塩入冬湖(FINLANDS)×三上丈晴(『ムー』編集長)特別対談 未解決の謎に満ちた“オカルトの魅力”を語り合う

FINLANDS塩入×『ムー』編集長対談

過去に行けたらピラミッド真相が知りたい

ーー『ムー』の4月号では、「時間が存在しない」というテーマで特集をされていましたが、塩入さんが意識する“時間”とは何でしょう?

塩入:時間かぁ……。今を生きている身として現在の時間を意識するのは当たり前ですが、パラレルワールドというものを考えるようになってから、“思い出した時間”とかの存在ってどうなっているんだろうな、と思うんですよね。パラレルワールドは“一つの選択が違えばこうなっていた”という世界だと私は認識していますが、「じゃあ、自分の後ろにある時間はどう存在しているんだろう」と、最近思います。未来よりも過去、今まで流れてきた時間はどういう存在の仕方をしているのか気になります。どうなんでしょう?

三上:時間は一つで、“流れている”ものです。一般的には過去には行けないですよね。相対性理論的に、早く未来に行くことはできるけど、過去に行くことはできない。ただ、最先端の物理学の話になるけど、行けないということはないらしい。特に時間はそもそも流れていなくて、流れているように見えているのは、単なる錯覚・幻覚である、と。これはかねてからアインシュタインも言っていることですが。

塩入:タイムトラベラーの存在が、インターネットの発達に伴って見えてきたように思います。「〇〇年からきました」みたいな。信じる・信じないは別として、そういうのを見るのは好きですね。

ーーもし、過去か未来、どちらかに行けるとしたら、どちらを選びますか?

塩入:過去です。絶対に解明されないからこそ心がときめくことってあるじゃないですか。でも、そのなかでも例えばピラミッドが作られた本当の理由とか、ヴォイニッチ手稿もただの厨二病の人が書いただけかもしれないし......。そういうのを1つでもいいから知りたいですね。

三上:これに関しては、先ほどの臨死体験にまつわる面白い話があります。臨死体験をすると時空を超えるというものです。有名な彗星探検家の木内鶴彦さんは臨死体験したときに、理系だったのですぐに「これは時空を超えられる」と考えたそうです。「だったら過去に行ってみよう」「宇宙空間に行ってみよう」と言って、いろいろなところに行ったらしい。

塩入:おぉ......!

三上:ところで、彼には人生の中で一番謎だった出来事がありました。木内さんにはお姉さんが2人いて、子供の頃に一緒に土手で遊んでいたとき、突然「危ない!」という声が聞こえたそうです。振り向いたら、上から大きな岩が落ちてきていたので、彼は思わずお姉さんを突き飛ばした。そうして彼らは助かったけど、お姉さんたちには岩が見えていない。木内さんが急に背中を押したって、とても怒るんです。「今、岩が落ちてきて、危ないという声がしたんだよ」「嘘だ。そんなこと言った人、誰もいないじゃない!」という具合に喧嘩になったと言っていました。しかし、本人は明らかに声を聞いたわけです。さて、臨死体験中の木内さんが「あれは一体何だったんだろう」と思った瞬間、気がつけば彼は当時の場面にいたそうです。するとやはり岩が転がってきたから、その時に思わず「危ない!」と叫んだとか。

塩入:そういう話めちゃくちゃ好きです。

三上:「危ない!」って言ったのは、自分だったんですよね。

塩入:ちゃんと時空を超えていますね。

三上:ひょっとしたら、姿も見えていたかもしれない。ドッペルゲンガーってあるじゃないですか。見ると近いうちに死ぬと言われていますが、結局あれは死んだ本人が、過去に現れているからとも言われているんです。

塩入:とても面白いです。「ドッペルゲンガーって、そういうことか!」って、今かなり腑に落ちました。いろいろな題材にもなっているし、結構キャッチーな現象なのかなと思っていたので。

三上:ただ、もう1人の自分がいて、それが自分だとすぐわかる場合は姿・年齢・格好が今の自分に近いことになる。さっきの例で言うと、木内さんが子どもの頃に、大人の木内さんを見ても、それが自分だとは思いませんよね。

