Hey! Say! JUMPや平手友梨奈ら楽曲手がける辻村有記が語る、J-POPの可能性 「世界に発信していける文化の最後の砦」

辻村有記が語るJ-POPの世界ヒットの可能性

 辻村有記がソロでは2年半ぶりとなる新曲「head-bang」をリリースした。グローバルなオルタナティブポップと共鳴するミニマルでミステリアスなエレクトロに、シンプルで痛烈な日本語が乗ることでポップな強度が膨らみ、そのまま突き進むのかと思いきや最後はバンドサウンドの乱れ打ち。その流れはまるで、バンドマンからソロ、そしてプロデューサー業と、辻村が歩んできたキャリアに対する現在地からのアンサーのよう。そこで今回は、2016年にバンド・HaKUを解散するまで、北欧に渡ってサウンドプロデュースに目醒め、KiUi名義で海外にも向けた作品をリリースし、ほどなくして今度は辻村有記としての活動を始め、国内のポップやアニメカルチャーにも目を向けるようになった時期、そしてHey! Say! JUMPやNEWS、欅坂46や平手友梨奈らの曲を手掛けてきたサウンドプロデューサーとしての歩みの、大きく3つの側面からその魅力を紐解いていく。そして浮かび上がってきたJ-POPが世界でヒットを飛ばせる可能性とは。(TAISHI IWAMI)

北欧で得たJ-POPの魅力に気付くきっかけ

ーー「head-bang」は約2年半ぶりとなる辻村有記名義での新曲。2016年の夏にHaKUを解散してからすぐにソロ活動を始め、前作『Snowflakes』まではコンスタントにリリースを続けていたところから、少し間が空いたのはなぜですか?

辻村有記(以下、辻村):楽曲提供やほかのプロジェクトなど、自分が作った曲を発信できる場所が増えてきたことで、自分で歌うよりも誰かに歌ってもらうことのほうに魅力を感じるようになって、その状態がけっこう長い間続いていたんです。

ーー近年はHey! Say! JUMPやNEWS、欅坂46や平手友梨奈さんらへの楽曲提供や、バンド・Cho_Nans、海外のトラックメイカーとのコライトプロジェクト・KiUiなどが主だった活動でしたよね? そこからまたソロで動き出そうと思ったきっかけがあったのでしょうか。

辻村:作曲家として幅広く活動させてもらうなかで、最近になって今の自分が再びパーソナルな曲を作ったらどんなものができるのかなって、興味が湧いてきました。それでできたのが今回の「head-bang」です。

辻村有記 – 「head-bang」 Music Video

ーー「head-bang」を聴いて、辻村さんがこれまでに積み重ねてきたキャリアに対する、現在地からのアンサーソングなんじゃないかと思ったんです。2016年の夏にHaKUを解散したあと、実際にフィンランドやスウェーデンにも渡って、Fox.i.e名義で海外のエレクトロにアプローチした曲をリリース。そして辻村有記名義での活動や楽曲提供ではいわゆるJ-POPのフィールドにアタックして現在に至る。その結果、例えばMURA MASAやSOPHIEのような、既存のアンダーグラウンドとメインストリームといった概念の間をシームレスに往来してポップの在り方を塗り替えていくような曲を、日本から日本人として表現した曲になったのではないかと。

辻村:そう評価していただいたことは素直に嬉しいんですけど、制作に着手してから完成するまでの間は、“今の自分だったらどんな曲が作れるか”という興味の赴くままに、すごくナチュラルな精神状態で作っていったので、特に何か狙いがあったわけではないんです。でも振り返ってみて思うのは、昔から日本よりも海外の音楽をたくさん聴いてきましたし、MURA MASAやSOPHIEのようなコンテンポラリーなアーティストは大好きですし、アンダーグラウンドもメインストリームも含めたエレクトロを追いかけてきたことが、自分の根底にはあるんだなって思いました。それと同時に、主に楽曲提供を通じて見えてきたJ-POPの魅力も、すごく顕著に表れていると思います。受け取り方は人それぞれですけど、僕は「head-bang」をJ-POPだと言ってますから。

ーーでは、大きく言えばエレクトロとJ-POPという二つの軸を踏まえ、あらためて辻村さんのキャリアを辿っていきたいのですが、まずはHaKUの頃について。活動期間は2007年から2016年、音楽を聴くツールの変化、国内のバンドだけで固めたフェス文化の急速な発展など、激動の時代だったと思うのですが。

辻村:そうですね。いろんな見方があると思うんですけど、僕にとっていい時代でした。僕ら30代前半の世代は、CDやその音源をとり込んだカセットテープやMDで音楽を聴いていたところから、ダウンロードしてiPodに、そしてストリーミングが主流になっていく大きな変化を10代~20代の多感な時期に経験しました。そんな状況をミュージシャンとしての立場から見ると、CDはどんどん売れなくなっていくし全体的な景気も悪い、先の見えないすごく鬱々とした時代を過ごしたわけですけど、だからこそ、そういうムードの低下に抗うように、何かを作ることに救いを求めた人たちも多かったと思うんです。一方でスマホやパソコンひとつでアクセスできる情報はどんどん溢れてくる。それらの相互作用によって、ロックバンドだけで言っても、おっしゃったようなフェス文化もそうですし、そことは一線を引いたシーンもあって、アンダーグラウンドからもそれまでの価値観からすると奇妙なもの、変なものがどんどん生まれた。すごく刺激的な時期だったと思います。

ーーそしてソロになってからはすぐに海外に目を向け、実際にスウェーデン、フィンランドといった北欧諸国を訪れたうえで、2017年に入ってFox.i.e名義のシングル「Snow」と「You Are gone」をリリースされますが、その頃はなぜ国内ではなかったのですか?

