたら、ディレクター以外で音楽監督などを起用したいなと思っています。野球でいうピッチングコーチみたいな役割で。今は僕がジャケットから構想、振り付けもやっていますが、やはり手分けしていかないと難しい。

神田:来年かそれ以降かは分かりませんが、ダンサーがプロデュースする楽曲が世界的に聴かれるという瞬間を作れればと思っています。ダンスで楽曲が広がるのも今では当たり前になっていますから、そういう曲が「D.LEAGUE」から生まれてほしいですし、各チームで踊りと楽曲を広げていけるように影響力を持ちたいですね。YouTubeチャンネルの登録者数も開幕当初は3000人くらいでしたが、シーズンを終えた今は24000人以上になっています。

 当初から「海外の人からも見られるリーグにする」と言っていましたが、そのためには全部がオリジナル楽曲にならないと、堂々と外国に売りにいけないんですよ。2年目からはその準備が整う予定ですし、チャンスは広がってくるはずです。Dリーグとして海外に広げていくための戦いをしながら、チームには良いコンテンツを作ることで勝負してもらうという、この両輪で。



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