Rin音×tofubeats『Once in a Blue Moon』インタビュー 異なる音楽性の2人が語る、憧れと影響

Rin音とtofubeatsが語る憧れと影響

 HuluとTikTokがタッグを組み、若手アーティストが“自分の憧れのアーティスト”を指名して共演する企画番組『Once in a Blue Moon』の最新回が7月20日より配信される。

 第3回となる今回は、代表曲のひとつ「snow jam」がTikTokで大ヒットしたことも記憶に新しいラッパーのRin音がtofubeatsを指名。対談やライブパフォーマンスを通して、世代を超えてそれぞれの音楽への思いを伝えてくれた。

リアルサウンドでは、収録日当日に2人へインタビュー。今回の企画を通して感じたお互いの魅力や、曲づくりに対する思いなどについて話してもらった。(杉山 仁)

Rin音にとってtofubeatsは「音楽だけじゃなくて、人間性も尊敬できる方」

ーー今回『Once in a Blue Moon』に出演して、お互いのパフォーマンスを観たり、対談をしてみての率直な感想はどうですか?

Rin音:tofubeatsさんは積まれているキャリアはもちろんですけど、ライブの見せ方も含めてすごくかっこよかったです。パフォーマンスでの曲と曲との繋ぎもtofubeatsさんならではの雰囲気で「そういう聞かせ方があるんだ!」と思いながら観させてもらっていました。

ーー今回Rin音さんがtofubeatsさんを指名した理由はどんなものだったんでしょう?

Rin音:僕はMCバトルをはじめるようになってヒップホップを聴きはじめたんですけど、こういう性格ですし、ラッパーらしいバックボーンも持っていなかったので、「自分は一体どんな曲を作ればいいんだろう」と考えていた時期があったんです。ちょうどそのときに、自分の音楽をどういうふうに発展させるべきかと色々な音楽を聴く中で、tofubeatsさんの音楽に出会いました。僕は中学生の頃からボーカロイドなども聴いていたので、オートチューンを使ったtofubeatsさん自身のボーカルにもすぐに親しみが持てましたし、その後友達とドライブしながら曲をかけたりするようにもなっていったので、僕にとってはずっと好きで尊敬するアーティストのひとりです。それで今回、お声がけさせていただきました。

ーーRin音さんが自分自身の音楽性を模索する中で影響を受けた人だったんですね。

Rin音:そうですね。今日、実際にお話をさせてもらっていても、カメラが回っているときはもちろん、回っていないときも気さくに色々と話しかけていただいて。「音楽だけじゃなくて、人間性も尊敬できる方」だと思いました。その中で、tofubeatsさん自身の将来に向けての考えを聞くこともできて、これから自分が活動をしていく中でもひとつの指標、または参考になるようなお話が聞けてすごく嬉しかったです。

ーーtofubeatsさんは出演してみてどうでした?

tofubeats:自分がこういう番組に呼ばれること自体に隔世の感がありました(笑)。いつの間にか10歳ぐらい年下の子に名前を挙げてもらえるようになったんだな、と。

ーーtofubeatsさんはメジャーデビューしたばかりの頃、憧れだった森高千里さんや藤井隆さんと楽曲を共作していましたが、それと同じような話なのかもしれませんね。

tofubeats:そうですね。もちろん、自分がそんな方々と一緒の存在だとは流石に思えないですけど。でも、僕が当時「一緒にやってもらえてよかったなぁ」と感じていたことが、立場が変わって今起きていると考えると、自分も長くやってきたんだな、と思います。あとは、大なり小なり自分が誰かに影響を与えられたのかもしれないな、という意味で「責任を感じるな」ともちょっと思いました。適当なことばっかりやってちゃだめだなと(笑)。

ーー(笑)。お互いに、アーティストとして感じている魅力があれば教えてください。

Rin音: tofubeatsさんの曲って、楽曲自体はもちろんのこと、歌詞の比喩もすごいですよね。たとえば今回、僕は(ライブパフォーマンスのパートで)「『RIVER』をやってほしいです!」とリクエストしたんですけど、あの曲の〈ふたりの愛は流れる川のようだ とぎれることないけどつかめない〉という歌詞が、僕はすごく好きです。tofubeatsさんの歌詞はどれも、それ自体を体験していなかったとしても自分の実体験に紐づけて共感できるような雰囲気や、言いたいことが伝わってくる感覚があって。本当に思っていることを書いてらっしゃるからこそ赤裸々で、素をさらけ出しているところがいいなと思います。あと、「RIVER」は2回目のフックから管楽器が鳴って、急に世界観が変化しますよね。そのうえでフロウも少しずつ変化していって、同じ言葉を言っていても、それが違って聞こえるというか。そういう意味で、「比喩が上手い」というところから気になって、後半に「こんなに世界観が開けるんだ!」と驚いた楽曲でした。他にも、KREVAさんとの「Too Many Girls feat. KREVA」や「RUN」、「水星 feat.オノマトペ大臣」「LONELY NIGHTS」など好きな曲は色々あります。

