連載「Signal to Real Noise」第九回:にしな
にしなが明かす、曲を書き歌う理由 デビューから「東京マーブル」までの歩みから見えた“変わらない部分”
自分って結構人間っぽい
ーーアルバム以降、新曲もリリースしています。「U+」はGMOクリック証券のCMへの書き下ろしということで、これまでの楽曲とは違うプロセスの中で作っていった曲だと思います。
にしな:最初お話をいただいた時、楽曲のメッセージがポップな映像と合わさった時にこの時代に受け入れられてほしい、そして大きいテーマとして「多様性」というメッセージを込めたいと言われたんです。もともと枠に収まり切るのがあまり得意じゃないというか、好きじゃなかったので。自分が思う男女だったり国境だったり、色々な境目って何なんだろうというところから、自分なりに考えて書いていきました。でもやっぱりそこまでよくわからないし、頭の中もごちゃごちゃしちゃうんですけど。ただ、走り続けて乱れた呼吸で自分がちゃんと生きてるんだなっていうのを感じるし、それだけは確かにわかるなと思ったんです。それを素直に言葉にしていきました。タイトルはUnicodeでの性別表記からインスピレーションを受け、つけました。人と同じ類に分けられることへの安心感、そして違和感。その中で誰かと向き合う時は、概念ではなく貴方と私として見つめ合えたらいいなと思っています。
ーーテーマがあって、それと自分が普段考えていることや見えている世界がわりと近しいところにあった、というような感覚なんですね。ちなみに曲の中で〈時代〉という言葉がひとつのキーワードになっていますが、にしなさんは今のこの時代をどんなふうに捉えています?
にしな:あまり考えはしないんですけど、「U+」にも繋がるんですが、本当に色々なラインがすごく薄まっている感覚を持っている人が増えてきているんじゃないかなって思います。学校で私、ジェンダーのゼミに所属していたんですけど、それも相まって、よりそういう人が多いんじゃないかなって感じます。SNSを見てても思いますし。
ーーにしなさんの音楽も、弾き語りから出発しているけど、ジャンルという限られた箱の中にあるわけじゃなくて、すごく自由に色々なところに行けることを示していると思います。
にしな:音楽以外のことに関してもそうかもしれないんですけど、押し付けたくはない、という思いはすごくあって。例えば考えだったり価値観、それを自分のものとして吐き出す分にはいいと思うし、自分もしていきたいことではあるんですけど、押しつける人にはなりたくないなって思います。ミュージシャンとしても人としても。
ーーそしてもう1曲、ドラマ『お耳に合いましたら。』(テレビ東京系)のエンディングテーマ「東京マーブル」。ドラマとのタイアップというのも初でしたが、この曲はどういうふうに作っていきましたか?
にしな:私、もともとマーブル色が好きだっていうのもあって。なので色々な色が混ざった曲を作りたいなって思っていたんです。そのマーブル模様が、東京みたいにいろんな人が混じり合って生きている街に似てるなと思って。なんとなくそういうインスピレーションから作り始めた曲ですね。いつもは曲を完成させる時はちゃんと「結ぶ」ような感覚があるんですけど、この「東京マーブル」はいい意味であまり自分の中では結ばなかったんです。結ばなかったのか結べなかったのかわからないんですけど、自分の中ではちょっと不思議な部分がある曲だなって思います。
ーー結ばなくても、あるいは結ばない状態こそが完成なんだっていうような感覚があった、と。『お耳に合いましたら。』はポッドキャストを題材にしたドラマですけど、歌詞はその内容を意識しながら書いていった感じなんですか?
にしな:そこは特に意識しないで書いていました。意識した方がいいのかなと思ったりもしたし、実際にポッドキャストをいっぱい聴いたりもしたんですけど、最終的にはそこまで意識しなかった気がします。
ーー先ほど言っていたマーブル模様の世界の中で、自分自身がどういうふうに表現するのか、放っていくのかみたいなことをすごく強く歌っているような気がするんですよね。自分の気持ちを外に吐き出すために曲を作っていたというところから、自分の音楽が誰かにとってすごく大事なものになっている、そんな実感が強くなってきたというようなところはありますか?
にしな:確かに自分の曲が遠くに届いているような気持ちもだんだんしてきています。たとえば「ケダモノのフレンズ」の中にもあるんですけど、結局一人ひとりは孤独だけど、みんな孤独なんだなと思ったら繋がることができる感じがして。一人のことを歌っても、誰かと共有できるし、繋がってるんだという気持ちは、より増してきた気がします。
ーー音楽を始めて、今まで気づかなかった自分に気づけたみたいなところもあったりしますか?
にしな:あるかもしれないです。自分は意外と激しいところがあるのかもって思うことがあったりして(笑)。たとえばライブの時に、こう(視野が狭く)なるというか、すごくピリピリしちゃったりするんですよね。そういう時、自分って結構人間っぽいんだなって実感します。
ーーははは。でも、それってすごく大事な発見かもしれないですね。
にしな:そうですね。音楽を何でやっているのかというのも、それを感じたかったからなのかもしれないです。
ーーこれから、どんなアーティストになっていきたいですか?
にしな:自分の中にはっきりとしたイメージはないんですけど、変わらないでいたい気持ちと、もっと大きなステージに立てるようになりたいという気持ちとが両方あって。曲作りの面では、ちゃんと自分に素直に向き合って、変わらずに作っていきたいですし、歌うという面では、Zeppのステージに立った時、初めて立つ規模ではあったんですけど、思ったよりは大きくないなって思ったんです。そういう意味では少しずつ、もっと色々な人の前で歌えるようになりたいです。
ーー確かに、Zeppで観たにしなさんのライブは、会場サイズからはみ出ているような感じがしました。ちなみに、憧れのアーティストっていたりするんですか?
にしな:好きで聴いているアーティストはたくさんいるんですけど……憧れというと難しいですね。「こうなりたい」っていう憧れよりも、「好き」を色々集めているんだと思います。
■配信情報
にしな
「東京マーブル」
8月11日(水)配信リリース
※テレビ東京系 木ドラ24『お耳に合いましたら。』エンディングテーマ
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