NUMBER GIRL、東京事変、私立恵比寿中学、尾崎豊……今サブスクで聴きたい、現場の熱量閉じ込めたライブ音源

ナンバガら、サブスクで聴きたいライブ音源

キュウソネコカミ「ハッピーポンコツ(LIVE)」

キュウソネコカミ「ハッピーポンコツ(LIVE)」

 キュウソネコカミのライブも、フジファブリックと同じぐらいに温かい雰囲気で満たされている。『キュウソネコカミ THE LIVE-DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー/なんばHatch(2017/01/31)』収録の「ハッピーポンコツ」ライブ音源を聴けばその空気感が伝わると思う。笑顔で楽しそうに踊っているファンの姿が頭にハッキリと浮かんでくる。メンバーの楽しそうにしている顔も想像できる。

あいみょん「猫(2018.10.7 Live at  上野恩賜公園 野外ステージ)」

あいみょん「猫(2018.10.7 Live at  上野恩賜公園 野外ステージ)」

 あいみょんは、DISH//に提供した「猫」をライブで弾き語りによるセルフカバーを行った。『今夜このまま』収録のライブ音源には観客の歓声や手拍子はない。繊細な表現の演奏を真剣に聴いている客席の集中した空気感までも音源からは伝わってくる。そして曲が終わった瞬間に緊張の糸が切れて、感動を表現するように拍手が贈られる空気感もたまらない。音だけでなく空気まで録音されているような気がする。

尾崎豊「15の夜(ライブ)」

尾崎豊「15の夜(ライブ)」

 尾崎豊『13/71-THE BEST SELECTION』収録の「15の夜」ライブ音源は、弾き語りだが観客の熱気が伝わってくる。むしろシンプルな弾き語りだからこそ、ファンの歓声や手拍子が楽曲の一部となって、演奏に深みを与えている。特に後半の盛り上がりと感動は、観客と一緒にライブを作り上げているからこそ生まれるものだろう。「また会いましょう」という最後の挨拶で締めくくることも感動的だ。

PassCode「Ray(PassCode STARRY TOUR 2020 FINAL at KT Zepp Yokohama)」

PassCode「Ray(PassCode STARRY TOUR 2020 FINAL at KT Zepp Yokohama)」

 コロナ禍になってから初めて行った有観客ライブを音源化した『PassCode STARRY TOUR 2020 FINAL at KT Zepp Yokohama』。彼女たちのライブはモッシュやダイブは当たり前で、ファンも一緒に歌ったり叫んだりするライブだった。しかし、コロナ禍における取り組みとして、ライブ中に声を出すファンは1人もいなくなった。それでも最高のライブをやろうという意気込みと、ファンの前でライブを行えることの喜びを「Ray」のライブ音源からは感じる。歌い始める前の「何度も何度もこの曲に助けられた分、この曲でみんなを幸せにしたい」という南菜生の言葉が胸に刺さる。コロナ禍だからこそ熱い想いを感じるようなライブ音源だ。

andymori「愛してやまない音楽を (アカペラ ver.) (2013.04.05 ライブハウスツアー''FUN!FUN!FUN!''/恵比寿LIQUIDROOM)」

andymori「愛してやまない音楽を (アカペラ ver.) (2013.04.05 ライブハウスツアー''FUN!FUN!FUN!''/恵比寿LIQUIDROOM)」

 バンドなのにあえてメンバー3人がアカペラで歌っているandymori「愛してやまない音楽を」(『andymori ライブアルバム 愛してやまない音楽を』収録)。客席にいる音楽を愛する人たちの手拍子や歓声も演奏の一部になっている。ライブはアーティストだけでなく、客席を含めた全員が、音楽を心から楽しみことで成立していることを実感するような音源だ。スタジオの録音では感じることができないような、ファンと一緒に作り上げるライブだからこそ録音することができたであろう名演。これがライブの魅力だと思う。

 音楽はアーティストから一方通行でリスナーが受け取るものではなく、キャッチボールのように受け取り合うものだ。ライブ音源を聴くと、それを改めて実感する。ライブ音源の中には歌や演奏が荒々しいものもあり、音の良さという点でもスタジオ音源と比べると劣っていると言えるのかもしれない。ただ、そんなライブ音源たちが、今は体験することができない音楽の根源的な楽しみ方を、我々に蘇らせてくれるのだ。

■むらたかもめ
オトニッチというファン目線で音楽を深読みし考察する音楽雑記ブログの運営者。出身はピエール瀧と同じ静岡県。移住地はピエール中野と同じ埼玉県。‬ロックとポップスとアイドルをメインに文章を書く人。
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