Metallica、Marilyn Manson、Napalm Death……HR/HMの大御所からグラインドコアの重鎮まで この秋聴くべき注目作9選

Code Orange『Under The Skin』

Code Orange
Code Orange『Under The Skin』

 今年3月にエクストリームミュージック界の新たなスタンダードとなるアルバム『Underneath』を届けてくれたばかりのCode Orangeが、早くも新作をリリース。本作は既存曲にアコースティックアレンジを施した企画色の強い内容で、バンドがイメージしたのは往年の『MTV Unplugged』とのこと。YouTubeなどで目にすることができる映像も、NirvanaやAlice In Chainsなどが出演した際の映像と重なるものがあり(一切、本作ではAlice In Chains「Down In A Hole」のカバーも収録)、ジャミー・モーガン(Vo/Dr)よりもリーバ・マイヤーズ(Vo/Gt)のボーカルを前面に打ち出すことで『Underneath』との差別化を図ることに成功しています。ノイズの壁がなくなり、裸になった楽曲の数々は「え、こんな曲だったの?」と新鮮な驚きを与えてくれるはず。そういった意味では、『Underneath』と表裏一体の姉妹作と言えるかもしれません。

Code Orange - down in a hole (from Under The Skin)

Ihsahn『Pharos』

Ihsahn
Ihsahn『Pharos』

 北欧ブラックメタル界における伝説のバンド、Emperor。そのフロントマンであるイーサーンは今年EP二部作を制作し、2月にはルーツのブラックメタルにスポットを当てた第1弾『Telemark』をリリースしています。そこから半年を経てドロップされた第2弾『Pharos』は穏やかなメロディを軸に、前作とは真逆のソフトサイドと呼べる内容。過去のソロ作でも見せてきたプログレッシブロックからの影響もにじみ出ていますが、全体からはAOR的な香りも感じられ、改めてイーサーンというアーティストの異端ぶりを再確認することができます。また、本作にはPortishead「Roads」とA-ha「Manhattan Skyline」という異色のカバーも用意。特に後者では、盟友Leprousからエイナル・スーベルグ(Vo/Key)をゲストボーカルに迎え、原曲にも匹敵する透明感ある歌声を響かせています。

Ihsahn - Manhattan Skyline ft. Einar Solberg

Napalm Death『Throes Of Joy In The Jaws Of Defeatism』

Napalm Death
Napalm Death『Throes Of Joy In The Jaws Of Defeatism』

 グラインドコア/デスメタルシーンの頂点に君臨するNapalm Deathの16thアルバムは、約6年ぶりという過去最長スパンを経て届けられた待望の1枚。来年で結成40周年を迎えるバンドとは思えないほどに、そのブルータルさはまったく衰えることなく、音から伝わる怒りのエネルギーは過去イチではないかと思えるほど。それだけストレートな表現が多く、Napalm Deathをよく知るリスナーなら今回も文句なしの仕上がりだと断言できるでしょう。と同時に、「Napalm Deathってどんなバンド?」というビギナーにもっともわかりやすい形で伝えることができる入門盤にもなりそうです(それにしてはかなりハードルが高いですが)。また、今回は「Amoral」のような新機軸も用意されており、まだまだ進化の過程であることにも驚かされます。

NAPALM DEATH - Amoral (OFFICIAL VIDEO)

Umbra Vitae『Shadow Of Life』

Umbra Vitae
Umbra Vitae『Shadow Of Life』

 Convergeのジェイコブ・バノン(Vo)を筆頭に、マイク・マッケンジー(Gt/The Red Chord、Stomach Earth)、ショーン・マーティン(Gt/Twitching Tongues、ex. Hatebreed)、グレッグ・ウィークス(Ba/The Red Chord、Labor Hexなど)、ジョン・ライス(Dr/Uncle Acid & The Deadbeats、ex. Job For A Cowboy)といったUSハードコア/エクストリームミュージック界のスーパースターたちが一堂に会したこの新バンドは、90年代初頭に“デスメタル化”したNapalm Deathなどからの影響が強いサウンドが最大の特徴。自身のルーツに立ち返ったジェイコブがこれでもかとアグレッシブかつエクストリームなサウンドを奏でています。5月にデジタルリリース済みの本作ですが、10月23日には映画音楽を思わせるインストナンバーをボーナストラックに加え待望のCD化。先のNapalm Death新作とあわせて楽しんでもらいたい1枚です。

Umbra Vitae "Ethereal Emptiness" (Official Video)

Venom Prison『Primeval』

Venom Prison
Venom Prison『Primeval』

 最後の1枚はサウス・ウェールズ出身の5人組ハードコア/デスメタルバンドの最新作です。昨年3月発売の2ndアルバム『Samsara』が高い評価を獲得したばかりですが、続く本作は2015年発売の初期EP2作品を再レコーディングしたものに、新曲2曲を加えたもの。自主制作によるチープな初期楽曲が、録音状態も演奏技術も数段レベルアップした状態でリテイクされており、原曲を知るコアなリスナーでも新作気分で接することができるはず。そして、何より強烈なのが紅一点ラリッサ・ストゥーパー(Vo)のボーカル。ストレートな初期楽曲のみならず、複雑に進化した新曲でもその技術/表現力の高さを実感することができるはず。ここまでくると、近い将来届くであろう3rdアルバムで本格的ブレイクを果たすことは間違いなさそうです。

Venom Prison - Slayer of Holofernes (Official Music Video)
RealSound_ReleaseCuration@Tomokazu_Nishibiro1018

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

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