リアルサウンド連載「From Editors」第89回:『ノノガ』と『タイプロ』に心動かされた一年の始まり
「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。
『No No Girls』と『timelesz project』、それぞれの面白さ
2025年最初に心を動かされたもの、それは『No No Girls』(通称:ノノガ/YouTube・Hulu)と『timelesz project -AUDITION-』(通称:タイプロ/Netflix)、二つの大型オーディション番組です。ちゃんみながこれまでにないガールズグループを作るべくSKY-HI率いるBMSGとタッグを組んで始動した『ノノガ』と、Sexy Zoneから改名したtimeleszが新メンバーを募った『タイプロ』、異なる性質を持つ両プロジェクトですが、二つを同時期に観たことでそれぞれの面白さや特徴が際立って感じられたように思います。
先日無事オーディションを終え、7名のメンバーがHANAとしてデビューすることが決まった『ノノガ』。これまでの人生の中であらゆる「No」を突きつけられ、自信と機会を失っていた候補者たちが、ちゃんみなとSKY-HIから正当な評価・アドバイスを受けながらのびのびと才能を開花。複数人での課題曲発表や最終審査のソロステージなど、デビュー前とは思えない素晴らしいパフォーマンスで毎回楽しませていただきました。
ボーカルやダンスなどの厳しい基礎レッスンと並行して、作詞作曲、振り付け、レコーディングなどデビュー後を見据えたプログラムがプロ並みのスピードで行われていったところに候補者たちのレベルの高さが窺えます。選考においては、そのタイム感に対応できるか、その中でグループの一員としての成長の可能性が見えるかというデビューに向けた現実的な部分に加え、個人の内面性もかなり重視されていました。まさに、プロデューサーを務めるちゃんみな同様、表現者としての素養を持ち合わせているメンバーが集結しているのが、HANAというグループのユニークな点です。これから彼女たちがクリエイティブにどの程度コミットするのかはわかりませんが、音楽的なスキルや伝えたい想いが根底にあることが、グループの作品に深みや説得力をもたらしていくのではないでしょうか。
また『ノノガ』は、候補者たちが過去も含めた自分を受け入れ、強く輝いていく姿が多くの視聴者の心を掴みました。“自己肯定感”というワードが飛び交う現代において、視聴者と同じように悩みを抱え乗り越えていくスターの存在は、多くの人にとっての支えにもなるでしょう。さっそく『シューイチ』(日本テレビ系)にてテレビ初パフォーマンスが行われるなど、デビューにむけて走り出したHANAの今後が楽しみです!
一方の『タイプロ』は、12名の候補生による5次審査が進行中。ダンスインストラクターや元アイドルなどの経験者に加え、アイドルに憧れを持つダンス・歌の未経験者も目覚ましい成長を遂げて選考に食らいついています。『タイプロ』の特徴は、新たな風を吹かせる存在との出会いが求められながらも、グループや事務所の伝統が意識されている点。ジュニアと呼ばれる育成期を経た者だけが持つスキルや感性をオーディション期間中に鍛錬し、その適性についても見定められていきます。
初期の方の審査では、歌やダンスの上手さだけでは図れないアイドルとしての素質や才能を見極める難しさを感じる場面もありましたが、ジュニア経験のある俳優部のメンバーが追加の候補生として合流したあたりから、審査内容もあいまって候補生一人ひとりの魅力が際立っていきました。timeleszも経験したという厳しいトレーニングへの挑戦、ステージに立つ者、アイドルとしての心構えや魅せ方などを教わり、候補生たちがどんどん磨かれていくさまを目の当たりにできるのは、こうしたオーディション番組ならではの醍醐味です。現時点では1グループ分のみ公開されているtimeleszメンバーによるプロデュース審査でのパフォーマンスは集大成とも言える出来栄えで、なんとも感慨深いものがありました。個人的には、いかにパフォーマンス中に目を惹く存在であるか、既存のファンはもちろん多くの人が応援したくなる存在であるかが鍵を握っているように思います。“仲間探し”の先にある新生timelesz、どんなグループになるのかしっかり見届けたいです。
まったく異なる二つのオーディションですが、共通しているのは人は努力する姿に心を打たれるということ、そして人は変われるということでしょうか。グループとアイドル、それぞれのあり方や求められるものの違いについても考えさせられるものがありました。『ノノガ』を観終えた方は『タイプロ』を、『タイプロ』の更新待ちの方は『ノノガ』を、コンテンツが揃っている今だからこそ一気見してみては。
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