塩入:そうですね、かなり歳が違いますもんね。

三上:となると、自分として認識するということは、近い将来に自分が亡くなっていることでもあるわけ。ドッペルゲンガーを見ると、死が近いってそういうことです。

塩入:怖いですね......。

恋愛は未解決事件? 音楽を作る思考回路とオカルト好きな理由の繋がり

ーー鳥肌が立ちました。塩入さんは未解決事件の類も好きだと伺いました。

塩入:やはり調べていくうちに、何かひとつくらい解決できるんじゃないかなと思えてくるところが、オカルトの良さだと思います。未解決事件は本当に起きている事件だから、そんなに面白がっては言えませんが、それでも「何十年も経っているのは、何が原因なのだろう」と、ずっと気になってしまいます。

ーーニューアルバム『FLASH』も、恋愛における相手とのわかり合えなさや、喪失感に慣れないことが歌われていて、そういった恋愛も結局は“未解決事件”なのかなと思いました。

塩入:そうですね、やはり謎が解けないものに対してすごくときめきます。人を好きになること、悲しかった原因や喪失感、気持ちが冷めていく瞬間とか、私はずっと解明できないものだなと思います。判明しないからこそずっと考え続けるし、解け切れないものをずっと探してしまうという感覚はあります。音楽も、作っていてわからないんですよね。正解がないですし、自分がいいなと思って作り上げたものがその日の正解で、翌日はまた違うこともある。そうやって考え続けるという、音楽を作る上での思考回路が、オカルトを好きな理由に繋がっていると思います。

三上:何をもって解決と言うか、でもありますよね。説明されたからといって、理屈ではわかっても納得できないこともある。特に感情的なもの、恋愛に関しては全然違いますよね。例えば殺人事件でも、その殺意はどこから来たのかが重要になる。そこは非常にエモーショナルな部分であり、感情や恋愛のもつれでもあります。結局のところ、本人同士にしかわからないところだから、一見解決したような事件でも、そう思うと全部未解決なのかもしれません。

塩入:未解決事件って、どこかに嘘があると言われていますよね。だから解決に至らないと何かで読んだときに、確かにそうだなと思いました。

三上:全員本当のことを言ったとしても、真実ではないですからね。事実はいくら積み上げても、真実にならないから。証言者が全部正直に話したものを合わせても、だからといってそれが真実とは限らない。

塩入:そうなんですよね。

三上:全然違うところに真実があるかもしれない。見えているものが本当にリアルかと言うと、もしかしたら違うかもしれない。

塩入:見たものを人が話すとき、そこにはやはりその人のフィルターがかかりますよね。嘘をついているつもりはなくても、そうやって真実からズレていくことは、日常生活でも結構あることなのかなと思います。

三上:『FLASH』は、タイトルに少しオカルト性を感じましたし(笑)、非常に聴きやすかったです。もっとアップテンポでめちゃくちゃ激しいロックかと思ったら、それこそヒーリングミュージックのようにずっと聴いていたいような聴き心地でした。ざっくりしたイメージですけど、情景に海を浮かべましたね。瞑想じゃないけど、慌ただしい日常から離れて聴くのもいいかもしれません。

塩入:海というのは初めて言っていただきました。

FINLANDS「Stranger」Music Video

ーー塩入さんご自身は制作中、そういった情景みたいなものイメージされていますか?

塩入:自分の作品を聴いていただいているときは、その時間だけ非現実的な気持ちになってもらえたらいいなと考えているので、それが海とリンクするのかなと思いました。生きている中ですごくドラマチックなこととか、自分の人生を一変させるような出来事って、普通は滅多に起きないと思うんですよ。

ーーさっきの臨死体験みたいな?

塩入:そうです。私はそういう体験をしたことはないですし、何かドラマの主題になるような出来事はあまり遭ったことがない。しかし日々、小さなひらめきがあると思うんですよね。それを重ねていくことで人間は変わっていく。それと同時に、本当に人間は昔から変わっていないとも思うんです。根源は一緒で、行為を繰り返しながら、それが時代によってカスタムされていって、今の文化的ができ上がっていると考えていて。このひらめきと繰り返しこそ『FLASH』のテーマです。

FINLANDS『FLASH』

■リリース情報
FINLANDS 3rd Full Album『FLASH』
2021年3月24日(水)発売 ¥2,500(税抜)
【収録曲】
01.HOW
02.ラヴソング
03.HEAT
04.テレパス
05.Stranger
06.ナイトハイ
07.ランデヴー
08.ひかりのうしろ
09.Silver
10.Balk
11.UNDER SONIC
12.USE
13.まどか(FLASH ver. )

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