flumpool、新たな物語の幕開けとなった『10th Tour「Real」』 想いの共有で築き上げた感動的なステージに
ここから始まる僕らの新たなストーリーを見届けて
後半戦は、「マスク着用で声が出せなくても、みんなが楽しめるように」と考えられた、様々なアイデアで観客を魅力した。
1つは、「ステイホームコーナー」と名付けられたコーナー。「声を出して騒げないことを逆手にとって、静かに音楽を聴く時間があってもいいと思う」と山村。メンバーは用意された椅子に座り、観客も着席して、歌と演奏をじっくりと楽しんだ。
「初めて愛をくれた人」は、両親に向けて書いたというバラードナンバー。大人になると、あの時はこういう気持ちだったのかなとか、親の気持ちが少し分かるようになったことを話した山村。会場には親元を離れて暮らしているというファンも多く、この歌を聴いて久しぶりに親に電話したくなった人もいたのではないだろうか。
コロナ禍で会いたい人にもなかなか会えず、不安が募っている昨今。「安心させてくれる言葉で曲を作ってほしい」という、ファンの声を集めて作られた「大丈夫」は、優しい包み込むような歌声が響いた。アコースティックの少し泥臭いサウンドは、暗いニュースでザラついた心を撫でてくれるようだった。
また「HELP」については、山村が「バンド活動を通して気づいたことを伝えたいと思って作った。苦しい時は人を遠ざけてしまう。自分もそうだった。人と一緒にいることで開ける道もある」と語る。様々な困難を経験してきた彼だからこその、力強くて真っ直ぐな歌声が、闇の中に手を差し伸べてくれる光のように感じられた。
もう1つは、このツアー専用の応援アプリ「PEPEンライトReal」を使用した「PEPEパラダイス」。同アプリは観客が自身のスマホにダウンロードし、ステージに向けて振ると画面に明かりがついて色が変わるもの。「動けますか八王子!」という呼びかけで始まった同曲は、60年代のエッセンスを取り入れた跳ねたビートのダンスロック。メンバーは体を激しく揺らしながらリズムに乗って演奏し、観客もビートに合わせてスマホを振ると、客席はまるで虹がかかったように、カラフルに彩られた。
ライブ本編の最後には、「みんなが示してくれた勇気ある一歩に捧げたい」と「Hydrangea」を演奏した。デビュー前からライブでお馴染みの楽曲で、メンバーがボーカルを歌い繋ぐことで知られる。〈立ちはだかる 砂漠の荒野へ〉には、彼らの決意と覚悟が感じられた。
アンコールでは、「コロナが収束しても大切な人との距離を大切にしていきたい」と語って「ディスタンス」を披露したほか、24日に披露した「花になれ」に替えて、ファイナル仕様で「東京哀歌」を演奏した。
「東京哀歌」は、2011年の2ndアルバム『Fantasia of Life Stripe』に収録された楽曲で、夢を見て上京した時のことを歌ったミディアムバラード。「あの頃と今も変わらず迷うし、不安や葛藤もあるけど、最初の気持ちは忘れてはいない。失敗してもいい。この気持ちだけは、みんなも忘れないでいてほしい」と山村は語った。
デビューから13年、新体制で挑戦していくという道を選んだflumpool。このツアーファイナルは、送り出すスタッフを不安にさせないために、最高のライブにしたいという気持ちもあっただろう。コロナ禍ではあるが、ファンと会える喜びを分かち合いたい気持ちもあっただろう。そんな様々な思いのすべてを乗せて最後に歌った「君に届け」は、今まで聴いた中でも最も感動的な演奏だった。
「アミューズに8年間守ってもらって、いただいたものを胸に、新しく頑張っていきます。ここから始まる僕らの新たなストーリーを見届けてください」。きっと今のflumpoolなら、どんな困難も乗り越えていくだろう。もう大丈夫、僕らも支えるからーー会場に集まったファンは誰もがそう思っただろう。そんな気持ちに応えるように、山村が〈僕にしか言えない 言葉を見つけたから/心まで交わしたい想い 君に届けたい〉と歌う。彼らの思いは爽やかな風のようなこの曲に乗って、これからも多くの人の胸に届いていくことだろう。
※1:https://www.flumpool.jp/sp/fptour2020/