秋山黄色、FINLANDSとのツーマンライブで見せた表現力の豊かさ 新曲「夕暮れに映して」も披露

秋山黄色、FINLANDSとのツーマンライブレポ

 秋山黄色が7月25日、『秋山黄色 2MAN LIVE "Encounter"』をTSUTAYA O-nestにて開催した。今回はFINLANDSとの初のツーマンライブ。これについて秋山黄色は、今までのライブの中で一番長尺だと言い、「すでに知ってくれて応援してくれている皆さんにも、新しい物に遭遇したというわくわくする”緊張感”を与えられたらなと思います」とコメントしていた。

 先に登場したFINLANDSは、今回も“真夏でもモッズコート”の姿勢を貫いていた。1曲目の「ウィークエンド」から、塩入冬湖(Vo/Gt)が独特だが美しい高音を響かせる。骨太なサウンドが、時に儚げな歌声をしっかりと支えていた。そのまま「バラード」へ。絞り出すような声でまくしたてながら、塩入はステージから前にせり出し、ギターをかき鳴らしていた。続いて塩入のかわいらしい声から始まったのは「UTOPIA」。ステップを踏むようなベースラインも心地よい。

 塩入は「人間はなぜ良いことがあると悪いことがあるって思うんだろう」とずっと考えていると言い、「別に良いことばかりを望んでもいいんじゃないかな」と奏で始めたのは「PLANET」。ロマンチックなメロディに、穏やかなコーラスが重なる。

 「どんな選択をしても未来には必ず未練はあるものだから、選択に敬意を持って手を振って、また違った未来を作っていければ」と語り、「衛星」へ。1曲の中で様々な声を使い分け、何個もの楽器を鳴らしているようだった。「yellow boost」は、泣き出しそうな震える声で締めくくられていたのが印象的だった。「call end」と最後の「クレーター」では、ギアを一つ上げたかのように、髪を振り乱しながら楽器を奏でていた。音の濁流に飲みこまれたような気分とともに、FINLANDSのステージは幕を閉じた。

 そしていよいよ秋山黄色の登場かと、期待に胸を膨らませる観客たちの多くが、赤いグッズタオルを肩にかけていた(ちなみに秋山黄色のTwitterアカウント名は@ILikeAkairoなので、赤は彼の好きな色のようだ)。客席からは「曲が好きなんだよね」と話す声も聞かれ、リスナーの日常に彼の曲がとけ込んでいることを感じた。

 いざ秋山黄色がステージに登場すると、会場が明らかに高揚し始める。1曲目の「猿上がりシティーポップ」のイントロが鳴ると、歓声と共に観客はすかさず拳を挙げ、Aメロではクラップを鳴らす。「いくぞ!」と短く言うと、それに応えて一斉にサビを口ずさむ。私は今年2月15日にも彼のライブをレポートしたのだが、(参考:秋山黄色は公演中にさえ“進化”するーーユアネスと眩暈SIREN迎えたスリーマンライブレポ)その時よりも、観客たちがさらに曲を聴きこみ、自分自身と重ね合わせた上でこの場所に来ていることが、一瞬でわかった。

 続けて「やさぐれカイドー」へ。イントロのギターリフを奏でる姿は、ライブに対する不安が全くない。心なしか以前より、テンポもあがったような気もする。そのくらい、恐れの無い音だった。

 彼の進化のスピードが速すぎて、ずっと遠くへ行ってしまったような気持ちになったが、突然「ちょっとチューニングします、すみません!」と、相変わらず彼の家に招かれたようなゆるさも健在で、なんだかほっとする。歌とMCのギャップも、彼の魅力の一つだ。1年前の同会場でのライブでは、指から出血するなど「大爆死した」そうだが、今回は見事ソールドアウト。「紆余曲折あってツーマンまでこぎ着けたので、見届けてください!」とかき鳴らし始めたのは、「クラッカー・シャドー」。深い海の底のような青い照明のステージで〈薄暗い 部屋 今日も一人〉という歌詞が歌われると、一見孤独なように見える。しかしこの歌詞の部分でフロア全体がクラップしており、秋山黄色一人の曲だったものが、今は多くの人の曲になっていることを感じた。CDにはない、唸るようなギターアレンジも印象的だった。

 続いて「日々よ」では、スローテンポな曲がゆえ、伸びやかでありながら力強い歌声が、より一層耳に届く。美しくビブラートしているのに、弱々しくはなく、むしろ強い意志さえ感じる。ここで、彼の声のバリエーションが増えていることに気づかされる。ハスキーな声、ストレートな声、太い声、裏声…こんなに短期間で人の表現力は上がるものなのかと、またも驚かされた。

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