『DAICHI MIURA ONLINE LIVE The Choice is _____』インタビュー
三浦大知が明かす、初のオンラインライブ開催に至るまでの移りゆく心境 「みんなと楽しめることを今は思いっきりやるしかない」
10月10日、三浦大知が初の単独オンラインライブ『DAICHI MIURA Online LIVE The Choice is_____』を開催する。今年初めに予定されていたツアーが新型コロナウイルスの影響により途中で延期に。シングルをリリースした直後、まさに最新の三浦大知の姿をファンに届ける場が、突如としてなくなってしまったのだ。だが、すぐに気持ちを切り替えたという彼は、立ち止まることなく、今この瞬間も動き続けている。
これまで、会場に足を運んでくれたファンと直接顔を合わせたライブ(=オフラインライブ)に強いこだわりを持っていた三浦大知が、なぜこのタイミングでオンラインライブの開催に踏み切ったのか。コロナでの外出自粛期間での活動やその当時の胸の内を振り返りつつ、今の正直な心境、そしてオンラインライブ開催に至るまでの経緯を語ってもらった。(編集部)
時代的に思ったことを隠さず「こう思ったんだよね」と言う方がいい
――今年は、1月15日にシングル『I'm Here』をリリースし、1月31日から『DAICHI MIURA LIVE TOUR 2019-2020 COLORLESS』のホールツアーが始まりました。ところが、コロナの影響により、5公演を終えた時点で一旦ツアーの延期を発表。そのときはどのような思いでしたか?
三浦大知(以下、三浦):こればっかりはしょうがないよなって感じでした。自分たちだけの問題じゃないし、世界的な問題だし、どのアーティストさんもみんな同じ状況だったと思うので。だから、気持ちを切り替えて、それに対して何をするべきか、今できることは何か、みたいなことを探していくしかないなという感じでした。
――わりとすぐに気持ちは切り替えられましたか?
三浦:基本的に僕はめちゃくちゃ切り替えが早いので(笑)。大体、寝たら忘れるほうだし。切り替えの早さは人一倍だと思うので、もうしょうがないと思ったら、しょうがない。次にできることは何かを考え始めました。
ーー実際、動きは早くて、新潟公演の予定日だった2月28日から、ライブの開催予定日にインスタライブで3曲歌うことを始めましたね。
三浦:ライブがあった日にいきなり何もなくなるというのは、来てくれるはずだった人たちもきっと寂しいだろうし、自分も寂しいなという思いがあったので、その時間を共有することに重きを置いて、フランクにみんなと繋がる瞬間を設けたいと思ったのがきっかけですね。あとは、星野(源)さんの「うちで踊ろう」の企画に参加させてもらって。同時進行くらいで、いつも曲を一緒に作っているUTAさんの呼びかけで、いろんなアーティストの方と「音楽で何かできたらいいね」ということで「Be One」を作らせてもらって。そうやって、僕ができるものは全部やろうっていう感じで動いていました。
――そういうSNS発信の企画に誘われたことが心の救いになったところもありますか?
三浦:めちゃくちゃ救われたと思います。2月、3月の頃は震災のときとはまたちょっと違う空気だったと思うんですよね。自分も含めて最初はちょっとみんな固まっちゃってたところがあったし、僕もどう動くのが良いのか悩んでいた部分もありました。でも、未曾有の危機こそ、エンターテインメントがどうあるべきかっていうところに向き合うことが必要で。そこで、「シンプルに音楽を作っていいんだよな、そこだよな」ということを星野さんに引っ張ってもらったところはすごくありました。
――4月には絢香さんの呼びかけで「ねがいぼし」にも参加しました。
三浦:前々から会った時に「また一緒にやりたいね」と話していたんですけど、「これを2人で歌えたらどうかな?」と誘ってくれて。やっぱり音楽でできることは全然あるなって感じてました。ツアーがなくなったから動けない、みたいなことはないし、SNSを使ってみんなと繋がることはできるので。逆に、こういうときに動けるから、音楽をやっていてよかったなとも思えましたね。
ーー4月から6月まで行った“1songhomelive”企画もそうですが、InstagramやTwitterといったSNSを積極的に使っていましたよね。コロナ禍でファンとの繋がり方は変化したと思いますが、どのように受けとめていますか?
