Hey! Say! JUMPや平手友梨奈ら楽曲手がける辻村有記が語る、J-POPの可能性 「世界に発信していける文化の最後の砦」

辻村有記が語るJ-POPの世界ヒットの可能性

J-POPの評価が高まってきている

ーーK-POPはサウンドも戦略もポップス大国アメリカや世界のマーケットも踏まえたうえで成功しました。その視点からだと日本が後れを取った印象は否めないと思うですが。

辻村:K-POPは韓国の状況やお国柄もあって素晴らしい音楽が生まれていった。それに対して日本が後れているという感覚については、おっしゃっていることはわかるんですけど僕にはなくて。何をもって世界に広がるかですよね。

ーー事象の例としては、VaporwaveやFuture Funkがあって日本のシティポップが海外で掘り起こされたようなことでしょうか。

辻村:そんな感じで、現行のJ-POPがどこでどうなるかなんてわからないと思うんです。いきなりどこかの大国で火がつくかもしれないし、すでに日本独自の文化として世界に認知されているアニメが、J-POPをもっと広いフィールドに連れて行ってくれるかもしれない。Rina Sawayamaさんのような、UKで育ち活動しながらJ-POPの要素も盛り込んだ、とてつもないパワーを持っているアーティストトもいますし。

ーーその結果、Fox.i.eとして引き続き海外に向けたリリースを続けるのではなく、2018年には辻村有記名義で『POP』と『Snowflakes』という国内に向いたEPをリリースした。

辻村:当時は衝動が先行していましたけど、振り返ってみると確実にそうだと思います。

ーーそして楽曲提供の機会も増えていったことで得たものもあると冒頭でおっしゃいましたが、ソロと比較するとどのようなスタンスの違いがありますか?

辻村:最終的なアウトプットは僕ではなく歌やダンスといったパフォーマンスをする人たちなので、その人/グループが積み上げてきたストーリーや世界観など、考えなきゃいけないことはあるんですけど、僕はナチュラルに出したものがたまたまはまったケースが多くて、すごくラッキーだと思います。そうでない場合、いただいたオーダーに合わせていく仕事も、その一つひとつに冒険しているような感覚があるんですよね。そのうえで同じアーティストの2曲目、3曲目となると、ライブを観たりコミュニケーションを取ったりしたうえでのことになるから、さらにやれることが広がってやりがいが出てくる。それが最初に言った、ソロよりも楽曲提供に魅力を感じるようになった具体的な理由です。

ーーそこでピックアップしたい1曲が昨年のクリスマスにリリースされた平手友梨奈さんの「ダンスの理由」です。平手さんは欅坂46のなかでも、ひときわオルタナティブな個の力が強かった方。そんな彼女の表現力/発信力と辻村さんの個性がばっちりはまった、グループ脱退後のソロデビュー曲にふさわしいアグレッシブな曲でした。

辻村:平手さんはほんとうにすごい方。彼女なりのバックグラウンドがあるから、それを“あの若さで”みたいな年齢的なことでは言いたくないし、才能とか努力みたいな一言でも片づけられないと思うんですけど……そうですね、とにかく物事に対する向き合い方が尋常じゃないからこその実力なんだと思います。作業を進めていくなかで、僕がもっと頑張らなきゃいけないと思わされましたし、負けたくないなという気持ちも芽生えました。これまでに作ってきたどの提供曲にも思い入れはあるんですけど、ディスカッションやコミュニケーションを通じて、そういうせめぎ合いみたいなものが起こったのは久しぶりで。だからおっしゃったように、平手さんの世界観と僕が出せる色が合致した曲だと感じてもらえたのであれば嬉しいです。

ーーさきほど「どんな要素が入ってきても、J-POPには崩れない強さみたいなものがある」とおっしゃいましたが、その限界突破を果たした曲だと思うんです。

辻村:確かに、日本のマーケットの大きなアーティストで「ここまでやっていいの?」みたいに思ったことはあるんですけど、今回はそういうことすら考えませんでした。躊躇することや立ち止まって確認することがまったくなくて、やりたいことをいけるところまで最大限やれた。それは平手さんの力あってのことで、彼女は頭と体が分離していないというか、サウンドやメロディ、歌詞といったあらゆる要素を動きながら吸収して表現していくようなイメージ。だから歌のニュアンスも独特だしダンスも素晴らしい。僕も自分は踊れないんですけど、ダンスは好きだから、そのあたりの感覚も近いところでやれたような気がします。

ーーそして「head-bang」へと繋がる。MVはダンス好きであることも伝わってくるコンテンポラリーダンスと、そのJ-POPならではの言葉の力、海外のエレクトロやファンクの要素を強く感じるミニマルなサウンド、HaKU時代も重なる躍動感のあるバンドサウンドと演奏シーンが見事に融合した作品。今回はなぜそこに至ったのを知りたくてインタビューしました。最後に、ここまでの話を踏まえて、辻村さんのこれからについて聞きたいのですが、そのJ-POPの良さを世界に発信していくための新たなビジョンなどはあるのでしょうか。

辻村:楽曲提供でもソロの作品でも、発信するツールはいろいろあって、そのなかでこうしたいああしたいっていうのはチームで考えること。僕は目の前のことをひたすらやり続けるだけですね。すべてはタイミングだと思うんです。それが先ほども言ったような、アニメなのかRina Sawayamaさんのようなアーティストなのか、いつどこでどういうことがきっかけになるかはわからないなかで、あくまで僕の肌感覚ですけど、ここ1年2年で何か起こるような気がします。海外のトラックメイカーと話していても、今までは日本ならではの音となると三味線とか、ビジュアルだと忍者とか、それはそうなんですけどそれだけじゃないっていうところから、J-POPのコード進行やメロディの乗せ方が新しいって、そういう話をしてもらえることも確実に増えてきていて、評価が高まってきている感触もありますし。

ーーJ-POPがビルボードチャートの上位に食い込む。そういうこともあり得ると思いますか?

辻村:感覚的な話ですけどあると思いますし、そうなることを信じてやらないと曲を提供している方々にも失礼だと思うんです。だから折れることなく目の前のことをやっていきたいと思っています。

■リリース情報
「head-bang」
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■辻村有記 関連リンク
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