Rin音×tofubeats『Once in a Blue Moon』インタビュー　異なる音楽性の2人が語る、憧れと影響

文・取材＝杉山仁、写真＝林直幸

尺が短いTikTokはインターネットとタイム感が違う

ーー『Once in a Blue Moon』はHuluとTikTokのタッグによる音楽コンテンツですが、お2人は普段、TikTokをどんなふうに使っているんでしょう？

Rin音：TikTokは時間がある時に見たりしていて、オススメで流れてくるものをよくチェックしています。特に決まったジャンルのものを見るわけではなくて、かわいい子が踊っていたり、服の説明をしていたり、映画の紹介なんかを見たりしていて。おそらく僕らの世代はSNSからの影響だらけだと思います。承認欲求が肥大化しているのもそうですけど、そもそもの価値観自体も影響を受けているかもしれない。でも、見栄を張りすぎるのは疲れてしまうと思うので、僕は等身大でいたいと思っています。料理を作って見栄えがあまりよくなかったとしても、自分が頑張って作ったものなら、それを載せればいいと思うし。適度な付き合い方をしていきたいですね。

tofubeats：僕の場合は、知らなすぎるのもやばいと思って一応携帯には入れていて、時々ヒット曲を色々と聴いているんですけど、自分の曲で踊ってくれている人がいるのも面白いですし、TikTokって尺が短くて、僕ら世代が慣れ親しんできたインターネットとはタイム感が全然違うのもすごく面白いなと思います。まるでスマホ時代の特徴を最大限まで先鋭化させたものというか。自分の世代のものとして共感するわけではないですけど、そこから新しいものが出てきていることを「すごいな」と見ているような感覚です。覚えているんですけど、僕らも活動をはじめた10～20代の頃、先輩に「お前らのやってることはよく分からないけど、お前らの方が若者に受けてるから正しい」と言われていたんですよね。

Rin音×tofubeats『Once in a Blue Moon』インタビュー　異なる音楽性の2人が語る、憧れと影響の画像1-1

Rin音×tofubeats『Once in a Blue Moon』インタビュー　異なる音楽性の2人が語る、憧れと影響の画像1-2

ーーtofubeatsさんを含めてあの時代にインターネットを通して世に出てきたトラックメイカーたちは、あらゆるジャンルを横断するような、ボーダーレスな過激さがあった印象です。

tofubeats：僕らの場合は、ちょっとテロリスト的な、悪趣味な感じもありましたよね（笑）。でも、Rin音さんや今の人たちって、そういう尖り方とはまた違う先鋭性を持っていると思うんです。そして、僕らとはまた違った方法で、僕らが受容できないぐらい別の方向に尖っていけるからめちゃくちゃいいなとも思います。そこで流行っているムードや、らしさが確実にあって、それに接している人たちが「自分はこういう世代だ」と帰属意識を感じられるものになっているというか。TikTokを通して「今はこういう遊びをみんながやっているんだな」と感じられたことは、感動した出来事でもありました。

ーー若い世代の人たちが、自分たちの新しい文化を作ってっているんだな、と。

tofubeats：そうですね。今って、流れがまったく何もないところから一夜にしてヒットしたりするじゃないですか。あれって本当にすごいと思うし、これまでになかったことだと思います。しかもそれが、一組だけじゃなく何組もいますよね。なので、これからさらにTikTok軍団が世に出てくると思うんですよ。そして僕自身も、その世代の人たちとも一緒に何かできるというのは、多少なりとも若い人たちのために何かできるのかな、という意味ですごく嬉しいです。最初に話をいただいたときは、マネージャーと一緒にめちゃくちゃビックリしたんですよ。まさか僕に影響を受けてくれているとは考えていなかったので。今は「シメシメ、言質取ったで～」とも思っています（笑）。

ーー（笑）。楽曲などでもコラボレーションが実現したら、ぜひ聴いてみたいです。

Rin音：それはもう、もしtofubeatsさんがコラボをしてくれるなら、僕はいつでも準備はできています。僕は自分のリリックだけを書かせてもらえれば。後はもうtofubeatsさんのやりたい方向性のものにしてもらう、それが僕のやってみたいことです（笑）。