『GET OVER -JAM Project THE MOVIE-』インタビュー
JAM Projectが語る、20年の歩みと現在 「アニソンシーンの明るい未来を強く感じる」
「今のアニソンシーンはすごくユニークで自然な形」(影山ヒロノブ)
――この20年間でJAMは本当に精力的な活動をされてきたわけですが、アニソンシーンに対してどんなことを成し遂げたと感じていますか?
奥井雅美(以下、奥井):なんだろうなぁ。アニソンシーンには時代ごとに代表するシンガーの方がいるわけです。私たちより上だと水木(一郎)さんや堀江(美都子)さんがそうだし、その次が影山さんの世代になるのかな?
影山:うん、そうだね。
奥井:そういった方々が築いてきたものを次の世代がしっかり受け取って、それをまたシーンに還元していく。アニソンシーンにはそんな系譜みたいなものがあると思うんですけど、その中でJAM Projectという存在も最近やっと、何かしらをシーンに残してこれたんじゃないかなと思えていて。それこそLiSAちゃんがレコード大賞を獲るような、そんなアニソン業界に少しは貢献することができているんじゃないかなって。自分たちでそう感じているというよりは、例えば若い女性シンガーの子に言っていただけたりすることがあって気づくんですけどね。前を行く人たちの背中を次の世代が見て、その背中をまた新しい世代が見て、みたいなことはやっぱりあるとは思うので、そこを意識して日々を生きるようにしてるかな? だからJAMとして成し遂げたことと言えば、若い世代に見られても恥ずかしくない細々とした日々の生き方、仕事の仕方をしてこられたことなのかもしれないです。
――劇中にはALI PROJECTやangela、GRANRODEO、FLOWといった後輩アーティストたちも登場します。彼らはまさにJAMの背中を見つつ、その中で独自のカラーをしっかり表現しつくしている面々ですよね。
きただに:俺が言うのもアレですけど、頼もしい限りですよね。彼らを見ていると、アニソンシーンの明るい未来を強く感じるというか。この業界に対してのいろいろな可能性も見えてくる気がします。
影山:去年の頭に出したアルバム(『The Age of Dragon Knights』)や『JAM FES.』にゲストで参加してくれた仲間たちは全員が自分たちのスタイルをしっかり確立してるタイプだと思うんですよ。振り返ると、20年前にはそういうアーティストってほとんどいなかったんだよね。
奥井:うん。たとえ出てきたとしても時代がついてきていないところもあったから長く続けることができなかったりもして。時代とともにアニメ作品もいろんなタイプのものが生まれるようになったから、それに合わせてアニソンを歌うシンガーやアーティストもよりジャンルが幅広くなったところはあると思いますね。
――そこが20年活動してきたJAMだからこそ感じる、アニソンシーンの変化したところですか?
きただに:そうですね、うん。
影山:どんな音楽性を持っているのかがはっきりしているシンガーやアーティストが世に出る時代になってきましたよね。昔のアニソンシンガーは歌の上手い下手だけで評価されているところがあったけど、今は自分たちで曲や歌詞を書くのも当たり前になっているし、ビジュアル面だって自分の好きな服を着て、自分なりのスタイルをちゃんと確立してますからね。GRANRODEOだってFLOWだって、そうでしょ? 宝野(アリカ:ALI PROJECTボーカル)さんなんてものすごい世界観を持ってらっしゃる方だし! そういうスタイルをすべて受け入れる今のアニソンシーンはすごくユニークだし、それがちゃんとたくさんの人たちに愛されているっていうのは、よくよく考えたらすごく自然な形でもあるなって思うんですよね。
――そういった独自の個性を持つアーティストたちの出現がみなさんの心に火をつけてくれるところもあったりするんですか?
影山:それはもうありますよ。あるよね?
きただに:間違いなくあります。自分たちの得意技、必殺技をより突き詰めて、もっともっとストロングにしていかなきゃって気持ちになりますからね。
――各自がそういう気持ちを持っているからこそ、JAMとして5人集まった時にはものすごいパワーを生み出すことにもなるんでしょうね。
きただに:そうですね。劇中で梶浦(由記)さんが言ってくださってますけど、この5人の声が重なるとすごい鳴りが生まれるっていうのはまさにそういうことだと思うんです。
遠藤:誰も遠慮しないとこがおもしろいですよね。少しも引いている人がいないっていう。昔は、いちシンガーとしてどんな曲でも歌わなきゃいけなかったから、ある種、自分の個性を殺して歌うことも必要だったんです。でも今はそうじゃない。むしろ自分の個性がないと生きていけない業界になったのかなって。そこもまたシーンの変化のひとつかもしれないですよね。
――逆に20年経ってもなおシーンの中で変わらないものって何かありますか?