三浦:この言い方が合っているかはわからないですけど、正直、楽でしたよ。というのは、何でもカジュアルにできる。曲を作るにしても、「Be One」とか、Taka(ONE OK ROCK)くんたちとの[ re: ]プロジェクトでの「もう一度」もそうですけど、あれを普通にやろうと思ったら、めちゃくちゃ大変だと思うんです(笑)。だって、みんな違う事務所にいて、それぞれのリリースプランとかいろいろあるわけじゃないですか。それぞれのマネージャーさんがスケジュール管理をして、アレ(「もう一度」)を現場でレコーディングしようと思ったら相当だと思うんですよ。でも、あのときは「できる人、やりたいと思った人で集まろう」みたいなテンションだったから、グループLINEを作って、直接本人同士でやり取りして。「じゃあ、俺はここの歌詞書きます」とか、「ここのメロディ、良いのないかな?」「こういうのどうですか?」とか、そういうのをその場ですぐレスポンスしてやり取りしてたんです。なんだかそれが、めちゃくちゃ音楽してる! って感じだったんです。今やりたいとか、今歌いたいと思ったことを直接みんなとテーブルを囲んで「ああでもない、こうでもない」って言いながら、曲がどんどん完成していく。それをみんなとすぐ共有できて、「じゃあ、明日アップしよう!」みたいなことが可能なわけじゃないですか。自分たちの気持ちがそのままの温度ですぐ出せて、それをみんなに聞いてもらえたり、見てもらえたりするのはすごく楽しかったです。――スピード感もありますしね。
三浦:“1songhomelive”も本当にそうですね。家で自撮りして、曲のイントロとアウトロだけちょっとだけフェードイン/アウトの編集して投稿したら、それに対するリアクションがすぐ返ってくるわけじゃないですか。その近さ、スピード感、カジュアルさ。今さらなんだけど、これがSNSなんだなと思いました(笑)。あんまりSNSをやってこなかった身として「あぁ、こういうことなのか」と。
――ただ、SNS特有の素を出す感じが苦手な方もいますよね。舞台裏は見せたくないとか、作り込んだ完成形だけを見せたいっていうアーティストもいる。
三浦:今までは、ステージだったらステージの中でとか、音楽の中で言いたいわけだから、それを1個1個説明するのはちょっと気恥ずかしいところもあったんです。でも、もう時代的に自分が思ったこととか感じたことを隠さずに、「こう思ったんだよね」って言う方がいいのかなと。逆に、そこを隠してカッコつけてるほうがカッコ悪いのかなって。やってみてちょっと違ったら、「じゃあ今度はこういうのをやってみます」とか、そういうことを普通に出していっていいのかなって思います。
――違ったら違ったで、「ちょっと違いました」って正直に言って訂正すればいい。
三浦:そう。今までだったら“1songhomelive”も、僕の性格上、最初始めた形を崩したくないんですよ。シングル、カップリング、アルバムから1曲ずつやるというルールが一応最初にあって。本当だったら、それで通していきたいんです。途中で変えるのは気持ち悪い。だったら、最初からどういうルールにしたほうがいいとか、よく考えて決めておきたい性格だから。
――ゴールをちゃんと見据えて動いていきたいと。
三浦:そうなんです。なんですけど、あの時は来週のライブもなくなったし、「とにかくもうやろう!」みたいな感じだったから。「これで違ったら違ったで変更すればいいし」くらいのマインドじゃないとやることができなかったので。それくらいの感じで動いてみた結果、別にこれでいいんだなって。もちろん、作り込んだものの必要性もわかっているので全部が全部そうじゃなくていいけど、やってみて「あ、ちょっと違いました」っていうのも、別にみんなに見せちゃっていいのかなって思いましたね。
ーー今年はSNSでいろんなカタチの音楽発信が展開されましたが、リレー企画とかコラボ企画だと、求められたものにどう返すかというところで、アーティストの瞬発力とか即興性が必要になってくると思うんです。そういった意味で実力も問われるし、あと人間性も試されるなって。
三浦:確かに人間性はあるかもしれないですね。いろいろなアーティストの方たちとやらせてもらったけど、みんなめっちゃいい人だから。
ーーそう考えると、SNS企画にこれだけ誘われていた大知くんは実力を認められている証だし、みなさんから愛されてるんだなって改めて思いました。
三浦:それは僕も嬉しかったです。声を掛けていただけるっていうことがとてもありがたいなって。だからこそ、誘われたものは全部やろうって。
ーーしかも、やるなら全力で乗っていく。
三浦:そう。ガンガンやる。家で録るレベルのものだけど、せめてもと思って、マイクも新しく買いました。それで家で録って、すぐに送り返しててっていう。その作業が楽しかったです。
ーー楽しいといえば、先程話が出た[ re: ]プロジェクトは、実力者揃いという意味でも楽しかったんじゃないですか?
三浦:同世代のみんなで集まってやるっていう楽しさはとてもありましたね。しかも、モンスターみたいなすごい人たちばかりじゃないですか(笑)。本当にめちゃくちゃ勉強になったし、おもしろかった。
ーー「もう一度」の制作はどのような感じで進んだんですか?
三浦:Takaくんから連絡が来て、「一緒に曲作りたいね」という話になって。「ぜひぜひ」って言ってたら「同性代の人たちも集めてる」って聞いたんです。で、「パート分けを考えるから」と言われて、おそらく全員1曲つるっと歌ったものを送り返して。それをTakaくんと(清水)翔太くんが聞いて、パート分けやコーラス分けを声の相性とかを考えながら決めてくれて。そのときのデモがすごかったんですよ。声が出てくるたびにモンスターが現れる(笑)。全員キャラ立ちがすごいから、一聴で声の主がわかるんです。
――本当、バケモン揃いですからね(笑)。
三浦:あれを聞いたときに、「We Are the World」感があるなと思いました。決して混ざらないんですけど、でも、みんなが混ざったときの高揚感はちゃんとあって。しかも誰の個性も損なわれていない。本当に“アベンジャーズ”みたいな感じだった。
ーーアッセンブル感がありますよね。
三浦:そんな曲で「歌い出しをお願いしていい?」ってTakaくんに言われて、「俺で大丈夫?」みたいな(笑)。「頑張んなきゃ!」って思いながら歌いました。あとで話したら、みんなその感じがあったみたいです。みんなデモを聴いて、「これはちょっと本気出してバチっといかないとやべえぞ」みたいな。本当、あれはおもしろかった。すごくいい経験でした。