『Nizi Project』ヒットとNiziUの躍進で注目度高まる韓国発サバイバルオーディション 2021年放送予定の番組をピックアップ

 市場を全世界規模に展開する第三次韓流ブーム以降の韓国音楽界では、グループのメンバー構成における多国籍化が目立っている。今や様々な国籍を持つメンバーによるグループ構成が当たり前にもなっているK-POPシーンにおいては、TWICEのモモ・サナ・ミナやIZ*ONEの宮脇咲良・矢吹奈子・本田仁美など日本人メンバーによる活躍も目覚ましい。

『Step and a step』通常盤
『Step and a step』通常盤

 また昨年は、K-POPにおけるグローバリゼーションの新たな様式が日本に社会現象を巻き起こした。TWICEを擁す韓国の大手芸能事務所JYPエンターテインメントの創設者J.Y. Parkがプロデューサーをつとめたソニーミュージックとの共同プロジェクト『Nizi Project』のヒットである。

 かねてよりJ.Y. Parkが語っていた「韓流文化だからといって必ずしも韓国人が歌う必要はない」「これからはシステムを輸出しなければならない段階だ」(参照)というビジョンを反映させた『Nizi Project』およびそこから誕生したグローバルガールズグループ・NiziUは、これまでK-POPやサバイバルオーディション、ガールズグループに関心のなかった層の支持を獲得するまでに至った。これには、新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言下でステイホームが呼びかけられたさなか、情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)を通じ選考過程の様子が日々お茶の間に届けられていたという時勢的な要因のほかに、本オーディションそのものが持つ特色が鍵を握っていたように思う。

 まずその一つとして、本オーディションにはK-POPのアーティスト育成メソッドがもたらす新鮮さとともに、日本の視聴者にも受け入れられやすい親しみやすさが盛り込まれていたことが挙げられる。『Nizi Project』放送時、プロデューサーのJ.Y. Parkが参加者一人ひとりに対して投げかける評価やアドバイスが視聴者の間で話題となったが、このような光景は2015年に韓国で放送されたTWICEのデビューメンバーを選抜するサバイバルオーディション番組『SIXTEEN』などにも見られたものであった。しかし、参加資格を“国籍不問”とした上で日本語でのコミュニケーション能力を求めたこの『Nizi Project』では、「僕は、このプロジェクトの前は日本語が話せませんでした。(中略)プロジェクトを始めるときに、参加者ともっと深く分かり合いたくて勉強しました」(『スッキリ』6月26日放送/日本テレビ系)というJ.Y. Parkにより、韓国式のアーティスト育成メソッドが日本語で伝えられた点が革新的でありながら、受け入れやすさともなったのだろう。

 また練習生としてのキャリアを持つ者とともに、ダンスや歌・ラップの経験がない参加者もみられるなど、彼女たちのバックグラウンドが多様であったことも『Nizi Project』における魅力の一つと言える。様々な出自を持ちながら、同じ夢に向かって舞台を分かつ参加者同士が互いに影響し合うさまは、思わず画面越しに応援したくなるような眩しい輝きを放っていた。

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