平手友梨奈「かけがえのない世界」はアイドルファンの心理を表した曲? 攻撃的な歌詞やパフォーマンスに感じた“呪縛”からの解放

 7月14日夜に放送された『2021 FNS歌謡祭 夏』(フジテレビ系)で初披露された平手友梨奈の新曲「かけがえのない世界」は、相変わらず攻めた作品だった。歌唱前に番組側から「自身も制作に携わった」との情報が添えられていたが、それを知らずとも歌詞を読めば大抵察しはついただろう。平手友梨奈は、どこまでも平手友梨奈だった。

ViVi(ヴィヴィ)2021年 8月号

 まず目を引くのが歌詞である。一見この曲は、“大切な人”を失ってしまって酷く悲しいといった失恋ソングに聞こえる。しかし、読み進めていくとどうもそうとは言い切れないようだ。主人公は冒頭で〈ちっとも 悲しくないよ〉とは言うものの、水道の蛇口を締め忘れるくらい心が追いついていない。かなり慌てている。やがて主人公は自身の本音を吐露していく。

〈失ってから わかって来た〉
〈大切な人よ どこにいるんだ?〉
〈こんな展開にがっかりしてる〉
〈You mean the world to me〉(あなたは私のすべて)

 依存心が強く、相手の存在をあたかも自分のアイデンティティかのようにして生きる主人公。まるで“推し”が突然卒業したファンの気持ちを歌っているかのようだ。その後、歌詞はこの人物の危険な一面にまで触れていく。

〈僕は元々 自己中心的で 他人のことなんか どうでもいい〉
〈別れるならば 傷つけ合うしかない〉
〈もう他には 何もいらない〉

 今っぽく表すなら“推ししか勝たん”的なマインドだろうか。依存性だけでなく攻撃性も孕んでいる。“大切な人”を失ったにも関わらず、荒々しいブラスセクションやハンドクラップが多用された軽快な裏ノリのトラックとダンスによって、喪失感というよりはむしろ全体的に“軽やかに乗りこなしている”感が出ているのも狂気じみていて良い。いわゆるSNS時代のアイドルファンの心理を映し出した一曲に思える。

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