BUMP OF CHICKEN、連続テレビ小説『おかえりモネ』と主題歌「なないろ」の深い相性を読む
『おかえりモネ』の後には、『らじるラボ』(NHKラジオ第1)にて「なないろ」のフル音源初オンエアとともに、藤原、増川弘明、升秀夫へのインタビューが流れた。そこで藤原がまず触れたのは、「なないろ」の制作背景。昨年の夏頃、藤原は楽曲の制作に入る前に、ドラマの制作スタッフに作品作りにかける思いを聞き、その熱量に強く心を打たれ、一緒にものを作りたいとオファーを快諾したのだという。そこにあるのはこれまでのアニメや映画主題歌と同じ、同じチームの一員に加わるという責任感や熱量。筆者も取材会見などを通して、朝ドラの制作統括の話は何度か聞いたことがあるが、通常のドラマと違って、長期間の撮影となる朝ドラはその分思いも人一倍大きく、熱いものになっていくのだと感じている。スタッフの熱量に呼応したからこそ生まれた藤原の歌詞、サウンド、歌声なのだろう。
また、「なないろ」のフル音源を聴いて印象的だったのは、間奏で前面に出てくるストリングスやトランペット、フルートの音色だ。演奏しているのは、弦一徹ストリングス。2007年リリースの「花の名」で出会い、今年2月放送の『SONGS』(NHK総合)では初めて「魔法の料理 ~君から君へ~」にて共演している。「なないろ」について、藤原はギター1本でデモテープを作る段階で、間奏にはトランペットの音が入っているイメージが頭に浮かんでいたという。その後、弦一徹ストリングスとのレコーディングを重ね、藤原がイメージしていた以上のサウンドが生まれていった。楽曲全体に流れる小気味好い音色の正体は、弦一徹ストリングスである。
さらに「なないろ」を紐解く上で、聞き逃せないエピソードもあった。「なないろ」は今年2月11日のバンド結成25周年記念日に発表された楽曲「Flare」と同時期に制作されており、大本は似たところから出てきた言葉たちであること。「Flare」は重く、「なないろ」は柔らかにそのメッセージを伝えている。『SONGS』の放送の中で、藤原は昨年4月の緊急事態宣言下に当時感じていたことをスマホのメモに打ち込み、そこで思い浮かんだのがライブで出会ってきたリスナーの顔だったと話している。「なないろ」に込められているもう一つのメッセージは、「花の名」や「Flare」でも描かれている「会いたい」という愛にも似た人間の心模様だ。
■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter(https://twitter.com/AKI_W_)
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK