米津玄師、ドラマ『リコカツ』主題歌「Pale Blue」に漂う恋の余韻 深遠な蒼いラブソングに

 「Pale Blue」は事前のコメントが示唆していたように、テーマは「恋愛」であり、正真正銘のラブソングではある。具体的に、どのような楽曲であるかを考えていきたい。

 この楽曲では常に壮絶な「終わり」の予感が漂っており、だからこそ「恋」の続きをいつまでも希求するサビの言葉たちは、胸を締め付けられるほどに切ない。その意味で、「orion」、「打上花火」、「まちがいさがし」などと同じく、今回も情熱的で真っ赤な恋心を描いた楽曲ではなく、極めて深遠な蒼いラブソングになっていることが分かる。

 メロディに耳を澄ますと、非常に美しくありながら全体的に抑制が効いていて、トラックのアレンジは上品なテイストに仕上がっている。総体として、アダルトでビターな味わいのラブソングであり、歌詞のテーマと相まって、この楽曲が残す「恋」の余韻は、とても深く切実なものであると感じた。

 なお、今回の新曲の初オンエアに合わせて発表された新しいアーティスト写真は、淡いペールブルーを基調とした、上品でシックな仕様に仕上がっている。公開のタイミングを踏まえると、「Pale Blue」の楽曲世界を表していることは間違いなさそうだ(今回、新しいアーティスト写真の撮影を担当したのは、「感電」のミュージックビデオの撮影などを手掛けた映像監督・写真家の奥山由之)。

 正式なフルサイズ音源を聴かない限りは、今回の新曲の全容と真のメッセージを掴むことはできないし、今後、ドラマの物語の展開によっては、この楽曲の響き方が大きく変わってくる可能性も大きい。なぜなら『リコカツ』は、離婚から始まる物語であり、その先の展開は、オーソドックスなラブコメディとは大きく異なるものであることが予想できるからだ。正式なリリースの発表、および、2021年における米津玄師の次のアクションを、ドラマ『リコカツ』の最新話と共に楽しみに待ちたいと思う。

■松本侃士
音楽ライター。映画ライター。Voicyパーソナリティ「ポップ・カルチャーの未来から」。1991年10月1日生まれ。慶應義塾大学卒。2014年、音楽メディア企業ロッキング・オンに新卒入社、編集・ライティングなどを経験。2018年、渋谷のITベンチャー企業へ転職。現在は、本業と並行しながら、noteを拠点として、音楽コラムや映画コラムを執筆中。2021年1月からは、Voicyパーソナリティとして音声コンテンツの配信を始めました。
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