lynch.がファンとの絆を確かめ合った配信ライブ 濃密な二日間の模様を振り返る

lynch.配信ライブレポ

「lynch.です、よろしくお願いします!」

 この言葉を皮切りに黒を纏った鴉達がステージを鮮やかに舞い、脳天揺さぶる轟音がフロアを埋め尽くすあの光景を私達は半年前に奪われた。新型コロナウイルスの影響により、バンドキャリア15周年のイベントはことごとく延期。そんな中ようやく発表された有観客コンセプトライブも中止となってしまった。肩を落とすファンの元に届けられたのは中止になった8月15日、16日の公演と同じ内容のコンセプトライブを無観客配信ライブとして開催するというニュースだった。

 半年間会うことの叶わなかった寂しさを埋めるかのように、ファンとの絆を確かめ合った二日間の模様をお届けする。

 『LIVE’20「DECIDE THE CASE」CASE OF 2013-2020』と銘打たれた9月10日。定刻通りに聴き慣れたSE「AVANTGARDE」が流れ出し、画面の向こう側を睨み付けるかのようにメンバーが登場。「ようこそ! 処刑台へ!」と「GALLOWS」からスタート。いつもならフロアから湧き上がってくる「ARE YOU READY?」という叫び声を代弁するように画面には字幕が浮かび上がる。堰を切ったように溢れ出した暴力的な重低音とエッジの効いたシャウトに鳥肌が立つ。インターネットという大海原を挟んでもそのド迫力は衰えることがない。葉月(Vo)の「歌ってください!」という呼びかけに応える観客は会場におらず、バックサウンドのみが響き渡っている。だが、これまでlynch.のライブを数多観てきた脳が勝手に観客の歌声を鮮明に補完する。本当にライブハウスにいるかのような錯覚すら感じる。観客を疑似ライブハウスへ誘ったところでウイルスの脅威を打ち砕くかのような爆発と共に「DON'T GIVE UP」、「XERO」と畳みかけていく。ライブ初披露の2曲だが、発売されてからこの日まで幾度となく聴き、ライブで演奏される瞬間を想像してきたのだ。戸惑いなど微塵もなくレスポンスを返していける。それに対抗するかのようにメンバーも過去最大に低い極悪なガテラルとサウンドで応戦していく。

 観客が温まったところで「さあ、画面の前の皆さん。随分久しぶりになってしまいました。皆さん、首はナマっていませんか?」「家だろうがどこだろうが関係ねぇ! 頭飛ばせ!」と「INVINCIBLE」になだれ込む。各地で頭が飛んだところで「観に来たからには楽しんでってくれ、いいか!」と「CREATURE」、「DAMNED」を放つ。通常なら観客の怒号が会場を埋めるセクションで全くの無音が生まれるという異様な光景だが、記憶の中の情景とマージされ不思議と喪失感はない。続く「IDOL」では映像にエフェクトがかかり、配信ライブならではの手法で観る者を引き込んでいく。十分に惹きつけたところで「UNELMA」、「MELANCHOLIC」を披露。ライブに飢え続けた身体に歌声が染み込んでいき、久しく遠ざかっていた音の世界へ沈んでいく。浸りきったところに「D.A.R.K.」の重低音が蛇のように這い、再び各々のフロアに熱を灯して回る。「暴れる準備はいいか! 今いるその建物ブチ壊せ!」と「THE OUTRAGE SEXUALITY」を投下。葉月も髪をオールバックにして戦闘態勢へ。さらに「BARRIER」、「VANISH」と本気で画面の向こうで誰かが建物を壊しかねない楽曲を射続ける。「OBVIOUS」では画面いっぱいにレスポンスの字幕が現れ、配信ならではの強みとバンドの持つライブ力が絡み合っていく。葉月は「ありがとう、届けてください。届くからな!」と肉声でなくても想いが届くことを訴える。

葉月
葉月(Vo)

 さらに「この半年間、他に楽しいこといっぱいあったでしょ。辛いことも多いと思うけど楽しいこと見つけた人多いと思います。だけど! その楽しいと思ったこと全て! 台無しにするようなセックスしませんかー!」とライブ恒例の「pulse_」へ。ドラムの背後から観る集結して演奏する姿にボルテージが上がる。コメント欄は“ヤリたい”の文字で埋め尽くされていき、葉月はカメラへ向かってマイクを舐めるサービスショット。「このコロナ禍が終わったら絶対また会いましょう! 絶対生きろよ、わかったな! もう1曲行くぞ!」と「EVOKE」へ繋げていく。“破壊のうたが闇夜をさいた”ところでメンバーそれぞれが現状や配信ライブに対しての想いを吐露。各々観客がいる本来のライブスタイルへの渇望を紡ぎ、この日のラストを「MOON」で締めくくった。

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