ReoNaはアニソンシンガーの枠だけに収まらない 皆に寄り添う歌声の力を、1stアルバム&「THE FIRST TAKE」から紐解く

ReoNaはアニソンシンガーの枠だけに収まらない 皆に寄り添う歌声の力を、1stアルバム&「THE FIRST TAKE」から紐解く

 もし、ReoNaという“名前を知らない”(=unknown)のならば、この出逢いをきっかけに知ってほしい。

 冒頭から何の説明もせず恐縮だが、まずは下に引用した歌詞を読みながら、できるだけ静かな環境で、この曲を聴いていただけるだろうか。

友達の前の僕は優しくて
先生の前の僕は大人しい
家族の前の僕は無口で
本当の僕は誰も知らない

言いたいことを我慢して
思った心に蓋をした
何者かになれるように
人には名前がついてるけど
それだって自分で決めたんじゃない

空が青いのは空のせいじゃない
夕焼けが赤いのも陽のせいじゃない
あなたらしく生きれないとしたら
それは優しいあなたのせいじゃない

 この「unknown」という曲の歌詞は、周囲の人間に合わせて“僕”を演じる自分を客観視するところから始まる。サビに入ってもこの構造は同様だ。空が青く、夕焼けは赤いという物と色のイコール関係は、人が勝手に備え付けた安易で固定概念的なイメージである。つまるところ、こういった伏線を巡らせた上で、この曲は最終的に何を言いたいのだろうか。

〈あなたらしく生きれないとしたら/それは優しいあなたのせいじゃない〉

 周囲に押しつけられた“優しいあなた”というイメージを持った言葉の呪いが、本当の自分を閉じ込めていたとしても、それは本当の“あなた自身”の存在を否定することではない。人により悲しみの程度は異なれど、周囲の期待や煽りによって、自分で自分の本心を押し殺した経験は誰しもにあるだろう。その切ない想いを自分以外に共有できない人もいるはずだ。

 そんな“知らない誰か”の“名前もない絶望”に、“名前のないお歌”で寄り添うアーティストこそ、自らを“絶望系アニソンシンガー”と名乗るReoNaである。

 彼女は、2018年7月にTVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』より劇中歌アーティストとして、神崎エルザ starring ReoNa名義でミニアルバム『ELZA』を発表すると、翌月には1stシングル『SWEET HURT』でソロデビューを果たす。そして、活動2周年を迎えた今年10月7日には、1stフルアルバム『unknown』をリリースしたばかりだ。

ReoNa 『unknown』-Music Video YouTube EDIT ver.-(ReoNa 1st Full Album “unknown”)

 改めて、冒頭の「unknown」を聴いて、ReoNaがアニソンだけを歌う“アニソンシンガー”だと一発で言い当てられた人はいるだろうか。少なくとも筆者は、ReoNaの歌声と初めて出逢った際、アニソンの枠には収まらない、稀有な“シンガー”だと感じたものだ。

 そう考えた最大の理由が、彼女の歌唱力と天性の歌声にある。ここで紹介したいのが、アーティストのパフォーマンスを、よりリアルかつ鮮明に届けるべく、“一発撮り”での収録にこだわったYouTube上のプログラム「THE FIRST TAKE」だ。ReoNaが登場して「ANIMA」を披露したこの動画は、アップされるや否や急上昇動画に入り、現在までに500万回以上も再生されている(10月23日時点)。

ReoNa – ANIMA / THE FIRST TAKE

 同プログラムで感じられるのは、ReoNaの歌声が持つ“情景描写”の力。具体的に言えば、声帯の鳴りに対する吐息の割合が一般的なアーティストよりも多く、その声が倍音的に何層にも奥行きを携えながら、声の芯の部分を柔らかに包み込むような声質を持っていること。曲中盤のアカペラのパートでこそ味わえるものだが、この吐息が歌声に重なるべールや、それ自体がまるで伴奏の役割を果たすようにも聴こえてくるのだ。

 彼女の歌声は、アニソンシンガーとして以上に、本人が言うところの“お歌”を歌う存在として天性のギフトといえる。もちろん、音源作品では人工的にコーラスを重ねる場面もあるだろう。ただ、冒頭に紹介した「unknown」のように、彼女の描く世界観の楽曲は、天真爛漫でまっすぐな歌声では、歌詞の持ち味を十分に発揮できないのではないだろうか。むしろ、少年のようでミステリアスなReoNaの歌声だからこそ、その表現にぐっと引き込まれてしまう。

 また、前述した最新アルバム『unknown』収録曲では、「怪物の詩」「Let it Die」などでの歌唱法が特に気になった。前者では、後半パートの一部において、三連符のように言葉を細かく切る譜割りを選ぶことで、歌詞にある〈制御不能〉で焦燥しきった心が、ゆっくりと打ちひしがれる様子を印象づけたのだろう。

 その一方、「Let it Die」には車輪が回るようにリズミカルな英語詞が用意されているのだが、まさかこれほど流暢に歌いこなせるとは。まるで神へ捧げる祈りの言葉のように壮麗な響きだが、その歌詞には“血を流す”といった生々しい描写を隠しているのも彼女らしい。ほかにも、彼女の歌唱力の高さを示すパートはアルバム内にいくつもあるのだが、代表してこの2例を取り上げさせてもらった。

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