私立恵比寿中学「仮契約のシンデレラ」、TikTokをきっかけに再注目 新規リスナーにも届く楽曲本来のポテンシャル
私立恵比寿中学が2012年にリリースしたメジャー1stシングル曲「仮契約のシンデレラ」が今注目を集めている。火がついたのは動画投稿SNS・TikTok。なぜ8年前の楽曲が突然バズを巻き起こしたのだろうか。
このヒットの火付け役となったのは、TikTokカルチャーの1つである“推し紹介動画“だ。これは、男性アイドルグループのファンが自身の応援するメンバーを他者に紹介する目的で15秒に編集してTikTok上に公開するもの。そのBGMとして、今年の夏頃から倍速に加工された「仮契約のシンデレラ」が用いられ始めたのがきっかけである。
そもそも「仮契約のシンデレラ」はメジャーデビュー寸前の私立恵比寿中学の状況下にちなみ、煌びやかな芸能界で奮闘するアイドルの姿をシンデレラの童話にたとえてコミカルに描いた1曲。しかしTikTokでの推し紹介動画はメインモチーフの〈シンデレラ〉の描写を主軸にせず、歌詞中にある〈おーじ様〉=王子様に“推し”を見立てた構成で作られているのが興味深い。TikTokユーザーの感性ならではのBGMセレクトと言えよう。
乃木坂46「制服のマネキン」「君の名は希望」などで知られる杉山勝彦が手がけた躍動的でメルヘンチックなメロディ、〈ツンデレビームを浴びせたれ!〉や〈同情するなら姫にして!〉など随所に現れる歌詞のパンチラインなどリスナーに向けたフックは満載。元々キャッチーなこの楽曲だが倍速に加工されたことでそのテンションが増大し、さらなる中毒性を生んだことが多くのユーザーの耳を惹きつけた理由だろう。
楽曲本来のポテンシャルとそれを拡張するアイデアの掛け算が功を奏し、10月にはすっかりTikTok中に伝播した「仮契約のシンデレラ」は男性アイドルのファンのみならずアニメキャラクターや女性アイドルのファンにも広がりを見せ始める。またオリジナルの振り付けで踊る15秒動画もユーザーの間でブレイクし、私立恵比寿中学の真山りかもTikTokオフィシャルアカウントでダンスを披露するまでに至った。“おーじ様”に向けてでも、“シンデレラ”の目線でも聴き手を巻き込めるエネルギッシュなコミックソング的意匠もまた幅広い層へとリーチできた一因だろう。
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TikTokでのヒットに連動してYouTubeにアップされていたMVの再生回数も伸び、10月には400万回再生を突破。各種ストリーミングサービスでも再生回数の上昇を見せている。