米津玄師、ドラマ『リコカツ』主題歌「Pale Blue」に漂う恋の余韻 深遠な蒼いラブソングに

 米津玄師の快進撃が止まらない。2020年8月に発表されたアルバム『STRAY SHEEP』が、オリコン週間合算アルバムランキングにおいてダブルミリオンを突破したことも記憶に新しいが、彼は、破格の商業的成功を果たしただけではなく、日本の音楽シーンに新しい音楽観を提案し続けている。だからこそ多くのリスナーが令和時代の最先端を走り続ける彼のネクストアクションに注目しており、2021年の年明けに一部解禁された新曲「ゆめうつつ」(日本テレビ系『news zero』テーマソング)は、非常に大きな話題を集めた。

『HIGHSNOBIETY JAPAN ISSUE 06』
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 そして、2021年3月25日、米津玄師が、北川景子と永山瑛太が出演するTBS系金曜ドラマ『リコカツ』の主題歌として、新曲「Pale Blue」を書き下ろしたことが発表された。今回は、ドラマのエンドロールで初オンエアされた同曲について、現在手元にある情報をもとに綴っていきたい。

 まず、このドラマ主題歌のニュースが発表された時に真っ先に目を奪われたのが、「久しぶりにラブソングを作りました。」という米津玄師のコメントである。このコメントにおける「久しぶり」という言葉が、具体的にどれだけの期間を示しているのかは定かではない。これまでに米津玄師が発表してきた楽曲の中から「ラブソング」を探そうとすると、抽象度の高い言葉が用いられているが故に普遍的な人生賛歌として響く楽曲が多いことに気付く。例えば、「カナリヤ」は、一見ラブソングとして聴くこともできそうだが、この楽曲が全編を通して伝えるメッセージの深度は、もはや「恋愛」という次元には収まりきらないものだ。他にも、絶対的な他者との邂逅や共感、および、その歓びをテーマとした楽曲は多いが、それらは厳密にはラブソングとは異なるように思う。

 このように、米津玄師のディスコグラフィを見ていくと、直接的に「恋愛」をテーマとした楽曲は、決して多くはないと言える。その前提の上で、あえて、近年の彼の楽曲の中から、ラブソングとして聴くことができるものをいくつか挙げてみたい。

〈神様  どうか  声を聞かせて/ほんのちょっとでいいから/もう二度と離れないように/あなたと二人  この星座のように/結んで欲しくて〉(「orion」)

〈パッと光って咲いた  花火を見ていた/きっとまだ  終わらない夏が/曖昧な心を  解かして繋いだ/この夜が  続いて欲しかった〉(「打上花火」)

〈君の目が貫いた  僕の胸を真っ直ぐ/その日から何もかも  変わり果てた気がした/風に飛ばされそうな  深い春の隅で/退屈なくらいに何気なく傍にいて〉(「まちがいさがし」)

 いくつかの楽曲を振り返ってみると、ただ単に「恋愛」のブライトサイドをストレートに描いているわけではないことが分かる。まるで、人を愛するということを真摯に突き詰めた先に輝く「願い」や「祈り」に丁寧な輪郭を与えるような、とても切実で深遠なラブソングであるのだ。

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