AAAMYYY、未曾有の時代が促した価値観のアップデート 音楽の根底にある死生観や宗教観を聞く

AAAMYYYが体感する価値観の変化

 Tempalayのメンバーとしても活躍し、TENDREやRyohuなどのサポート、フィーチャリングや楽曲提供など多方面で活躍するAAAMYYY。その一方で、その表現の軸はやはりソロアーティストとしての作品にある。シンセサイザー奏者としても、トラックメイカーとしても高い評価も集めるAAAMYYYだが、いよいよシンガーソングライターとして、歌と言葉とメロディの領域で“覚醒”を果たそうとしている感がある。

 8月18日にリリースされる2年半ぶりのニューアルバム『Annihilation』の制作途中の音源をいち早く聴かせてもらっての第一印象はそういうものだった。

 昨年に配信された「HOME」や「Leeloo」や「Utopia」、そして6月25日に先行配信された「AFTER LIFE」など全10曲を収録。2019年にリリースした初のソロアルバム『BODY』を経て、精力的にライブやフェスに出演しバンドサウンドの新たな音楽性を開拓している最中で2020年のコロナ禍に突入し、社会の大きな変化に直面する中で生まれた思考や価値観を色濃く反映する作品となっている。今回のAAAMYYYへのインタビューでは、アルバムの詳しい内容というよりも、そこに至るまでどういうことを考え、感じながら過ごしてきたのかを、改めて紐解いてもらった。(柴那典)【記事の最後に読者プレゼントも】

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ソロ活動は自分が思っていることを伝える表現ツール

AAAMYYY

――Tempalayとしての活動も、様々なアーティストのサポートもありますが、AAAMYYYさんとしてはソロプロジェクトの位置づけをどのように考えていますか?

AAAMYYY:私はもともとソロから始めているので、バンドも個人の集まりという認識で。バンドに入る前も、所属するようになってからも、ソロは自分が思っていることを伝えるためのコミュニケーション方法でもあり、表現ツールでもある感じです。

――そういうソロとしての表現が固まってきたのはいつ頃のことでしょうか。

AAAMYYY:その前から携帯のアプリで作ったトラックで自分の表現したい世界を表現していたとは思うんですけれど、それこそ、RyohuくんやTENDREと出会ってサポートを始めた頃から、シンセサイザーや作曲だけじゃなくて、歌うことに自信を持っていいと気付きはじめた感じですね。

――AAAMYYYさんのソロは、トラックメイカーとしてだけではなく、自分が歌うべき言葉を書いてそれを歌うというシンガーソングライターとしての表現であることも大きなポイントだと思います。そして、新作を聴くと、今の時代や社会に真っ向から向き合って感じていることも大きく反映されていると思うんですが、そのあたりはどうですか?

AAAMYYY:歌う内容は、やっぱりその時その時で自分が抱いている違和感や社会への不満、ひとりの力ではどうにもならない無力感を曲に落とし込んでいるので。時代性や社会性は、すごく反映されていると思います。それがより強くなったというのは、おそらく、自分自身がハッキリしてきたからなのかもしれない。音楽に対して正直でありたいというのが、最近思うことなんです。たとえば、以前は明るいトラックに乗せて暗いことを歌ったりするような面白さを追求していて。今もそれはあるんですけれど、より「歌詞が浸透するようなメロディってなんだろう?」とか、逆に「このメロディに対してどういう歌詞を乗せたらすごくパンチがあるんだろう?」とか、考えるようになった。聴いてもらった人の心に響く要素に集中していたので、それが強くなってきたんだと思います。

――なるほど。その変化は『BODY』以降ですか?

AAAMYYY:そうですね。『BODY』は、どちらかというとコンセプチュアルに作ったアルバムで。最初にSF的な設定を作って、そこから派生させていった曲を収録していったアルバムなんですけど、今作は、どちらかというと、コンセプトを決めずに、自分が思い描いている理想郷や、苦しいこととかを、より正直に落とし込んでいます。トラックに関しては、それこそTENDREやTempalayの影響もあって、より捻ったものを入れようかなと思ったんですけど、難しく考えるのはやめようと思って、自分の好きなシンセサイザーやビートを入れて。あと、今までは自分ひとりでプロダクションとして完成させることに価値を感じていたんですけど、仲間と作るようになりました。客演してくれている荘子itくんとか、TENDREとか、演奏してくれているメンバーとのセッション的な面白さが、自分にとってはナチュラルになっていたので、そういう風にしようと思いました。

――バンドメンバーと作っていこうっていうのは、2019年の頃から考えていたんですか?

AAAMYYY:そうですね。2019年に『BODY』を出した後にツアーを回ることができたんですけど、その時のやり方が、バンドメンバーに好きなように演奏してもらう感じだったんです。ビートを変えてもいいし、勝手にリードギターを弾いてもいい。好きにやってくださいって。言ってしまえば丸投げですけど、そうした結果、すごくいいグルーヴが生まれた。でも、それはたぶん、日常的な関係なしにはできなくて。一緒にご飯を食べに行ったりとか、一緒に遊びに行ったりとか、たまたま会う現場で楽しかったり、そういうポジティブなグルーヴがあったので。このメンバーでレコーディングとかできたら楽しそうだなっていうことは、2019年ぐらいから思っていて。

――バンドでやりたいという方法論よりも、仲間関係が先にあった。

AAAMYYY:そうです。個々が面白くて、それがバンドという集合体になって、ここにこの人が入ったらめっちゃ盛り上がるとか、そういうのがすごく面白くなっていって。それは演奏だけでなく、会話とかもそうですし、そういう要素が絡み合って初めてバンドっていうものになれるので、今おっしゃってくれたように、バンドでというよりは、人ありきという感じですね。

――そういう出会いによって、AAAMYYYさんの音楽の作り方が変わったという実感はありましたか?

AAAMYYY:そうですね。私は常に無茶ぶりをしてしまうんですけど、それに応えてくれるんです。たとえば、踊Foot Worksのキイチ(Tondenhey)がギターを弾いているんですけど、キイチはレコーディングの日までデモを聴かせずに来てもらったほうが、すごいものを急にパーンって思いついたりする。そういうことが、何度かやるうちにわかったりして。そういうグルーヴを入れる余白のある作曲をするようになったと思います。

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