辻村:もともと洋楽が好きだったのと、年齢を重ねるたびに「今のこの瞬間は二度とない」みたいな気持ちが膨らんできて、もう「いったれ」って。勢いですね。とはいえ、Fox.i.eでリリースしたようなエレクトロについては、最初から詳しかったわけではなくて。いろいろと掘り下げ始めたのはHaKUの後期あたりからなんです。

ーー掘り下げるようになり海外にまで渡ろうと思う引き金になったアーティストがいたのでしょうか。

辻村:決定的だったのはAviciiの存在です。それまでのダンスミュージックに対する僕のイメージが変わったというか、踊ることに特化した機械的でキャッチーな四つ打ちなのになんでこんなに泣けるんだって、感動したことはすごく大きかった。それで彼の母国・スウェーデンや北欧に行ってみたいと思いました。何を見て何を思ったらこんな曲が書けるんだって、その理由が知りたくて。

ーー北欧で得たもっとも大きなものを上げるとすればなんですか?

辻村:向こうの空気に触れながら技術を学べたことはもちろん、でもそれよりも大きかったのが、これ、もう一気に結論に近づいちゃうんですけど……、J-POPの魅力に気付くきっかけを与えてもらったことですね。

ーー北欧でJ-POP? どういうことですか?

辻村:向こうのアーティストに「日本の音楽のことを教えてよ?」と聞かれてもうまく答えられなかったんです。さらに「どうして僕らの真似をしようとするの? 自分の国のメロディを出さないの?」って。日本には良いところがたくさんあるはずなのに、胸を張って言える具体的なことが出てこない自分が恥ずかしかった。そこで、それまではほとんど聴いてこなかったJ-POPと向き合ってみた時に、すごい音楽だなって思ったんです。

ーーJ-POPのどんなところが魅力的だと思ったのですか?

辻村:日本の音楽って、メインストリームもすごくガラパゴスで独特じゃないですか。それはなぜかと考えたときに、海外から入ってきたポップスとかロックとか、いろんな音楽に日本語が合わないからというのも一因だと思ったんです。母音が長いし、歌うときのピッチ感も難しい。でも、うまくはまらないからこそ歌謡曲のような素晴らしいメロディが生まれて今のJ-POPに繋がってきた。

ーーなるほど。

辻村:あとはJ-POPって展開が難解じゃないですか。Aメロ→Bメロ→サビときて、CもDもあってサビ→サビみたいな。そこにストーリーがあってオチもある。それに対して欧米の曲は基本的にもっとシンプルだから「どうしてそんなに複雑なの?」と言われることが多いんですよ。それもまた、音符と言葉の独特な関係性を突き詰めた結果なんじゃないかと。

ーー展開は複雑でも結局サビに帰結するから、慣れてしまえばテンプレートが見えてくる。それに対して海外のポップスは引き算の発想やミニマルななかから新しいものがどんどん生まれてくるからおもしろいという、ネガティブな見方もあるじゃないですか。

辻村:そうですね。僕が思うに、海外にミニマルな曲が多いのは、言葉と音が一体になれるというか、言葉もトラックのサウンドの一つとして機能できるから。歌詞にそこまで意味を持たせなくてもいいんです。意味のあるものがないと言っているのではなく、その結果、聴き手の解釈も自由度の高い作品が多くなる。けど日本語は言葉が独立してしまうから、それ単体でドラマを描く必要性が高い。“作詞家”という職業が確立しているのもそういうことだと思います。そうなるとサウンドも含めて「この曲はこうです」とキャラクターのはっきりした、受け取る側としては余白の少ない曲が多くなる。そこが好きか嫌いか分かれ目にはなってしまう側面はあると思います。

ーーおっしゃったようなことから反応が画一的になってしまうことや、低音の鳴りが小さいといった音像の違いなどから、どうしても“洋楽”と“邦楽”で線を引いてしまう。

辻村:サウンドに関して言えば、本来はミニマルなものでも808のベースがズンズン鳴っていても、R&Bやファンクであったとしても、どんな要素が入ってきても、日本語で歌っている時点で、J-POPには崩れない強さみたいなものがあると思うんです。

ーーそれはJ-POPに改良を加えればグローバルな音楽になり得ると受け取ることもできますが、北欧を目指したことでその良さが見えてきたということも併せて、今度はご自身がJ-POPを世界に広めたいというお気持ちがあるのでしょうか。

辻村:僕がその金字塔を打ち立てるとか、そんなに大袈裟なことではないんですけど、日本語と音符の関係性ならではの響きを外から見たときの「なんでその音にこの言葉とメロディが乗るの?」みたいなおもしろさはもっと広まってほしいと思います。そういう意味では、K-POPがあれだけ世間を席巻しているなかで、J-POPはアジア/日本が世界に発信していける文化の最後の砦くらいの可能性があるんじゃないかって、仲間ともよく話すんです。

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