プロダンスリーグ『D.LEAGUE』をさらに楽しむためのポイントは? 激闘となったチャンピオンシップを振り返る
去る7月1日、日本発のプロダンスリーグ『第一生命 D.LEAGUE 20-21』のチャンピオンシップが有明・東京ガーデンシアターにて開催。全12ラウンドのレギュラーシーズンを勝ち抜いた上位4チームによる熾烈を極めた頂上決戦の末、avex ROYALBRATSが記念すべき初代王者の座に輝いた。
半年間をかけ、2週間に一本のペースで勝負作品を作るという(ダンサーの身からすると恐ろしく過酷な)戦いを経てきたDリーガーたちを讃えながら、批評ではなく「ここを踏まえると、さらに見るのが楽しくなる!」というポイントを、踊りの視点から取り上げていこうと思う。
4チームが真っ向勝負で挑んだスタイルウォーズ
前述の通りレギュラーシーズンではラウンド数が12回にも渡っていたため、その都度同じようなコンセプトと手法では高得点が得られない。そのために各チームは様々な試行とチャレンジを繰り返し、ラウンドごとに角度を変えながらサプライズ要素を加えてきた。しかしチャンピオンシップはトーナメント制の崖っぷち対決。全チームが余すことなく自分たちのレペゼンしているスタイルをぶつけた真っ向勝負となった。自分たちの持ち味を全開にして伸び伸び踊る姿に「こんな彼らが見たかった!」と喜んだファンも多かったはずだ。
セミファイナルの初戦はSEGA SAMMY LUX vs avex ROYALBRATS。SEGA SAMMY LUXの得意とするニュージャックスウィングは1980年代末のアメリカ東海岸が発祥であるのに対し、avex ROYALBRATSのスタイルは2010年以降に隆盛した西海岸のSwagヒップホップ。発祥の時代も土地も違うのだが、どちらも同じヒップホップの名の下に生まれたダンスで、とりわけパーティと直結しているグルーヴが特徴的だ。ニュージャックスウィングは圧倒的な運動量とリズム感が要求され、同じルーティーンでも個性がはみ出るのが面白いし、Swagスタイルの代名詞でもあるドギーやジャーク、近年のSwagg BounceeやKangsta Wokなどの動きは一見するとユルくみえるところに気持ちよさの肝がある(あくまでもチーム要素の一つ。SEGA SAMMY LUXはディレクターのBOBBYが生み出したJ.S.Bベーシックを元にしている)。
審査員の坂見誠二が「LA対ニューヨークのような対決だったが、avex ROYAL BRATSがコレオグラフの作品性で上回った」と評価したのも納得だし、南流石が「SEGA SAMMY LUXの踊りは“生きてるなぁ”と感じた」とコメントしたのにも頷ける。甲乙の付け難い作品を裁かないといけない審査は、その胸中を思うだけでも計り知れない。結果は6対3でavex ROYALBRATSが勝利となった。
セミファイナルの第2戦はKOSÉ 8ROCKS vs FULLCAST RAISERZ。B-BOYINGとクランプ。それぞれカルチャーの背景にバトル要素が根ざしているジャンル同士のぶつかり合いは、「鬱屈としたエネルギーを、喧嘩ではなく踊りに昇華して解放させた」とでも言えるような熱い対決に。
先攻となるKOSÉ 8ROCKSは、メンバーのTaichiが頸椎椎間板ヘルニアのためチームを長期離脱するというトラブルに見舞われながらも、崩れぬ結束力でアクロバティックな展開のオンパレードに。ソロの演出も踏まえながらお祭り感あふれる作品となった。対するFULLCAST RAISERZもアクロバットな構成を交えながら、極めてストレートなクランプで挑む。最後は「神に捧げるKING OF BUCK!!」のシャウトとともにアームスイングへと想いを託した。両者ともに爆発力にみなぎったパフォーマンスを見せたが、審査は6対3でFULLCAST RAISERZに軍配が上がった。
審査員のマシーン原田による「多少テンションの流れに揺らぎが見えたKOSÉ 8ROCKSに対し、FULLCAST RAISERZはエナジーとパッションが切れなかった」という、自身がB-BOYであるからこそ踊り手のリアルを感じ取った愛あるジャッジコメントが印象的だった。また、この両者はマシーン原田が主宰する日本最大級のストリートダンスコンテスト『JAPAN DANCE DELIGHT』での優勝チームが(全メンバーではないが)前身ともなっている。過去の映像を掘り返して見ると、それぞれのダンスの進化や歴史が感じられるだろう。