奥井:それはアニソンを聴いてくれるお客さんたちの笑顔。アニソンのフェスなんかに出させてもらうと、みんなノリノリで笑顔を見せてくれるんです。そういう光景を見たときに、「あ、これだけはずっと変わらないんだな」ってすごく思う。自分の推しじゃないシンガーに対してもちゃんと応援してくれるところも昔からだよね。
影山:それはあるかもな。昔からずっと、アニソンのお客さんはあったかい。
きただに:優しいですよね。アニソン愛を感じるというか。
奥井:そういう意味では、アニソン自体の中に込められた思いみたいなものにもまた、普遍的で変わらないものがあるんだろうなっていう気もします。
――映画を観ても、今こうやってお話していても感じますけど、JAMのみなさんはキャリアにまったく胡坐をかいていない感じがするんですよね。世の中的には“レジェンド”と形容される存在なのに。
遠藤:たぶんみんな、誰かに対して偉ぶったりとか、そういうことに興味ないんじゃないですかね? JAMとしての活動にやりがいがあるから活動を続けているだけだし。ま、確かに年は食ってますけど(笑)。
きただに:年齢だけ見ればレジェンド(笑)?
奥井:そうですね(笑)。私の場合、レジェンドって聞くともっとすごい人たちのことでしょって思っちゃうというか。自分がそこにいるとは全然思ってないんです。
影山:たまに県外なんかに行くと「先生!」って言われることがあったりするんだけど、「いや俺、先生じゃないし」って思うよね、やっぱり(笑)。
福山:先生が5人集まってるユニットって、なんかおかしいじゃないですか(笑)。「全員が先生なの?」みたいな。
奥井:レジェンドとか先生とか呼ばれることを目指して活動するってね、私はちょっとダサい気がしちゃうな(笑)。
――音楽に向き合う姿勢としては、先ほど出た若手の面々と何も変わらないということですよね。同じ目線で戦っているっていう。
奥井:そうですね。上から見てるなんてことは絶対にない。私的には同じライン……っていうのもちょっと申し訳ない気持ちになっちゃうけど(笑)。
影山:現役で一生懸命頑張っている仲間たちの姿を見ると、絶対下になんて見れないですから。ほんとに同格というか、むしろ負けるもんかって気持ちで常にぶつかっていってますよ。
――では最後に。これから映画を楽しむ方々へ一言お願いします。
影山:僕らが歩んできた道のりは、同時にアニソンというものが世界で市民権を勝ち得ていった流れともすごくリンクしていると思うんです。そんな歴史を感じつつ、その中で生きてきたJAM Projectという存在をあらためて感じてみて欲しいですね。
福山:20年やってきた人たちが、まだこれだけやれているんだよっていうことを感じて欲しいです。僕は40歳になってからJAMに入りましたけど、でもまだまだ成長し続けているんだよっていうことを知って欲しいです。
影山:もしかしたら自分たちはアニソンシーンに対してのひとつの役目を終えたのかもしれない。それでもなお、まだ俺たちは進んでいく。その姿を通して、みなさんも自分の目標に向かって頑張ろうっていう気持ちを抱いてくれたら最高です!
■公開情報
『GET OVER -JAM Project THE MOVIE-』
2月26日(金)から3月11日(木)まで2週間限定ロードショー
出演:影山ヒロノブ、遠藤正明、きただにひろし、奥井雅美、福山芳樹、ALI PROJECT、angela、GRANRODEO、FLOW、梶浦由記
監督:大澤嘉工
製作:井上俊次、二宮清隆
企画:松村起代子、宇田川美雪
プロデューサー:高橋義人
制作:東北新社
配給:東宝映像事業部
2021年/日本/カラー/16:9/114分
(c)2021「GET OVER -JAM Project THE MOVIE-」FILM PARTNERS
公式サイト:http://Jamproject-movie.jamjamsite.com
公式Twitter:@JAMProject_eiga