これからのKen Yokoyamaは“音楽”で語る Ken Bandが手に入れたバンド活動の充実

Ken Yokoyama、今のバンドの充実感

 Ken Yokoyamaが、7枚目となるフルアルバム『4Wheels 9Lives』を5月26日にリリースする。Ken Yokoyamaは、昨年9月に1stミニアルバム『Bored? Yeah, Me Too』をリリース。本作はドラムEKKUNの加入後、初のフルアルバムとなる。2018年12月に発表された現体制から、『New Age Tour』、横山健の体調不良、コロナ過を経て生まれた今作。その期間の中で得ることができたというバンドの充実感について4人が語った。(編集部)

全員がフルで出して、ちゃんと4ピースになってる

一一いいアルバムができましたね。すごくバンド感というものが伝わる一枚です。

Jun Gray(以下、Jun):うん。前回の『Bored? Yeah, Me Too』も含めてこれで完結した感じ。それはメンバーみんなが思ってるだろうと思う。この2つで出し切ったっていうか。

Minami:でも、そのバンド感っていうのは自分でもわかりますね。EKKUNが入って今の4人になって、顔がひとりずつ見える作品になってると思う。

EKKUN:そうですね。手応えはもちろんあって、早く聴かせたくてしょうがない感じです。

Ken Yokoyama(以下、Ken):EKKUNが入って、ちょこちょこはリリースしてたけど、このフルアルバムでやっとこう、Junちゃんが言うように出し切ったというか。これは聴く人よりも僕ら4人にとって大切なことかもしれないけど、しっかり力のあるメンバーが揃って、やっとアルバムを出せた。やっとできたなって感じですね。

一一前任ドラムのMatchanが抜ける要因になったのが「ひとりひとりが1/4を担ってくれ」という話でした。その理想が、今は実感としてある感じ?

Ken:僕はすごくある。実際やってることはきっちり1/4ずつじゃないかもしれないけど、物理的な問題ではなくて、気持ちの面で。全員がフルで出して、ちゃんと4ピースになってる。それは実感として、えー、政治家みたいに言うと、ひしひしと、紛うことなきこの感覚が、えー……。

一一もういいです(笑)。『Board?』の時に「みんなで歌える、明るい曲が多い」って話をしていて、アルバムもその延長かと思いきや、ちょっとニュアンスは違いますよね。

Ken:ね。もともと『Board?』はバラエティに富んだものにして、『4Wheels 9Lives』のほうは、僕はこの作品をちょっと硬派だなと思ってるんだけど、そういうふうに分けようって意識は最初なかったの。だからほんと結果論であって、作ってる時はここまで色の差が出るとは誰も予想してなかったよね。

EKKUN:そうですよね。

一一この中で一番古い曲は「Helpless Romantic」。2018年からライブでやってますよね。

Ken:そうだね。2018年の3月くらいにはもうやってた気がするな。

一一歌詞には少し驚きました。「みんなで歌ってくれ!」ってステージから呼びかけていたのに、いざ見たらごく個人的な別れの歌で。

Ken:ははははは! 

Jun:そうだね。「Singing!」とか言ってたけど(笑)。言われてみるとそうだよね(笑)。

Ken:いや、ほら、歌詞の、タイトルの置き方なんかはキャッチーだから、そこを一緒に歌ってくれたらいいなぁっていうだけで(笑)。別に俺のことをね、何千人のお客さんに全部わかって欲しいとか、そういうのは、えー、わたしの本意ではなかったと……(一同爆笑)。

一一ふふふ。ごく個人的な歌だというのは自覚してます?

Ken:うん、確かに。この歌詞書いた時に「これはちょっと新しい自分が出てきた」と思って。今までは対象がすごくはっきりしてて、読めば何のこと歌ってるのかわかる歌詞を書いてきたんだけど、「Helpless Romantic」以降は「一体これは何のことを歌ってるんだろう?」ってものが意外と多いと思うのね。ちょっと散文的というか。きっかけはまさにこの曲だったし、これが今の自分のムードに合ってたんだろうなと思う。

一一〈本当のことはオレにしかわからない〉って対訳もありますけど、そういう個人の想いって、4人で共有して仕上げていくのが難しくないですか?

