Kitri、多彩な楽器&繊細なハーモニーが響いた『キトリの音楽会 #3 “木鳥と羊毛”』 新曲「未知階段」やカバーも聴きどころに

Kitri『キトリの音楽会 #3』レポート

 続く「バルカローレ」でHinaが手にしたのは、ライアーと呼ばれる小さなハープのような、これまた珍しい楽器。神秘的なオーラすら漂う同曲に、羊毛のマンドリンとHinaのライアーが木漏れ日のようなアレンジを加えていく。次の「春」まで羊毛が本編のサポートを務めるが、こうして第3のメンバーがライブで重要な役割を担うのも、「姉妹による連弾ユニット」を飛び越えていく新しい挑戦だと言えるだろう。同時に、それでも揺るぎないKitriらしさとして、ピアノ演奏はもちろん、2人の歌のハーモニーがいかに個性的な役割を果たしているかを実感させられた。

 羊毛がステージを去ると、4月に2ndアルバム『Kitrist Ⅱ』が発売されることが発表された。「皆さんの春に寄り添う作品になったら」という想いを丁寧に述べるとともに、2月24日に先行配信リリースされるという収録曲「未知階段」を披露した。この日8曲ぶりに披露された連弾のみの曲が未発表の新曲であるという演出もなかなか粋だが、この曲が本当に素晴らしいのだ。2人のピアノが激しく交差する連弾の醍醐味をしっかり聴かせ、不穏な空気感が漂うMonaの低音と、春めいたHinaの高音が混ざり合い、“未知階段”という見知らぬ場所へ誘って我々の心を躍らせる。サビでの歌い上げやアッパーなテンポ感も相まって、Kitriの中では特にポップス色も強く感じられ、この曲が『Kitrist Ⅱ』の中でどのような役割を果たすのか非常に楽しみになった。そして「別世界」をしっとりと、「さよなら、涙目」を晴れやかに歌い上げ、本編が終了した。

 アンコールでは再び羊毛を招き入れ、「羊毛さんがSNSで私の身長当てクイズを出してくれるんですけど、なかなか正解が出なくて......」と緩くて楽しいMCで場を盛り上げると、そこから、たま「パルテノン銀座通り」のカバーを聴かせたのだから、これまた驚きだ。いきなりピアノから入るのではなく、原曲の良さを活かしてギターとMonaの歌から入るのが新鮮で、Kitriのカバーのレパートリーの広さには感嘆させられる。フラワーカンパニーズ「深夜高速」のカバーを初めて聴いた時もそうだったが、世代が上のロックバンドの曲をセレクトすることで、彼女たちも自ら「Kitriらしさ」の壁を壊しにいってるのかもしれない。それを音源以上に感じられるのがライブなのだから、やはりKitriは面白い。そして「自分たちが歌えばKitriになる」という自信もますます漲ってきているのだろう。今後どんなカバーを聴かせてくれるのか、早くも次なるライブへの期待が高まる。

 最後はKitriの名刺曲「羅針鳥」を披露し、「Lento」で締めくくった。〈夕映えが綺麗/今まばたきはできない/焼き付けた瞳の奥/まだここにいたいと思った〉というHinaの優しい筆致の歌詞が、「このライブが終わらなければいいのに」という会場内の空気と重なって、温かな高揚感を生み出した。羊毛という心強いギタリストをサポートに迎え、Hinaが多様な楽器に挑戦し、ピアノ連弾ユニットの枠に収まらない刺激的なパフォーマンスを見せてくれたKitri。しかし何度か特筆したように、静謐なピアノ演奏と、繊細な歌やコーラスワークという持ち味もしっかりと感じられたライブであり、それは姉妹という関係性でしか出せないものだ。己の武器に磨きをかける2人は、これから新たなKitristとの出会いを糧に、ますます大きな空へと羽を広げていくことだろう。2ndアルバム『Kitrist Ⅱ』リリースまでもうまもなくだ。

■セットリスト
『キトリの音楽会 #3 “木鳥と羊毛”』
M1 水族館(クラシック曲)
M2 鏡
M3 Akari
M4 矛盾律
M5 青空カケル
M6 雨上がり
M7 異邦人
M8 二人セゾン
M9 バルカローレ
M10 春
M11 未知階段
M12 別世界
M13 さよなら、涙目
E1 パルテノン銀座通り
E2 羅針鳥
E3 Lento

Kitri official web

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