ーー一方で、tofubeatsさんが思うRin音さんの魅力というと?

tofubeats:まずは、今日のライブ収録を見ていても、等身大ですごいなと思いました。あと、「snow jam」はラッパーが作った曲とは思えないというか。他の曲はもっとリズムから曲を考えるラッパーっぽさがメロディからうかがえたりすると思うんですけど、中にはそれが全然ない曲もあるのがすごく不思議だな、と思います。たとえば自分の場合は、歌っぽい曲のときも「ヒップホップが好きだ」という自分のルーツがすごく大事だったりするんで、「RIVER」みたいな曲のときも、そのルーツを意識しているんです。でも、Rin音さんは、MCバトルをやっている一方でメロディを大切にしたスタイルでヒット曲を出しているし、J-POPに振り切れているときは100%振り切っているように感じるというか、「その境目を最初から意識していないのかな?」と。それでいい曲が書けるんだから、不思議ですよね。「帰属意識みたいなものがないのかな?」とも考えたんですけど、一方で今も地元に住んでいるわけですし。そんなふうに「分からない」部分がすごくいいなと思います。僕らの世代よりもさらに柔軟なのかな、と。

ーーなるほど。それぞれに音楽性は違うものの、パーソナルな雰囲気を大切にしつつ、日常の機微を想像させてくれるような歌詞は2人に共通する魅力なのかな、とも感じます。

Rin音:tofubeatsさんの曲のように歌詞で素を出して、思ったことを素直に歌う、またはある種のリアルを追求することは、僕がアーティスト活動をはじめる頃に「こうなりたい!」と思っていたことでした。今回、番組内の対談でもtofubeatsさんがそのことについて話してくれたので、「自分は間違っていなかったのかな」という、ひとつの答え合わせをもらったような感覚にもなりました。

ーーちなみに、tofubeatsさんがRin音さんぐらいの年齢だった頃というと、インディーズでアルバム『lost decade』を出した後、メジャーデビューをしたぐらいの時期ですよね。

tofubeats:そうですね。思い返すと、一番わけの分からない時期だったと思います(笑)。自分の場合、生計を立てられるかどうかは抜きにして、最初からずっと「音楽はやり続けよう」と思っていたし、学生時代にはそのために一度は(音楽ではない)仕事を探そうとも思っていたんですけど、そこからメジャーデビューが決まって、活動が広がっていった時期ですね。でも、当時はまだ音楽でずっと食べていけるとは想像していなかったかもしれないです。

ーー当時と今とで、曲作りで何か変化を感じる部分はありますか?

tofubeats:自分の場合は、ずっと音楽を作り続けることによって、自分の中で変わることが分かると同時に、変えたくないものも分かる、という感覚なんですよ。「音楽を作る」ということは決めていて、それを続けることで、たとえば10年間のうちに、「ああ、自分はこういうことを大切に思っているんだな」と、だんだん分かってくるというか。なので、曲を作ることで、自分がどんな人間なのか分かる感覚が好きなんだと思います。ラップをするときにも「自分はずっと、最初に聴いたときに何を言ってるのか伝わらないものはあまり好きじゃないんだな」とか。色々なことが分かってくるし、一方で将来どうなっていきたいか、どうしていきたいかということについては都度変わっていって、前向きなときもあれば、悲観的なときもあるという。そういうことが、1~2年経った頃に分かってくる感覚です。

Rin音:僕の場合、曲作りではそのときに自分が感じたことや、言いたいことを言う、ということは大事にしています。まずはその時々の感情や直感を大事にして曲を作って、出来たものを聞いてダメだったらやり直せばいいと思っていて。なので、嬉しかったことも悲しかったことも、ロマンチックなものでも日常的なことでも曲にしますし、それをそのままやっている感覚です。

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