Minami:んー? そうでもないかなぁ。

Jun:最初から歌詞があるわけでもないから。もちろんメロディは持ってくるけど、それを4人で仕上げていって、後で歌詞を知ったり内容を教えてもらったりすることが多いから。最初の段階で歌詞の内容決まってないもんね。

Ken:逆に言うとさ、歌詞が乗って「げっ! 俺この曲好きだったのにこんな歌詞乗っちゃったよ」っていうことある?

Jun:あるあるある。

Ken:あるんだ! ははははは!

Jun:「うわ、えっぐぅ!」と思ったり(笑)。「うーん、まぁでもこれがこの人の気分なんでしょう」みたいな。やっぱりKenとは人が違うから同じ考えではないけど、何を歌っているのかはもちろん理解して、ライブやる時もちゃんとわかっておきたいと思うから。「へー、こういう気分なんだねこの人は。まぁわからなくもねぇよ」みたいな、そういうのはある。

一一あとMinamiさんは作詞にも関わるじゃないですか。

Minami:英語にするだけですけどね。

Ken:いや、「英語にするだけ」って本人は言うけど、実際はものすごくキャッチボールをするから。その中でMinamiちゃんの世界観は絶対入ってきてると俺は思ってる。

一一言い回しを変えたりすることも?

Minami:ありますね。メロディに当てはめていくうえで、「この量の日本語を訳すと絶対に収まりきらない」っていうこともあるし。あとは歌だから「最後はこの単語じゃなくてこの音のほうが歌いやすい、伸ばしやすいよね」とか。そういうやりとりをお互いにするんですけど、その中でちょっと日本語変えてもらったりすることもありますね。

Ken:だいたい全曲でそれはあるかな。「ここの英単語が変わったら日本語の意味も変わっちゃう」「でもこれなら文章は通じる、俺の気分は前の文章と変わってない。じゃあそっちにしよう」とか。

一一そういうやりとりがないと、このバンド感って出てこないと思うんですね。もっとパーソナルな作品として聴こえると思う。

Ken:うん。歌詞に限らず、やっぱり週何回も会っていろんなものを共有してるから。お互い生活の中で日々どんなことがあったか、いろんなものをシェアしてるから。だからこそ俺も思いきり書けるんだろうな。俺がどれだけ個人的なことを書いてもこの人たちは嫌がらない、って。

Minami:ファーストの曲もわりとパーソナルな方向じゃないですか。あの作曲に僕らは全然携わってないけど、さすがにこうやって何年も一緒に演奏してると、やっぱり共有してきた感覚っていうのはあって。だから今回の歌詞も意外と驚きではなくて。Kenさんの中にこういう部分があるのもわかってたことだし、そんなに「げっ!」みたいな感覚もなかった。

Ken:そんなに、っていうことは、多少はあった?

Minami:……そりゃね? 〈ナイフが血まみれ〉とかねぇ、ちょっとヤクザ映画見すぎだろうって思ったり(笑)。でも、もともとパーソナルなところから始まってるバンドだと思ってるから。

一一改めてパーソナルな自分をアルバムに落とし込みたかった、言えることは言っておきたいし残しておきたかった、という感覚もありますか。

Ken:全曲がそうではないけど、そういう曲もある。それこそ最後の「While I’m Still Around」とか。あと他の曲でも、今の気分を言葉にしておきたい、歌詞にしておきたいってことは考えたかな。それはどのアルバムでも考えてるんだけど。ただ今回は……なんだろうね、コロナでずっと家にいたこともあるのかな? 世の中が閉塞的で、閉塞的な世の中のことを歌うんじゃなくて、部屋に籠もってひとり思うことを書いたというか。自分から見える風景、あとはちょっと過去を振り返って自分の体験したこととか。

一一ようやく、ちゃんと書けたと思います?

