Year Of The Knife、Bury Tomorrow、DIR EN GREY……2000年代ヘヴィサウンドの“今”が刻まれた新作6選
Deep PurpleやAlcatrazz、U.D.O.など大御所ハードロックバンドの新作が立て続けにリリースされた2020年夏のハードロック/ヘヴィメタル(以下、HR/HM)シーン。本来ならここでそういった作品をピックアップすべきでしょうが、あえて今回は2000年前後以降に登場した若手〜中堅バンドの注目作6枚を紹介していきたいと思います。すでにおなじみの人気バンドから久しぶりに名前を聞く中堅、日本ではまだまだ知名度の低いニューカマーまで、これらの新譜を通してメタル/ラウドシーンの現在を感じてもらえたら幸いです。
Year Of The Knife『Internal Incarceration』
Year Of The Knifeはアメリカ・デラウェア州出身の5人組ハードコアバンド。2015年結成と歴史はまだ浅く、2019年に<Pure Noise Records>と契約して過去のEPに新曲を加えたコンピレーションアルバム『Ultimate Aggression』でデビューしたばかり。そこから1年半を経て届けられたのが、今回紹介する1stフルアルバム『Internal Incarceration』です。
Convergeのカート・バルーがプロデュースを手がけた本作は、高密度の超重量級ハードコアサウンドが楽しめる良作。大半の楽曲が1〜2分台とかなりコンパクトな作風ですが、アルバムの曲間が短いこともあり、複雑な展開を繰り広げる組曲のようにも聴こえ、気づけば13曲32分があっという間に通り過ぎていく。全体的にメタリックな質感が散りばめられているものの、軸にあるのConverge以降のハードコアサウンドであり、昨今のメタルコアやスクリーモとは一線を画する“しなやかだけど骨太”な楽曲の数々は一度聴いたらやみつきになるはずです。これが1stアルバムという事実を考えても、今後の進化が楽しみな存在です。
Bury Tomorrow『Cannibal』
イギリスはハンプシャー州サウサンプトン出身の5人組メタルコアバンド・Bury Tomorrow。2014年に発表した3rdアルバム『Runes』以降はすべてのアルバムが全英TOP40入りを果たしており、今回紹介する6thアルバム『Cannibal』はついに全英10位という、イギリスを代表するメタルバンドのひとつとして着実な成果を残しています。
前作『Black Flame』(2018年)から引き続き、SikThのギタリストであるダン・ウェラーがプロデュース、元Peripheryのアダム・ゲットグッドがミックスを手がけた本作は、この手のバンドとしては音像のきめ細やかさや各楽器のバランス感に優れた、良い意味で“聴きやすい”1枚に仕上がっています。2000年代のメタルコアバンドとしては第2世代に当たる彼らですが、アグレッシブさやエクストリームさを追求するのではなく、より洗練した、完成度の高い楽曲作りにこだわり始めており、どの曲にも耳に残るメロディやフレーズが散りばめられているのが印象的。チャート上での成功も納得の完成度です。
DIR EN GREY『落ちた事のある空』
その独創的な世界観とサウンドが国内のみならず、海外でも高く評価されているDIR EN GREY。この夏、自身初となるデジタルシングル『落ちた事のある空』をリリースしました。新作音源としては昨年9月リリースのシングル『The World of Mercy』以来、ほぼ1年ぶりのこと。2018年に発表された傑作アルバム『The Insulated World』、そのアルバムの世界観を締めくくる『The World of Mercy』を経て届けられる新曲だけに、その内容に大きな注目が寄せられていました。
トライバル感を伴うリズムとアグレッシブな中にも彼ららしい流麗なメロディが耳に残るタイトルトラックは、エフェクトを加えた音像と芯を食うヘヴィなバンドサウンドとの対比も相まって、王道のDIR EN GREYらしさの中にもまだ見ぬ新境地が見え隠れする意欲作に仕上がっています。カップリングには2005年にシングルリリースされた「CLEVER SLEAZOID」のリアレンジバージョンを収録。大まかな構成こそ原曲に近いですが、オリジナルバージョンでは英詞だったパートがほぼ日本語詞に変わるなどの変化があり、それに伴いメロディも一部変更されています。インパクトの強い原曲を超えるのは至難の技ですが、このバージョンは新曲に触れるような感覚で楽しめるのではないでしょうか。さらに、本作には今年初頭に行われたヨーロッパツアーから、2月5日のロンドン公演で収録された「Followers」も収録されています。