Ken:あー、満を持して書けたのは「While I’m Still Around」かな。これはもう自分の半生を振り返るような歌で、極端に言っちゃうと「My Way」みたいな曲を書きたかったのね。これは20代30代で書こうったって説得力がない。嫌でしょう? そのへんのガキにこんなこと言われたら(笑)。

一一でも、今ならこういうことを考えざるを得なかった。

Ken:そう。ライブができなくなって人との関わりもなくなって、ふと思ったこと。ずーっと表に出てライブしてたら「俺の音楽がみんなの生活に入り込んでる。もしかしたら誰かを救ってるかもしれない!」って思ったままだったかもしれないね。世界中の人が明日どうしていいのかわかんない状況の中で、それでも俺は音楽を作ったり、文章を考えたり、いろんなことができてて。つくづく自分のやることに救われてるなって、去年のどっかでそんなこと思ってたな。

一一近年のKenさんは発信の場所を減らしていますよね。そのぶん歌詞の言葉がどんどん濃く、硬派になっていったところもあるのかなと。

Ken:あ、それは間違いなくあると思う。SNSだったりコラムだったり、あといろんな文章をネットで発信してたけど。書くことって、書いて初めて思考が固まる反面、それで気が済んじゃうところもあって。「あれ、あそこでもう言っちゃったしなぁ」みたいな。別にそのために発信を控えてるわけじゃないけど、でもそこはずいぶん変わったかな。その結果、歌詞っていう一番大事なところに思いが反映されるんだったら、あぁ俺間違ってなかったなと思う。

一一えぇ。音楽でこれだけ赤裸々に今を綴ってくれるのは、ファンとしても嬉しいです。

Ken:だから皆さま、SNSは「もんげー」だけでも許してくれるはず(笑)。

一一発信しなかったのか、できなかったのかわからないですけど。言えない時期は苦しかったですか。

Ken:んーー、まぁ苦しかった時期はあったけど、人並みだと思う。苦しくない人はいないと思うのね。それこそロックとかロックンロールが必要な人って、基本的には弱い、感受性の強い人たちだと俺は思ってるから。みんないろいろ困難抱えて苦しいだろうし、俺だって君らと変わんないよって思ってる。いろいろあったし、体調不良になったりもしたけど。まぁ、俺だけ特別苦しかったって言うつもりはない。

一一近年の話ですけど、週刊誌に出た記事に対して一切反応しない、物言うパンクス横山健はどこ行ったんだよ、って思ってたファンはたくさんいるんです。このアルバムの歌詞を読んでようやく腑に落ちる感覚はありますね。

Ken:あぁ、良かった。でもね、その「物言うパンクス」とか「Kenだったらこう言うはずだ」っていうイメージ? それにもけっこうウンザリきてた。なんでも俺言うわけじゃないんだよ? 自白剤打たれてるわけじゃないんだよ? そういう話も耳に入ってきてたけど、意識的に逆張りしてた自分もいたかな。「言いたいんだけど言えない、辛い」っていうんじゃなくて「何でも知りたがるんだったら、俺言わないでおこう」みたいな。そんなねぇ、いろんな情報見てなんか言いたがる人は、ちょっと知りたがりすぎだと思う。それはたぶん音楽じゃなくて横山健に惚れてんだと思うね。

一一……まぁ間違いないんだけど。本人に言われるとムカつきますね(笑)。

Ken:はははは! はっきりありがとうございます(笑)。

一一今は「最終的に語るなら音楽でいい」という意思を感じます。

Ken:うん。Twitterも始まった頃は楽しかったけども、まぁずいぶん喧嘩もしたし嫌な思いもしたし。「ここってもう意見を戦わせる場所じゃないな、俺にとっては」と思って、ずいぶん前から気持ちも離れていって。で、当然のように自分の意見言う場所ってステージに限られていくんだけど、そのライブもなくなると、言う場所もないなぁと思ってて……「あ、ここがあった! アルバムがあった!」って感じ(笑)。

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